給仕の室 2
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヤス | 7294 | 光 | 7.6 | 95.5% | 318.6 | 2437 | 113 | 39 | 2024/05/29 |
2 | HAKU | 7243 | 王 | 7.5 | 96.1% | 322.9 | 2437 | 98 | 39 | 2024/05/27 |
3 | だだんどん | 6122 | A++ | 6.6 | 92.6% | 363.1 | 2415 | 192 | 39 | 2024/05/31 |
4 | miko | 5890 | A+ | 6.0 | 97.4% | 401.8 | 2431 | 64 | 39 | 2024/06/01 |
5 | なんだかな | 4940 | B | 5.2 | 94.1% | 464.3 | 2447 | 153 | 39 | 2024/05/28 |
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問題文
(このころはちょうどなつなのでやくしょのようもごごからはおおかたひまになる。)
この頃は丁度夏なので役所の用も午後からは大方暇になる。
(ごぜんちゅうはまえのたてものにさすにっこうのはんしゃでむされるようなしつないも、)
午前中は前の建物に射す日光の反射で蒸されるような室内も、
(ごごからはすこしずつらくになる。それにようもなくなるというところから)
午後からは少しずつ楽になる。それに用もなくなるという所から
(みなこのつめしょにあつまって、うわぎなどはぬいでしまってしゃついちまいでさわぐのだ。)
皆この詰所に集まって、上着などは脱いでしまってシャツ一枚で騒ぐのだ。
(しゅくちょくのぞっかんをのぞいて、あとはみなにじごろからかえってしまうからすこしくらい)
宿直の属官を除いて、あとは皆二時頃から帰ってしまうから少し位
(さわいだところで、めったにしかられるようなこともない。)
騒いだところで、めったに叱責られるような事もない。
(どんたのやくはこれからはじめるのだ。さあどんた、あそんでやろうな)
鈍太の役はこれから始めるのだ。「さア鈍太、遊んでやろうな」
(とそろそろうわぎでもぬぎにかかると、いままでたいくつそうにつくえのまえでかおを)
とそろそろ上着でも脱ぎにかかると、今迄退屈そうに机の前で顔を
(しかめていたかれはあついくちびるのあたりにほほえみをうかべて、そっとかおをそむける。)
しかめていた彼は厚い唇のあたりに微笑を浮かべて、そっと顔をそむける。
(わけもなく、ときどきひとりでにやりとわらっていることもある。がんらいがすこし)
理もなく、時々独りでニヤリと笑っていることもある。元来が少し
(ぬけているとおもっているからべつだんきをまわすでもないが、このにやりとやる)
ぬけていると思っているから別段気を廻すでもないが、このニヤリとやる
(うすわらいがすくなからずしゃくにさわる。なんだかぶじょくしている、とまではおもわないが、)
薄笑いが少なからず癪に触る。何だか侮辱している、と迄は思わないが、
(このうすのろのあたまでなんとかひはんされているとおもうのがしゃくにさわる。)
この薄野呂の頭脳で何とか批判されていると思うのが癪に触る。
(なまいきなとおもうとむかむかしてくる。いきなりはのねにちからをいれておいて、)
「生意気な」と思うとむかむかしてくる。いきなり歯の根に力を入れておいて、
(あまりひどくないように、ちょっとそのみみのあたりでもひっぱってみたくなる。)
あまりひどくないように、一寸その耳の辺りでも引張ってみたくなる。
(ひっぱってみるとまたきゅうにふらふらとしたきにさそわれて、)
引張ってみると又急にフラフラとした気に誘われて、
(はじめはそんなきもなかったものが、つい、それはほんとについなんだが、)
初めはそんな気もなかったものが、つい、それはほんとについなんだが、
(ぐっとひとおもいに、ざんこくにひっぱってもやりたくなる。)
ぐっと一思いに、惨酷に引張ってもやりたくなる。
(ああつ、ああっとどんたはかすかなこえで、さもいたそうなかおして、)
「ああツ、ああッ」と鈍太は微かな声で、さも痛そうな顔して、
(ひっぱられるほうに、からだごとななめになってついてくる。)
引張られる方に、身体ごと斜になってついて来る。
(そのざまのいたいけなことといったら、じっさいやりながらもじぶんできのどくになる。)
その態のいたいけな事といったら、実際やりながらも自分で気の毒になる。
(きのどくだといっておいて、そんなひどいことをするやつがあるのか、)
気の毒だと云っておいて、そんな惨酷い事をする奴があるのか、
(というかもしれないが、これはいったいどういうのだかじぶんにもわからない。)
と云うかも知れないが、これは一体どういうのだか自分にも分からない。
(わたしはがんらいきのよわい、ひとのいいにんげんで、べつにかんもちでもない。)
私は元来気の弱い、人の好い人間で、別に疳持ちでもない。
(つねのわたしからはんだんされたら、いずれかといえばあわれみもかなりにふかいほうのたちで、)
平常の私から判断されたら、いずれかと云えば憐れみも可成に深い方の性質で、
(なかまうちのうけもまあいいほうだとじふしている。こんなわたしが、)
仲間内の受けもまアいい方だと自負している。こんな私が、
(このどんたばかりはだまってみていられない。みみをひっぱってつめしょのうちを)
この鈍太ばかりは黙って見ていられない。耳を引張って詰所の内を
(ひとめぐりひきまわすくらいのことはある。あとのさんにんはわらいながらみている。)
一巡り引き廻す位の事はある。後の三人は笑いながら見ている。
(べつだんきのどくそうなかおもしない。きのどくどころか、おもしろがってみている。)
別段気の毒そうな顔もしない。気の毒どころか、面白がって見ている。
(てもちぶさたなうでがむずむずしているのはじじつだ。)
手持無沙汰な腕がむずむずしているのは事実だ。
(おりがあったらおのれもいちばんくらいのきでまちかまえているしょうこには、)
「折があったら己れも一番」位の気で待ち構えている証拠には、
(わたしのひっぱっているどんたが、からだをななめにしてばったばったとついてくるのが、)
私の引張っている鈍太が、身体を斜にしてばったばったとついて来るのが、
(ちょうどだれかのまえをとおると、おいどんた、しっかりしろいと)
丁度誰かの前を通ると、「おい鈍太、しっかりしろい」と
(みょうにつきだしたしりのあたりを、ひらてでおもいきったうちかたをする。)
妙に突出した尻の辺を、平手で思い切った打ち方をする。
(いたいよとしりをすくめるひょうしにひかれたみみがぴりっといたむ。)
「痛いよ」と尻を縮める拍子に引かれた耳がピリッと痛む。
(みみのねがあかくなってら、なあどんた、かわいそうに、こっちへこいこい)
「耳の根が赤くなってら、なア鈍太、可愛そうに、こっちへ来い来い」
(というとこんどははんたいのみみのほうへぐいぐいとひかれる。)
と云うと今度は反対の耳の方へぐいぐいと曳かれる。
(どっちへいってもみみがいたいからうごきがとれない。)
どっちへ行っても耳が痛いから動きがとれない。
(こうなるとかれはちいさなこえで、もうよしてくれないかとねがうようにいう。)
こうなると彼は小さな声で、「もうよしてくれないか」と願うように云う。