カグヤの灯篭

(ゆるりゆるりいろづくもみじの)

緩り緩り色付く紅葉の

(あかがほおにうつるきせつは)

紅が頬に映る季節は

(まだしらないあそびをす)

未だ知らない遊びをす

(よのふれもいまはないとごまかした)

世の振れも今は無いと誤魔化した

(おにさんこちらまのありか)

鬼さん此方　魔の在処

(てのなるほうへいかないで)

手の鳴る方へ　逝かないで

(おにさんこちらそのぬくもりよ)

鬼さん此方　其の温もりよ

(なつをひかないで)

夏を引かないで

(ともにたずさえたせいのかぎ)

共に携えた醒の鍵

(とわにそのつみもよりそって)

永遠に其の罪も寄り添って

(このよのだれよりよわいてをにぎる)

此の世の誰より弱い手を握る

(あいしたひかりをうしなった)

愛した光を失った

(ひとがこいねがうゆめとうろう)

人が冀う夢灯篭

(いくよちでながせばいくさはおわるか)

幾夜血で流せば戦は終わるか

(ゆるりゆるりながるるきのこく)

緩り緩り流るる喜の刻

(ふたりかげぼうしをかくまうて)

二人影法師を匿う手

(けどまだまだこたえはない)

けど未だ未だ答えは無い

(といかけをそっくりほうりおいかけた)

問い掛けをそっくり放り追い掛けた

(おにさんこちらまのありか)

鬼さん此方　魔の在処

(てのなるほうへいかないで)

手の鳴る方へ　逝かないで

(おにさんこちらそのかがやきで)

鬼さん此方　其の輝きで

(おちたはなびら)

堕ちた花弁

(ともにかけぬけたそうきゅうてんか)

共に駆け抜けた蒼穹天下

(ひとをうれうのはやさしいと)

人を憂うのは“優”しいと

(このよのだれよりつよいてでにぎる)

此の世の誰より強い手で握る

(かぞくをいぬいたまのてで)

カゾクを射抜いた魔の手で

(ねがいをたくしたゆめとうろう)

願いを託した夢灯篭

(いつもかわらないそのかただけをうつして)

何時も変わらない其方だけを映して

(おにさんこちらしのありか)

鬼さん此方　死の在処

(てのなるほうへいかないで)

手の鳴る方へ　逝かないで

(おにさんこちらばれずにすめば)

鬼さん此方　暴露ずに済めば

(ふゆよおわないで)

冬よ追わないで

(おにさんこちらしのありか)

鬼さん此方　死の在処

(てのなるほうへいかないで)

手の鳴る方へ　逝かないで

(おにさんこちらめをさしだせば)

鬼さん此方　瞳を差し出せば

(やみをかえるか)

闇を買えるか

(こわれたせかいにこわれたおとが)

壊れた世界に壊れた音が

(なりひびいてはきえてうせてく)

鳴り響いては消えて失せてく

(ぬりつぶしてくたいよう)

塗り潰してく太陽

(それにあらがうつきよ)

其れに抗う月よ

(いまそれのひをまもれるなら)

今其の灯を守れるなら

(このみくれようぞ)

この身呉れようぞ

(それをおびやかすせんのてきは)

其れを脅かす千の敵は

(ひをともしたこのおくのあいで)

火を灯した此の億の愛で

(ゆいいつをまもるばけものとなりて)

唯一を守る化物と為りて

(ともにつづりあったひびは)

共に綴り合った日々は

(とうろうのともるつくよに)

灯篭の灯る月夜に

(ふたたびそなたにとどけようこいも)

再び其方に届けよう　恋も

(ここならいいか)

此処なら良いか

(おいていくには)

置いて逝くには

(おにのしずくがかがやいた)

鬼の雫が輝いた

(なみだにさしこむやさしいかげが)

涙に射し込む優しい影が

(なつおりをてらして)

夏折を照らして