車窓

(まっさらなことばだけずっととどめて)

真っ新な言葉だけずっと留めて

(やっとでてきたものをゆびさきでかんじるだけ)

やっと出てきたものを指先で感じるだけ

(まっしろなはなたばがそらでまって)

真っ白な花束が空で舞って

(ずっとつかめなかったあなたのゆびさき)

ずっと掴めなかった　あなたの指先

(ながれるしゃそうからびるがぼくをみおろしてわらって)

流れる車窓から　ビルが僕を見下ろして笑って

(きのうてれびでやっていたみせにひとがならんでる)

昨日テレビでやっていた　店に人が並んでる

(なにげなくとおりすぎたしんごうふみきりかいさつきれっしゃもぜんぶ)

何気なく通り過ぎた　信号、踏切、改札機、列車も全部

(めにやきつけてすこしだけめをとじる)

目に焼き付けて　少しだけ目を閉じる

(いままでのひびがひとりあるきしたらくようにせをにらまれながら)

今までの日々が独り歩きした　落陽に背を睨まれながら

(すかーとのはしがわらっているようにゆれてる)

スカートの端が笑っているように揺れてる

(とけいのはりがとまったときからおとなんてきこえてないのに)

時計の針が止まった時から　音なんて聞こえてないのに

(またゆめであえたらどこへだって)

また夢で会えたら　どこへだって

(ゆっくりとたなびくくもをおいかけて)

ゆっくりと棚引く雲を追いかけて

(たったすうびょうかんでふわりきえてしまった)

たった数秒間で　ふわり、消えてしまった

(はっきりとみえているきょうかいせん)

はっきりと見えている境界線

(さっきまでくもをつかんでしらなみをはんしゃして)

さっきまで雲を掴んで　白波を反射して

(ながれるしゃそうからきぎはおおきくてをふって)

流れる車窓から　木々は大きく手を振って

(ひのおちぎわのせいだよないなほもそれにつづいてる)

日の落ち際のせいだよな　稲穂もそれに続いてる

(かぎりなくとおりぬけたがいとううらろじこうえんどうろのけんか)

限りなく通り抜けた　街頭、裏路地、公園、道路の献花

(まただきよせてすこしだけおもいだす)

また抱き寄せて　少しだけ思い出す

(これからのみちはひとりでいくんだらくようにてをゆらされながら)

これからの道は一人で行くんだ　落葉に手を揺らされながら

(きょうだけはけしきがとまってもいいや)

今日だけは景色が止まってもいいや

(もけいのまちがこわれたときからかぜなんてかんじてないのに)

模型の街が壊れた時から　風なんて感じてないのに

(まだなつのかおりをあつめていた)

まだ夏の香りを集めていた

(いままでのひびがひとりあるきしたらくようにせをさすられながら)

今までの日々が独り歩きした　落陽に背をさすられながら

(すかーとのきみにさいごのなみだがてをふる)

スカートの君に　最後の涙が手を振る

(とけいのはりがとまったときからおとなんてきこえてないのに)

時計の針が止まった時から　音なんて聞こえてないのに

(かみさまこんどでいいからまた)

神様、今度でいいから　また

(いつかあなたのゆめのなかで)

いつか　あなたの夢の中で