怖い話《4階の腐臭》

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問題文

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(なつもおわりの9がつじょうじゅん。)

夏も終わりの9月上旬。

(ひっこしがおわり、てつだってくれたゆうじんもかえって、)

引越しが終わり、手伝ってくれた友人も帰って、

(いえでひとりのんびりしていたら、ふとだいどころせんざいをかいわすれていたことをおもいだした。)

家で一人のんびりしていたら、ふと台所洗剤を買い忘れていた事を思い出した。

(こしてきたのはちく20ねん、ごかいだてえれべーたーなしのあぱーと。502ごうしつ。)

越してきたのは築20年、五階建てエレベーター無しのアパート。502号室。

(かいだんののぼりおりがおっくうだったのでつぎのかいもののときでいいかぁともおもったが、)

階段の昇り降りが億劫だったので次の買い物の時でいいかぁとも思ったが、

(ゆうじんがくいちらかしていったさらをほうちするのはきがひけた。)

友人が食い散らかしていった皿を放置するのは気が引けた。

(しかたない・・いくか。かいだんをだるそうにおりていると、)

仕方ない・・行くか。階段をダルそうに降りていると、

(よんかいのかいだんにいちばんちかいへやのどあがはんびらきになっていることにきがついた。)

四階の階段に一番近い部屋のドアが半開きになっている事に気が付いた。

(わずかにみえるそのすきまからは、そらのぺっとぼとるとさっちゅうざいのかんがみえた。)

僅かに見えるその隙間からは、空のペットボトルと殺虫剤の缶が見えた。

(どあはあきかんでつっかえてあった。)

ドアは空き缶でつっかえてあった。

(こんなあついのに、くーらーつけずによくいられるわ、)

こんな暑いのに、クーラーつけずによくいられるわ、

(とおもいつつそのままかいだんをおりた。)

と思いつつそのまま階段を降りた。

(くさい。)

臭い。

(そうおもいはじめたのは、こしてきてよっかがたったころ。よんかいがいようにくさいのだ。)

そう思い始めたのは、越してきて四日が経った頃。四階が異様に臭いのだ。

(あきらかになにかいきものだったものがくさっている。そんなにおいだ。)

明らかに何か生き物だった物が腐っている。そんな臭いだ。

(すぐにあやしいとおもったのはつねにはんびらきの405ごうしつ。)

すぐに怪しいと思ったのは常に半開きの405号室。

(とじているところをみたことがない。においはあそこからきている。)

閉じている所を見たことがない。臭いはあそこからきている。

(そうおもいはじめたら、もうそうとしかおもえなくなってきた。)

そう思い始めたら、もうそうとしか思えなくなってきた。

(おれはまだいいほうだ。おとなりさんなんかかわいそうに。)

俺はまだいい方だ。お隣さんなんか可哀想に。

(へたしたらこのにおいがじぶんのへやにまではいってきてるんじゃないか??)

下手したらこの臭いが自分の部屋にまで入ってきてるんじゃないか??

など

(あるひ。ばいとがおわりかいだんをのぼっていると、405ごうしつのどあに、)

ある日。バイトが終わり階段を上っていると、405号室のドアに、

(「くさいんだよ。なんとかしろ。」と、はりがみがはってあった。)

「臭いんだよ。何とかしろ。」と、張り紙が貼ってあった。

(さすがにおとなりさんがしびれをきらしたか。とかんしんしたそのしゅんかん。)

流石にお隣さんが痺れを切らしたか。と感心したその瞬間。

(びたん!!!!!)

ビタン!!!!!

(どあからけむくじゃらのしろいてがでてきてはりがみを)

ドアから毛むくじゃらの白い手が出てきて張り紙を

(ぐしゃっとつかむとそのままどあのなかにきえていった。)

グシャッと掴むとそのままドアの中に消えていった。

(がたん!!!!)

ガタン!!!!

(あせまみれのしろいひげづらのかおがどあのすきまにくっついた。)

汗まみれの白い髭面の顔がドアの隙間にくっついた。

(おとこはおれをみるなりぼそっとなにかをつぶやいた。)

男は俺を見るなりボソッと何かを呟いた。

(ひっ。ちのけがひく。これまさか、おれがはったとおもわれてんじゃねえよな。)

ヒッ。血の気が引く。これまさか、俺が貼ったと思われてんじゃねえよな。

(「おれじゃないんですよ!そのはりがみ!」)

「俺じゃないんですよ!その張り紙!」

(いいおわるまえにどあがいきおいよくばたんとしまった。)

言い終わる前にドアが勢いよくバタンと閉まった。

(どうしよう。どうしよう。どうしよう。それしかあたまにうかばない。)

どうしよう。どうしよう。どうしよう。それしか頭に浮かばない。

(とにかくいえに。へやにかえろう。かいだんをかけあがり、どあにかぎをさす。)

とにかく家に。部屋に帰ろう。階段を駆け上がり、ドアに鍵を挿す。

(はいらない。がちゃがちゃがちゃがちゃ)

入らない。ガチャガチャガチャガチャ

(しまった、うらおもてぎゃくか!がちゃがちゃ)

しまった、表裏逆か!ガチャガチャ

(はいった!どあのぶをひこうとしたとき、ふと405ごうしつがのうりにうかぶ。)

入った!ドアノブを引こうとした時、ふと405号室が脳裏に浮かぶ。

(502ごうしつからは、どあからてすりごしにかいだんとそのちかくの405ごうしつが)

502号室からは、ドアから手すり越しに階段とその近くの405号室が

(みえるようになっている。いをけっしてふりかえる。)

見えるようになっている。意を決して振り返る。

(405ごうしつのどあがぜんかいになっていた。)

405号室のドアが全開になっていた。

(へやはまっくらだ。あいつがいない。)

部屋は真っ暗だ。あいつがいない。

(かんがえるまもなくからだがかってにじぶんのへやにはいりかぎをしめていた。)

考える間もなく体が勝手に自分の部屋に入り鍵を閉めていた。

(しんぞうがばくばくとなる。)

心臓がバクバクと鳴る。

(ばくばくばくばくばくばくばくばくばくばく)

バクバクバクバクバクバクバクバクバクバク

(ばくばくばくばくばくばくばくばくばくばく)

バクバクバクバクバクバクバクバクバクバク

(どんどんどんどんどんどんどんどんどんどん)

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

(せなかのとびらがどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん)

背中の扉がドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

(だれか。だれかたすけて。)

誰か。誰か助けて。

(ごとん。もうれつににおうなにかがゆうびんうけにはいった。)

ゴトン。猛烈に匂う何かが郵便受けに入った。

(ゆうびんうけをあけると、なにかところどころくろくへんしょくしたぞうきのようなものがふたつころがった。)

郵便受けを開けると、何か所々黒く変色した臓器のようなものが二つ転がった。

(あまりのくささに、おもわずのどからとしゃぶつがあがってきて、)

あまりの臭さに、思わず喉から吐瀉物が上がってきて、

(たえきれずといれにかけこんだ。)

耐えきれずトイレに駆け込んだ。

(がたがたふるえながらよるがあけるのをもうふにくるまりながらまち、)

ガタガタ震えながら夜が明けるのを毛布にくるまりながら待ち、

(あさいちでおおやさんにでんわをいれた。)

朝一で大家さんに電話を入れた。

(しゅごじゅつごがあべこべになりながらなんとかきのうのことをつたえると、おおやさんは、)

主語述語があべこべになりながらなんとか昨日の事を伝えると、大家さんは、

(「こんどは405ごうしつのひとねえ~いや~ね?まえにもほかのじゅうみんのほうかられんらく)

「今度は405号室の人ねえ~いや~ね?前にも他の住民の方から連絡

(もらったんですよ。でもこっちじゃどうしようもできないんですよ~あはは」)

もらったんですよ。でもこっちじゃどうしようもできないんですよ~あはは」

(こいつはなんでのんきにわらってるんだ?)

こいつは何で呑気に笑ってるんだ?

(けっきょくけいさつにれんらくしても、「ちゅういしときますね~」としかいわれなかった。)

結局警察に連絡しても、「注意しときますね~」としか言われなかった。

(とにかくげんかんにころがったぞうきのようなものがくさすぎて、)

とにかく玄関に転がった臓器のような物が臭すぎて、

(かんきしなければとどあをかんでつっかえてすこしだけあけている。)

換気しなければとドアを缶でつっかえて少しだけ開けている。

(まどもぜんかいだ。そうしなければとてもくさくてねれやしないから。)

窓も全開だ。そうしなければとても臭くて寝れやしないから。

(このはなしをかいているいまもおれはへやからでられない。だってあいつが、)

この話を書いている今も俺は部屋から出られない。だってあいつが、

(ほんのすこしひらいたどあのすきまから、じっとこちらをみているきがするから。)

ほんの少し開いたドアの隙間から、じっとこちらを見ている気がするから。

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