夏目漱石「こころ」3-67

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-67
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2:擲き付けようか(たたきつけようか)
14:傾むけている(かたむけている)
34:気兼なく(きがねなく)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それなりの長さとなっております。i
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8104 8.2 98.4% 232.7 1916 30 35 2024/08/19
2 BEASTななせ 6652 S+ 7.0 94.6% 283.5 1998 112 35 2024/10/19
3 デコポン 6623 S+ 6.8 97.1% 283.4 1934 57 35 2024/09/28
4 すもさん 6098 A++ 6.3 96.2% 318.3 2020 79 35 2024/10/05
5 饅頭餅美 5723 A 6.0 95.3% 322.9 1943 95 35 2024/10/12

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問題文

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(わたくしはそれまでちゅうちょしていたじぶんのこころを、)

私はそれまで躊躇していた自分の心を、

(ひとおもいにあいてのむねへたたきつけようかとかんがえだしました。)

一思いに相手の胸へ擲き付けようかと考え出しました。

(わたくしのあいてというのはおじょうさんではありません。)

私の相手というのは御嬢さんではありません。

(おくさんのことです。)

奥さんの事です。

(おくさんにおじょうさんをくれろとめいはくなだんぱんをひらこうかとかんがえたのです。)

奥さんに御嬢さんをくれろと明白な談判を開こうかと考えたのです。

(しかしそうけっしんしながら、いちにちいちにちとわたくしはだんこうのひをのばしていったのです。)

然しそう決心しながら、一日一日と私は断行の日を延ばして行ったのです。

(そういうとわたくしはいかにもゆうじゅうなおとこのようにみえます。)

そういうと私はいかにも優柔な男のように見えます。

(またみえてもかまいませんが、じっさいわたくしのすすみかねたのは、)

又見えても構いませんが、実際私の進みかねたのは、

(いしのちからにふそくがあったためではありません。)

意志の力に不足があった為ではありません。

(けいのこないうちは、ひとのてにのるのがいやだというがまんがわたくしをおさえつけて、)

Kの来ないうちは、他の手に乗るのが厭だという我慢が私を抑え付けて、

(いっぽもうごけないようにしていました。)

一歩も動けないようにしていました。

(けいのきたのちは、もしかするとおじょうさんがけいのほうにいがあるのではなかろうか)

Kの来た後は、もしかすると御嬢さんがKの方に意があるのではなかろうか

(というぎねんがたえずわたくしをせいするようになったのです。)

という疑念が絶えず私を制するようになったのです。

(はたしておじょうさんがわたくしよりもけいにこころをかたむけているならば、)

果して御嬢さんが私よりもKに心を傾むけているならば、

(このこいはくちへいいだすかちのないものとわたくしはけっしんしていたのです。)

この恋は口へ云い出す価値のないものと私は決心していたのです。

(はじをかかせられるのがつらいなどというのとはすこしわけがちがいます。)

耻を搔かせられるのが辛いなどと云うのとは少し訳が違ます。

(こっちでいくらおもっても、むこうがないしんほかのひとにあいのまなこをそそいでいるならば、)

此方でいくら思っても、向うが内心他の人に愛の眼を注いでいるならば、

(わたくしはそんなおんなといっしょになるのはいやなのです。)

私はそんな女と一所になるのは厭なのです。

(よのなかではいやおうなしにじぶんのすいたおんなをよめにもらって)

世の中では否応なしに自分の好いた女を嫁に貰って

(うれしがっているひともありますが、それはわたくしたちよりよっぽどせけんずれのしたおとこか、)

嬉しがっている人もありますが、それは私達より余っ程世間ずれのした男か、

など

(さもなければあいのしんりがよくのみこめないどんぶつのすることと、)

さもなければ愛の心理がよく呑み込めない鈍物のする事と、

(とうじのわたくしはかんがえていたのです。)

当時の私は考えていたのです。

(いちどもらってしまえばどうかこうかおちつくものだくらいのてつりでは、)

一度貰ってしまえばどうかこうか落ち付くものだ位の哲理では、

(しょうちすることができないくらいわたくしはねっしていました。)

承知する事が出来ない位私は熱していました。

(つまりわたくしはきわめてこうしょうなあいのりろんかだったのです。)

つまり私は極めて高尚な愛の理論家だったのです。

(どうじにもっともうえんなあいのじっさいかだったのです。)

同時に最も迂遠な愛の実際家だったのです。

(かんじんのおじょうさんに、ちょくせつこのわたくしというものをうちあけるきかいも、)

肝心の御嬢さんに、直接この私というものを打ち明ける機会も、

(ながくいっしょにいるうちにはときどきでてきたのですが、)

長く一緒にいるうちには時々出て来たのですが、

(わたくしはわざとそれをさけました。)

私はわざとそれを避けました。

(にほんのしゅうかんとして、そういうことはゆるされていないのだというじかくが、)

日本の習慣として、そういう事は許されていないのだという自覚が、

(そのころのわたくしにはつよくありました。)

その頃の私には強くありました。

(しかしけっしてそればかりがわたくしをそくばくしたとはいえません。)

然し決してそればかりが私を束縛したとは云えません。

(にほんじん、ことににほんのわかいおんなは、そんなばあいに、)

日本人、ことに日本の若い女は、そんな場合に、

(あいてにきがねなくじぶんのおもったとおりを)

相手に気兼なく自分の思った通りを

(えんりょせずにくちにするだけのゆうきにとぼしいものとわたくしはみこんでいたのです。)

遠慮せずに口にするだけの勇気に乏しいものと私は見込んでいたのです。

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