給仕の室 1

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プレイ回数244順位1872位  難易度(4.2) 2930打 長文 かな
タグ長文 文豪
日下諗の「給仕の室」です
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 HAKU 6938 S++ 7.2 95.9% 404.1 2928 124 43 2024/05/27
2 berry 6432 S 6.5 97.6% 440.6 2905 71 43 2024/06/15
3 だだんどん 6184 A++ 6.8 91.6% 427.2 2908 266 43 2024/05/29
4 miko 5626 A 5.7 97.5% 506.9 2924 72 43 2024/06/01
5 オカピ 4573 C++ 4.8 94.7% 604.3 2926 162 43 2024/05/24

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問題文

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(ぞっかんしつをでてみぎてのろうかをはいると、とっつきのところにわれわれのひかえしつがある。)

属官室を出て右手の廊下を入ると、とっ突きの所に吾々の控室がある。

(ここのろうかはまひるどきですらみょうにうすぐらくて、よじかごじごろにはまずこのろうかから)

ここの廊下は真昼時ですら妙に薄暗くて、四時か五時頃にはまずこの廊下から

(ひがくれてゆくというところだった。いりぐちのどあーのりょうめんにはいちめんにうすぐろいあかが)

日が暮れてゆくという所だった。入口のドアーの両面には一面にうす黒い垢が

(ついて、すすけたかべのいろや、つちのようないろしたろうかのしきものなどと)

着いて、煤けた壁の色や、土のような色した廊下の敷物などと

(くらいちょうしをたもっている。このろうかにきてだれのめにもはっきりとみえるものは)

暗い調子を保っている。この廊下に来て誰の眼にも明瞭と見える物は

(しろいせとでできたどあーのとってと、くろぬりのいたにはくじでかいた)

白い瀬戸で出来たドアーの取手と、黒塗の板に白字で書いた

(きゅうじつめしょのじとばかりであった。へやがまたばかにいんきだ。)

「給仕詰所」の字とばかりであった。室がまた馬鹿に陰気だ。

(まどがふたつならんでついているが、よごれてふとうめいになったがらすごしには)

窓が二つ並んで付いているが、汚れて不透明になった硝子越しには

(むかいのたてもののかべがはなをつきそうにそそりたっているのでこうせんのいりがわるい。)

向かいの建物の壁が鼻を突きそうに峙り立っているので光線の入りが悪い。

(まどにならんでいしだんのおりくちがついている。そのしたがしょうべんしつで、)

窓に並んで石段の降口が付いている。その下が小便室で、

(まえにはすいどうのひけたおおきなながしばがある。ねんじゅうみずけのないときはないので、)

前には水道のひけた大きな流し場がある。年中水気のない時はないので、

(あたりはいったいにじめじめしていてこころもちがわるい。)

あたりは一帯にじめじめしていて心持が悪い。

(ぞっかんなどのたべるやすべんとうののこりをぶちあけておくおおきなはこがある。)

属官などの食べる安弁当の残りをぶち開けて置く大きな箱がある。

(そのそばにはこめつぶのついたぬりはこがかさなりあっておおきなみずおけにつけてある。)

その側には飯粒の着いた塗箱が重なり合って大きな水桶につけてある。

(ことにかきはたまらない、このたいせきしたやすべんとうののこりものがはこのなかでくされて、むれてくる)

殊に夏季は堪らない、この堆積した安弁当の残物が箱の中で腐れて、むれて来る

(そのしゅうきがかぜとおしのわるいながしばのあたりにおもくただよっていると、へやのなかはへやのなかで、)

その臭気が風通しの悪い流し場の辺りに重く漂っていると、室の中は室の中で、

(どうりょうのあせくさいしゃつやなにかからくるにおいがどこもなくこもっている。)

同僚の汗臭いシャツや何かから来る臭が何処もなく篭っている。

(こうなるとれいのかんがぴりぴりとこめかみのあたりでうごいて)

こうなると例の疳がぴりぴりと顳顬のあたりで動いて

(あたまのなかはにえるようなきもちがする。われわれごにんのものはこういうところにまいにちまいにち)

頭の中は煮えるような気持がする。吾々五人の同僚はこういう処に毎日毎日

(しゅっきんしてくるのだった。あさでてゆうがたにかえるひがえりばんと、)

出勤してくるのだった。朝出て夕方に帰る日帰番と、

など

(しゅくちょくのばんとはこうたいでまわってくる。ひがえりがさんにんにしゅくちょくばんはふたりときまっていた。)

宿直の番とは交代で回って来る。日帰が三人に宿直番は二人ときまっていた。

(われわれはてあかやすみでまっくろになったつくえをとりかこんで、)

吾々は手垢や墨で真黒になった机を取囲んで、

(ようのないあいだはただくだらないむだばなしばかりしている。)

用のない間は唯くだらない雑談ばかりしている。

(ごにんのきゅうじのかしらはにじゅうごになるはまだというおとこで、)

五人の給仕の頭は二十五になる浜田という男で、

(あとはおおかたじゅうしち、はちのものばかりだ。ごにんのなかにどんたというのがいる。)

あとは大方十七、八の者ばかりだ。五人の中に鈍太というのがいる。

(これは、じゅうはちというのがあたまのはったつていどからいったら)

これは、十八というのが頭脳の発達程度から云ったら

(じゅうに、さんのこどもにもおとるくらいのものだ。もっともほんみょうはべつにあるのだけれど)

十二、三の子供にも劣る位のものだ。最も本名は別にあるのだけれど

(このほうがなかまうちのとおりがいい。いろがなまじろくてにくにしまりがない、)

この方が仲間内の通りがいい。色が生白くて肉にしまりがない、

(うでなどはかたのつけねからてくびのところまでいっぽんちょうしにのっぺりときて、)

腕などは肩の付根から手首の所まで一本調子にのっぺりと来て、

(えんのしたにはえたかぼちゃのなえみたいないろをしてる。)

椽の下に生えた南瓜の苗みたいな色をしてる。

(ちょっとしたはだざわりはじゅうろく、ななのおんなのこのうででもなでるようなかんじがする。)

一寸した肌触りは十六、七の女の子の腕でも撫でるような感じがする。

(からだぜんたいにちからがなくていたいたしいほどせんじゃくにできあがっている。)

身体全体に力がなくて痛々しい程繊弱に出来上がっている。

(かれがこのやくしょにきてからまだはんつきとはたたないが、)

彼がこの役所に来てからまだ半月とは経たないが、

(もうよんにんのもののいじりものになってしまった。ようのあるものはへやをでてゆく。)

もう四人の者の弄り物になってしまった。用のある者は室を出てゆく。

(ようのないものはへやにのこってすみのほうのつくえでなしょなるりーだーのにくらいをあけて)

用のない者は室に残って隅の方の机でナショナルリーダーの二くらいを開けて

(べんきょうしているのもあれば、しゃついちまいでこしかけて)

勉強しているのもあれば、シャツ一枚で腰かけて

(しんぶんのとじこみをよんでいるものもある。こんなときどんたはさもたいくつそうに)

新聞の綴込を読んでいる者もある。こんな時鈍太はさも退屈そうに

(ちゅうおうのつくえのまえにこしかけてぼんやりしている。うすいまゆげのあいだに)

中央の机の前に腰掛けて茫然している。薄い眉毛の間に

(いつもかすかにはちじをよせて、ひかりのにぶい、あおみのあるめにはちょっとくうそうかを)

常駐微かに八字を寄せて、光りの鈍い、青味のある眼には一寸空想家を

(おもわせるようなおっとりしたところがある。あまりすべてがよわよわしいので、)

想わせるようなおっとりした所がある。あまり凡てが弱々しいので、

(どうかするとむじょうにかわいらしくなって、そのやわらかいくびのあたりを、)

どうかすると無上に可愛らしくなって、その軟かい首の辺りを、

(ぐっとだきしめてやりたくなることもあるが、またこのよわよわしい、おとこらしくない、)

ぐっと抱き締めてやりたくなる事もあるが、又この弱々しい、男らしくない、

(ふかっぱつなところがむじょうにしゃくにさわって、かなりてひどいこともしてやりたくなる。)

不活発な所が無上に癪に触って、かなり手酷い事もしてやりたくなる。

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