夏目漱石「こころ」3-61

夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
19:張合(はりあい)
25:鞭ったり(むちうったり)
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | なおきち | 6791 | S++ | 6.9 | 97.9% | 197.3 | 1369 | 29 | 28 | 2025/01/12 |
2 | 犬さんローラン | 4001 | C | 4.1 | 95.5% | 330.9 | 1389 | 65 | 28 | 2025/03/10 |
3 | sada | 3347 | D | 3.4 | 96.0% | 397.6 | 1388 | 57 | 28 | 2025/01/13 |
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問題文
(さんじゅういち)
三十一
(「そのときわたくしはしきりににんげんらしいということばをつかいました。)
「その時私はしきりに人間らしいという言葉を使いました。
(けいはこのにんげんらしいということばのうちに、)
Kはこの人間らしいという言葉のうちに、
(わたくしがじぶんのじゃくてんのすべてをかくしているというのです。)
私が自分の弱点の凡てを隠していると云うのです。
(なるほどあとからかんがえれば、けいのいうとおりでした。)
成程後から考えれば、Kのいう通りでした。
(しかしにんげんらしくないいみを)
然し人間らしくない意味を
(けいになっとくさせるためにそのことばをつかいだしたわたくしには、)
Kに納得させるためにその言葉を使い出した私には、
(しゅったつてんがすでにはんこうてきでしたから、それをはんせいするようなよゆうはありません。)
出立点が既に反抗的でしたから、それを反省するような余裕はありません。
(わたくしはなおのことじせつをしゅちょうしました。)
私は猶の事自説を主張しました。
(するとけいがかれのどこをつらまえてにんげんらしくないというのかと)
するとKが彼の何処をつらまえて人間らしくないと云うのかと
(わたくしにきくのです。)
私に聞くのです。
(わたくしはかれにつげました。ーーきみはにんげんらしいのだ。)
私は彼に告げました。ーー君は人間らしいのだ。
(あるいはにんげんらしすぎるかもしれないのだ。)
或は人間らし過ぎるかもしれないのだ。
(けれどもくちのさきだけではにんげんらしくないようなことをいうのだ。)
けれども口の先だけでは人間らしくないような事を云うのだ。
(またにんげんらしくないようにふるまおうとするのだ。)
又人間らしくないように振舞おうとするのだ。
(わたくしがこういったとき、かれはただじぶんのしゅうようがたりないから、)
私がこう云った時、彼はただ自分の修養が足りないから、
(ひとにはそうみえるかもしれないとこたえただけで、)
他にはそう見えるかも知れないと答えただけで、
(いっこうわたくしをはんばくしようとしませんでした。)
一向私を反駁しようとしませんでした。
(わたくしははりあいがぬけたというよりも、かえってきのどくになりました。)
私は張合が抜けたというよりも、却って気の毒になりました。
(わたくしはすぐぎろんをそこできりあげました。)
私はすぐ議論を其所で切り上げました。
(かれのちょうしもだんだんしずんできました。)
彼の調子もだんだん沈んで来ました。
(もしわたくしがかれのしっているとおりむかしのひとをしるならば、)
もし私が彼の知っている通り昔の人を知るならば、
(そんなこうげきはしないだろうといってちょうぜんとしていました。)
そんな攻撃はしないだろうと云って悵然としていました。
(けいのくちにしたむかしのひととは、むろんえいゆうでもなければごうけつでもないのです。)
Kの口にした昔の人とは、無論英雄でもなければ豪傑でもないのです。
(れいのためににくをしいたげたり、みちのためにたいをむちうったりした)
霊のために肉を虐げたり、道のために体を鞭ったりした
(いわゆるなんぎょうくぎょうのひとをさすのです。)
所謂難行苦行の人を指すのです。
(けいはわたくしに、どのくらいそのためにくるしんでいるかわからないのが、)
Kは私に、どの位そのために苦しんでいるか解らないのが、
(いかにもざんねんだとめいげんしました。)
如何にも残念だと明言しました。