夏目漱石「こころ」3-58

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-58
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
6:重く(あつく)
21:確かり(しっかり)
28:一先(ひとまず)
38:漬りました(つかりました)
40;倦怠くて(だるくて)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回は少し長めです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 subaru 8396 8.6 97.3% 230.1 1985 53 40 2024/08/08
2 berry 8367 8.4 98.9% 233.4 1974 21 40 2024/08/08
3 HAKU 7906 8.1 97.4% 245.5 1993 52 40 2024/08/07
4 □「いいね」する 7796 8.1 95.5% 243.7 1992 92 40 2024/08/08
5 ヤス 6977 S++ 7.3 94.9% 270.3 1992 106 40 2024/08/08

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問題文

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(あなたがたからみてしょうしせんばんなこともそのときのわたくしにはじっさいだいこんなんだったのです。)

貴方がたから見て笑止千万な事もその時の私には実際大困難だったのです。

(わたくしはたびさきでもうちにいたときとおなじようにひきょうでした。)

私は旅先でも宅にいた時と同じように卑怯でした。

(わたくしはしじゅうきかいをとらえるきでけいをかんさつしていながら、)

私は始終機会を捕える気でKを観察していながら、

(へんにこうとうてきなかれのたいどをどうすることもできなかったのです。)

変に高踏的な彼の態度をどうする事も出来なかったのです。

(わたくしにいわせると、かれのしんぞうのしゅういは)

私に云わせると、彼の心臓の周囲は

(くろいうるしであつくぬりかためられたのもどうぜんでした。)

黒い漆で重く塗り固められたのも同然でした。

(わたくしのそそぎかけようとするちしおは、)

私の注ぎ懸けようとする血潮は、

(いってきもそのしんぞうのなかへはいらないで、ことごとくはじきかえされてしまうのです。)

一滴もその心臓の中へ入らないで、悉く弾き返されてしまうのです。

(あるときはあまりにけいのようすがつよくてたかいので、)

或時はあまりにKの様子が強くて高いので、

(わたくしはかえってあんしんしたこともあります。)

私は却って安心した事もあります。

(そうしてじぶんのうたがいをはらのなかでこうかいするとともに、)

そうして自分の疑を腹の中で後悔すると共に、

(おなじはらのなかで、けいにわびました。)

同じ腹の中で、Kに詫びました。

(わびながらじぶんがひじょうにかとうなにんげんのようにみえて、)

詫びながら自分が非常に下等な人間のように見えて、

(きゅうにいやなこころもちになるのです。)

急に厭な心持になるのです。

(しかししばらくすると、いぜんのうたがいがまたぎゃくもどりをして、つよくうちかえしてきます。)

然し少時すると、以前の疑が又逆戻りをして、強く打ち返して来ます。

(すべてがうたがいからわりだされるのですから、すべてがわたくしにはふりえきでした。)

凡てが疑いから割り出されるのですから、凡てが私には不利益でした。

(ようぼうもけいのほうがおんなにすかれるようにみえました。)

容貌もKの方が女に好かれるように見えました。

(せいしつもわたくしのようにこせこせしていないところが、)

性質も私のようにこせこせしていないところが、

(いせいにはきにいるだろうとおもわれました。)

異性には気に入るだろうと思われました。

(どこかまがぬけていて、)

何処か間が抜けていて、

など

(それでどこかにしっかりしたおとこらしいところのあるてんも、)

それで何処かに確かりした男らしいところのある点も、

(わたくしよりはゆうせいにみえました。)

私よりは優勢に見えました。

(がくりょくになればせんもんこそちがいますが、)

学力になれば専門こそ違いますが、

(わたくしはむろんけいのてきでないとじかくしていました。ーーすべてむこうのいいところだけが)

私は無論Kの敵でないと自覚していました。ーー凡て向うの好いところだけが

(こういちどにめさきへちらつきだすと、)

こう一度に眼先へ散らつき出すと、

(ちょっとあんしんしたわたくしはすぐもとのふあんにたちかえるのです。)

ちょっと安心した私はすぐ元の不安に立ち返るのです。

(けいはおちつかないわたくしのようすをみて、)

Kは落ち付かない私の様子を見て、

(いやならひとまずとうきょうへかえってもいいといったのですが、)

厭なら一先東京へ帰っても可いと云ったのですが、

(そういわれると、わたくしはきゅうにかえりたくなくなりました。)

そう云われると、私は急に帰りたくなくなりました。

(じつはけいをとうきょうへかえしたくなかったのかもしれません。)

実はKを東京へ帰したくなかったのかも知れません。

(ふたりはぼうしゅうのはなをまわってむこうがわへでました。)

二人は房州の鼻を廻って向う側へ出ました。

(われわれはあついひにいられながら、くるしいおもいをして、)

我々は暑い日に射られながら、苦しい思いをして、

(かずさのそこいちりにだまされながら、うんうんあるきました。)

上総の其所一里に騙されながら、うんうん歩きました。

(わたくしにはそうしてあるいているいみがまるでわからなかったくらいです。)

私にはそうして歩いている意味がまるで解らなかった位です。

(わたくしはじょうだんはんぶんけいにそういいました。)

私は冗談半分Kにそう云いました。

(するとけいはあしがあるからあるくのだとこたえました。)

するとKは足があるから歩くのだと答えました。

(そうしてあつくなると、)

そうして暑くなると、

(うみにはいっていこうといって、どこでもかまわずしおへつかりました。)

海に入って行こうと云って、何処でも構わず潮へ漬りました。

(そのあとをまたつよいひでてりつけられるのですから、)

その後を又強い日で照り付けられるのですから、

(からだがだるくてぐたぐたになりました。)

身体が倦怠くてぐたぐたになりました。

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