夏目漱石「こころ」2-10

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」2-10
(中)両親と私
こっちゃん様が(上)の方を上げて下さっていたものの続きでございます。
タイピングを投稿するのは初めてですので、誤字脱字等ありましたらご連絡何卒宜しくお願い致します。

こっちゃん様による(上)
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7668 7.8 97.4% 346.5 2728 71 52 2024/04/03
2 subaru 7644 8.0 95.2% 342.2 2753 137 52 2024/03/08
3 HAKU 7522 7.9 94.7% 347.9 2772 155 52 2024/03/12
4 □「いいね」する 7497 7.8 96.0% 353.2 2761 113 52 2024/03/08
5 ヤス 6874 S++ 7.4 93.0% 373.4 2775 208 52 2024/03/24

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問題文

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(なな)

(ちちはあきらかにじぶんのびょうきをおそれていた。)

父は明らかに自分の病気を恐れていた。

(しかしいしゃのくるたびにうるさいしつもんをかけてあいてをこまらすたちでもなかった。)

然し医者の来るたびに蒼蠅い質問を掛けて相手を困らす質でもなかった。

(いしゃのほうでもまたえんりょしてなにともいわなかった。)

医者の方でもまた遠慮して何とも云わなかった。

(ちちはしごのことをかんがえているらしかった。)

父は死後の事を考えているらしかった。

(すくなくともじぶんがいなくなったあとのわがいえをそうぞうしてみるらしかった。)

少なくとも自分が居なくなった後のわが家を想像して見るらしかった。

(「こどもにがくもんをさせるのも、よしあしだね。)

「小供に学問をさせるのも、良し悪しだね。

(せっかくしゅぎょうをさせると、そのこどもはけっしてうちへかえってこない。)

折角修行をさせると、その小供は決して宅へ帰って来ない。

(これじゃてもなくおやこをかくりするためにがくもんさせるようなものだ」)

これじゃ手もなく親子を隔離するために学問させるようなものだ」

(がくもんをしたけっかあにはいまえんごくにいた。)

学問をした結果兄は今遠国にいた。

(きょういくをうけたいんがで、わたくしはまたとうきょうにすむかくごをかたくした。)

教育を受けた因果で、私は又東京に住む覚悟を固くした。

(こういうこをそだてたちちのぐちはもとよりふごうりではなかった。)

こういう子を育てた父の愚痴はもとより不合理ではなかった。

(ながねんすみふるしたいなかやのなかに、たったひとりとりのこされそうなははを)

永年住み古した田舎家の中に、たった一人取り残されそうな母を

(えがきだすちちのそうぞうはもとよりさびしいにちがいなかった。)

描き出す父の想像はもとより淋しいに違いなかった。

(わがいえはうごかすことのできないものとちちはしんじきっていた。)

わが家は動かす事の出来ないものと父は信じ切っていた。

(そのなかにすむははもまたいのちのあるあいだは、うごかすことのできないものとしんじていた。)

その中に住む母もまた命のある間は、動かす事の出来ないものと信じていた。

(じぶんがしんだあと、このこどくなははを、)

自分が死んだ後、この孤独な母を、

(たったひとりがらんどうのわがいえにとりのこすのもまたはなはだしいふあんであった。)

たった一人伽藍堂のわが家に取り残すのもまた甚しい不安であった。

(それだのに、とうきょうでいいちいをもとめろといって、)

それだのに、東京で好い地位を求めろと云って、

(わたくしをしいたがるちちのあたまにはむじゅんがあった。)

私を強いたがる父の頭には矛盾があった。

など

(わたくしはそのむじゅんをおかしくおもったとどうじに、)

私はその矛盾を可笑しく思ったと同時に、

(そのおかげでまたとうきょうへでられるのをよろこんだ。)

その御蔭で又東京へ出られるのを喜こんだ。

(わたくしはちちやははのてまえ、)

私は父や母の手前、

(このちいをできるだけのどりょくでもとめつつあるごとくによそおわなくてはならなかった。)

この地位を出来るだけの努力で求めつつある如くに装わなくてはならなかった。

(わたくしはせんせいにてがみをかいて、いえのじじょうをくわしくのべた。)

私は先生に手紙を書いて、家の事情を精しく述べた。

(もしじぶんのちからでできることがあったらなんでもするからしゅうせんしてくれとたのんだ。)

もし自分の力で出来る事があったら何でもするから周旋してくれと頼んだ。

(わたくしはせんせいがわたくしのいらいにとりあうまいとおもいながらこのてがみをかいた。)

私は先生が私の依頼に取り合うまいと思いながらこの手紙を書いた。

(またとりあうつもりでも、)

又取り合う積りでも、

(せけんのせまいせんせいとしてはどうすることもできまいとおもいながらこのてがみをかいた。)

世間の狭い先生としてはどうする事も出来まいと思いながらこの手紙を書いた。

(しかしわたくしはせんせいからこのてがみにたいするへんじがきっとくるだろうとおもってかいた。)

然し私は先生からこの手紙に対する返事がきっと来るだろうと思って書いた。

(わたくしはそれをふうじてだすまえにははにむかっていった。)

私はそれを封じて出す前に母に向って云った。

(「せんせいにてがみをかきましたよ。あなたのおっしゃったとおり。)

「先生に手紙を書きましたよ。あなたの仰しゃった通り。

(ちょっとよんでごらんなさい」)

一寸読んで御覧なさい」

(はははわたくしのそうぞうしたごとくそれをよまなかった。)

母は私の想像したごとくそれを読まなかった。

(「そうかい、それじゃはやくおだし。)

「そうかい、それじゃ早く御出し。

(そんなことひとがきをつけないでも、じぶんではやくやるものだよ」)

そんな事は他が気を付けないでも、自分で早く遣るものだよ」

(はははわたくしをまだこどものようにおもっていた。わたくしもじっさいこどものようなかんじがした。)

母は私をまだ子供のように思っていた。私も実際子供のような感じがした。

(「しかしてがみじゃようはたりませんよ。)

「然し手紙じゃ用は足りませんよ。

(どうせ、くがつにでもなって、わたくしがとうきょうへでてからでなくっちゃ」)

どうせ、九月にでもなって、私が東京へ出てからでなくっちゃ」

(「そりゃそうかもしれないけれども、)

「そりゃそうかも知れないけれども、

(またひょっとして、どんないいくちがないともかぎらないんだから、)

又ひょっとして、どんな好い口がないとも限らないんだから、

(はやくたのんでおくにこしたことはないよ」)

早く頼んで置くに越した事はないよ」

(「ええ。)

「ええ。

(とにかくへんじはくるにきまってますから、そうしたらまたおはなししましょう」)

とにかく返事は来るに極ってますから、そうしたら又御話ししましょう」

(わたくしはこんなことにかけてきちょうめんなせんせいをしんじていた。)

私はこんな事に掛けて几帳面な先生を信じていた。

(わたくしはせんせいのへんじのくるのをこころまちにまった。けれどもわたくしのよきはついにはずれた」)

私は先生の返事の来るのを心待ちに待った。けれども私の予期はついに外れた」

(せんせいからはいっしゅうかんたってもなんのたよりもなかった。)

先生からは一週間経っても何の音信もなかった。

(「おおかたどこかへひしょにでもいっているんでしょう」)

「大方どこかへ避暑にでも行っているんでしょう」

(わたくしはははにむかっていいわけらしいことばをつかわなければならなかった。)

私は母に向って云い訳らしい言葉を使わなければならなかった。

(そうしてそのことばはははにたいするいいわけばかりでなく、)

そうしてその言葉は母に対する言訳ばかりでなく、

(じぶんのこころにたいするいいわけでもあった。)

自分の心に対する言訳でもあった。

(わたくしはしいてもなにかのじじょうをかていしてせんせいのたいどをべんごしなければふあんになった。)

私は強いても何かの事情を仮定して先生の態度を弁護しなければ不安になった。

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