疎ましい芸術

(ゆうやみまたたくほしよ)

夕闇瞬く一番星よ

(いくせいそうみとどけただろう)

幾星霜 見届けただろう

(ただしくときをきざまぬからだは)

正しく時間を刻まぬ躰は

(うとましいげいじゅつのよう)

疎ましい芸術のよう

(じゅかいのふかくのひとく)

樹海の深くの秘匿

(だれのめにもふれられず)

誰の瞳にも触れられず

(せかいしにみたぬぶんめいがおわる)

世界史に満たぬ 文明が終わる

(うつせみのようなものがたり)

空蝉のような物語

(いたずらなうんめいのいと)

悪戯な運命の糸

(すうきなあみあわせで)

数奇な編み合わせで

(こころのめいろにあすをともす)

心の迷路に明日を灯す

(いつのひか)

いつの日か

(よにもうつくしいじかんがおわるなら)

世にも美しい時間が終わるなら

(おもかげにおもいでにほうようを)

面影に 思い出に 抱擁を

(やさしさほだされつぼみがほころぶ)

優しさ絆され 蕾がほころぶ

(もうさかぬはずとねむったはな)

もう咲かぬ筈と眠った花

(かなわぬものをねがった)

叶わぬものを願った

(みじゅくなきせつをなでる)

未熟な季節を撫でる

(きぼうとうれいがめぐるあのてんたい)

希望と憂いが廻るあの天体

(ほしをわたるたびはつづく)

星を渡る旅はつづく

(ほおをつたうりゅうせい)

頬を伝う流星

(わかれのよげんでもああ)

別離の予言でも ああ

(いつまでもあたたかく)

いつまでも あたたかく

(「さよなら」よりも)

「さよなら」よりも

(「ありがとう」よりも)

「ありがとう」よりも

(あなたにあうことのはさがしたい)

あなたに合う言の葉 さがしたい

(やさしさほだされつぼみがほころぶ)

優しさ絆され 蕾がほころぶ

(そうはなはさいてかれるさだめ)

そう 花は咲いて 枯れる定め

(もうすこしだけゆめのこして)

もう少しだけ 夢残して

(ひとところにいれないから)

ひとところに居れないから

(もうすこしだけたびのなかで)

もう少しだけ旅のなかで

(ひとかけらのいとしさを)

ひとかけらの いとしさを