給仕の室 3

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プレイ回数129難易度(4.2) 2430打 長文 かな
タグ長文 文豪
日下諗の「給仕の室」です
「給仕の室」1 https://typing.twi1.me/game/381920
「給仕の室」2 https://typing.twi1.me/game/382479
「給仕の室」3 これ
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 HAKU 7090 7.3 96.2% 328.9 2427 95 48 2024/10/11
2 berry 6813 S++ 6.9 97.5% 343.3 2398 59 48 2024/10/11
3 てんぷり 5555 A 5.6 97.5% 421.2 2400 60 48 2024/10/13
4 もっちゃん先生 4459 C+ 4.8 92.9% 502.7 2427 185 48 2024/10/12
5 Par99 3913 D++ 3.9 98.4% 603.1 2398 38 48 2024/10/31

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問題文

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(このこえがききたいのだ。)

この声が聞きたいのだ。

(よわいこえだが、われわれなかまにはきかれないやさしいかんじのするこえだ。)

弱い声だが、吾々仲間には聞かれない優しい感じのする声だ。

(むねがせまるほどきのどくになる。りょうみみをひっぱられているかれは、)

胸が迫る程気の毒になる。両耳を引張られている彼は、

(おそるおそるうでをあげて、りょうみみのさゆうにでたふというでを、)

恐る恐る腕を挙げて、両耳の左右に出た太い腕を、

(そのしろいゆびでかるくにぎってなきそうなかおになる。)

その白い指で軽く握って泣きそうな顔になる。

(むこうのみみをひっぱっているのはさつまうまれの、むくいぬみたいなやつだが、)

向こうの耳を引張っているのは薩摩生れの、むく犬みたいな奴だが、

(やがてこいつがいたいか?という。)

やがてこいつが「痛いか?」と云う。

(いたければごめんといえという。)

「痛ければ御免と云え」と云う。

(こんなふじょうりなことがあるわけのものではない。けれどもどんたにとっては、)

こんな不条理なことがある理のものではない。けれども鈍太にとっては、

(じょうりもふじょうりも、そんなことをかんがえているだけのよゆうはない。)

条理も不条理も、そんな事を考えているだけの余裕はない。

(ふるいをおびた、ちからのない、かすかなこえで、ごめん!という、)

震いを帯びた、力のない、微かな声で、「御免!」と云う、

(このこえのしたからいちどうのかちほこったような、)

この声の下から一同の勝ち誇ったような、

(れいしょうとまんぞくとにみちたわらいごえがおこる。けれども、)

冷笑と満足とに充ちた笑い声が起る。けれども、

(むくいぬのやつははなしぎわにもただははなさない。)

むく犬の奴は放し際にも唯は放さない。

(ぐいといちだんはげしくひいておいて、よろけるところを、)

ぐいと一段烈しく曳いておいて、徒倚るところを、

(こんどはぎゃくに、どんとつきとばす。)

こんどは逆に、どんと突飛ばす。

(どんたはあしのとめばもないようによろよろして、)

鈍太は足の止め場もないようによろよろして、

(わたしのむねのあたりにたおれかかると、おっとあぶない)

私の胸の辺りに倒れかかると、「おっと危ない」

(とついでにだきこんで、からだごとちからまかせにしめつけてやる。)

とついでに抱き込んで、身体ごと力まかせに締めつけてやる。

(こきゅうがくるしいからしろくながいのどくびをうえにむけて、)

呼吸が苦しいから白く長い咽喉首を上に向けて、

など

(がっくりとあたまをうしろにおとしたかれはめをとじてむごんである。)

がっくりと頭を後ろに落した彼は眼を閉じて無言である。

(このまえにもさんざんいじったあとでちょうどこんなかっこうでだきしめたことがある。)

この前にも散々弄った後で丁度こんな格構で抱き締めた事がある。

(そのときだった。きゅうにへんなきがおこって、)

その時だった。急に変な気が起って、

(うしろざまにおとしたかれのこうとうぶをそっとおこすと、)

後ろ様に落した彼の後頭部をそっと起こすと、

(いきなりそのくちびるとわたしのくちびるとをあわせておもいきりすったこともあった。)

突然その唇と私の唇とを合わせて思い切り吸った事もあった。

(だれもみていたひとはなかったから、)

誰も見ていた人はなかったから、

(ないしょだよとあとでそっといいふくめておいた。)

「内緒だよ」とあとでそっと云い含めて置いた。

(そのやわらかですこしあつみのあるくちびるはかおのしろいのにはんして、)

その軟かで少し厚味のある唇は顔の白いのに反して、

(こころもちのいいたんこうしょくをおびていた。)

心持のいい淡紅色を帯びていた。

(ほんとにだれにもいうなよといやにしんぱいそうなかおでいうものだから)

「ほんとに誰にも言うなよ」といやに心配そうな顔で云うものだから

(どんたはにやりとわらった。いったら、これだぞと)

鈍太はニヤリと笑った。「言ったら、これだぞ」と

(すこしおどすようなこわねで、そのほおのにくをあつくつまんで)

少し威嚇ような声音で、その頬の肉を厚くつまんで

(ちからまかせにねじあげたら、いいやしない、いいやしないといった。)

力まかせに捻じあげたら、「云いやしない、云いやしない」と云った。

(ほんとにいわないかこういいながらどんたのかたにてをかけた。)

「ほんとに云わないか」こう云いながら鈍太の肩に手をかけた。

(わたしのこえがみょうにひくかったので、どんたはみをちぢめてだまっていた。)

私の声が妙に低かったので、鈍太は身を縮めて黙っていた。

(ちょうどそのときのふたりのようすはわかいおとこが、わかいこいびとに)

丁度その時の二人の様子は若い男が、若い恋人に

(せだくてぃーぶなささやきでもしているようにおもわれた。)

セダクティーブな私語きでもしているように思われた。

(わたしはどんたのしろいかおをのぞきこむようにながめていたが、)

私は鈍太の白い顔を覗き込むように眺めていたが、

(とうとうまたそのうぶうぶしいほおにくちびるをつけた。)

とうとう又そのうぶうぶしい頬に唇をつけた。

(どんたはされるがままになっていた。)

鈍太はされるがままになっていた。

(こんなときには、どんたにたいしてしょうににたいするようなかれんなかんじがおこる。)

こんな時には、鈍太に対して小児に対するような可憐な感じが起る。

(じつはどんたなんぞいじめるのはいやになることがあるのだ。けれども、)

実は鈍太なんぞ虐待めるのは厭になる事があるのだ。けれども、

(どんたのすべてがいじられなくてはいられないようにできている。)

鈍太の凡てが弄られなくてはいられないように出来ている。

(わたしのてがどんたのにくたいのいちぶにでもふれるとき、どんたのびじゃくな)

私の手が鈍太の肉体の一部にでも触れる時、鈍太の微弱な

(ていこうのちからがわたしのうでにくわえられるとき、わたしのかんにぴりぴりっと)

抵抗の力が私の腕に加えられる時、私の疳にピリピリッと

(さすようにかんじるあるきょうれつなしげきがある。とおもわず)

刺すように感じる或る強烈な刺激がある。と思わず

(かれのにくをひっつねってもやりたくなる。どろだらけなゆかにひったおして、)

彼の肉をひっ捻ってもやりたくなる。泥だらけな床に引っ倒して、

(うまのりになってもみたくなる。)

馬乗りになっても見たくなる。

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