夏目漱石「こころ」3-69

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-69
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
7:顋(あご)
11:珍らしく(めずらしく)
20:回って(めぐって)
22:朧気(おぼろげ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回もそれなりの長さです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 BEASTななせ 6561 S+ 6.9 94.2% 266.7 1863 113 36 2024/10/23
2 mame 5141 B+ 5.5 93.8% 327.7 1804 119 36 2024/12/14
3 やまちゃん 5041 B+ 5.1 98.4% 351.1 1798 28 36 2024/11/30
4 4789 B 5.3 89.9% 348.7 1881 211 36 2024/12/01
5 ぶす 4706 C++ 5.2 90.4% 341.0 1795 190 36 2024/12/04

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問題文

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(それからにさんにちたったのちのことでしたろう、)

それから二三日経った後の事でしたろう、

(おくさんとおじょうさんはあさからいちがやにいるしんるいのところへいくといって)

奥さんと御嬢さんは朝から市ヶ谷にいる親類の所へ行くと云って

(うちをでました。)

宅を出ました。

(けいもわたくしもまだがっこうのはじまらないころでしたから、)

Kも私もまだ学校の始まらない頃でしたから、

(るすいどうようあとにのこっていました。)

留守居同様あとに残っていました。

(わたくしはしょもつをよむのもさんぽにでるのもいやだったので、)

私は書物を読むのも散歩に出るのも厭だったので、

(ただばくぜんとひばちのふちにひじをのせてじっとあごをささえたなりかんがえていました。)

ただ漠然と火鉢の縁に肱を載せて凝と顋を支えたなり考えていました。

(となりのへやにいるけいもいっこうおとをたてませんでした。)

隣の室にいるKも一向音を立てませんでした。

(そうほうともいるのだかいないのだかわからないくらいしずかでした。)

双方とも居るのだか居ないのだか分らない位静でした。

(もっともこういうことは、ふたりのあいだがらとして)

尤もこういう事は、二人の間柄として

(べつにめずらしくもなんともなかったのですから、)

別に珍らしくも何ともなかったのですから、

(わたくしはべつだんそれをきにもとめませんでした。)

私は別段それを気にも留めませんでした。

(じゅうじごろになって、けいはふいにしきりのふすまをあけてわたくしとかおをみあわせました。)

十時頃になって、Kは不意に仕切の襖を開けて私と顔を見合せました。

(かれはしきいのうえにたったまま、わたくしになにをかんがえているとききました。)

彼は敷居の上に立ったまま、私に何を考えていると聞きました。

(わたくしはもとよりなにもかんがえていなかったのです。)

私はもとより何も考えていなかったのです。

(もしかんがえていたとすれば、)

もし考えていたとすれば、

(いつものとおりおじょうさんがもんだいだったかもしれません。)

何時もの通り御嬢さんが問題だったかも知れません。

(そのおじょうさんにはむろんおくさんもくっついていますが、)

その御嬢さんには無論奥さんも食っ付いていますが、

(ちかごろではけいじしんがきりはなすべからざるひとのように、)

近頃ではK自身が切り離すべからざる人のように、

(わたくしのあたまのなかをぐるぐるめぐって、このもんだいをふくざつにしているのです。)

私の頭の中をぐるぐる回って、この問題を複雑にしているのです。

など

(けいとかおをみあわせたわたくしは、)

Kと顔を見合せた私は、

(いままでおぼろげにかれをいっしゅのじゃまもののごとくいしきしていながら、)

今まで朧気に彼を一種の邪魔ものの如く意識していながら、

(あきらかにそうとこたえるわけにいかなかったのです。)

明らかにそうと答える訳に行かなかったのです。

(わたくしはいぜんとしてかれのかおをみてだまっていました。)

私は依然として彼の顔を見て黙っていました。

(するとけいのほうからつかつかとわたくしのざしきへはいってきて、)

するとKの方からつかつかと私の座敷へ入って来て、

(わたくしのあたっているひばちのまえにすわりました。)

私のあたっている火鉢の前に坐りました。

(わたくしはすぐりょうひじをひばちのふちからとりのけて、)

私はすぐ両肱を火鉢の縁から取り除けて、

(こころもちそれをけいのほうへおしやるようにしました。)

心持それをKの方へ押し遣るようにしました。

(けいはいつもににあわないはなしをはじめました。)

Kは何時もに似合わない話を始めました。

(おくさんとおじょうさんはいちがやのどこへいったのだろうというのです。)

奥さんと御嬢さんは市ヶ谷の何処へ行ったのだろうと云うのです。

(わたくしはおおかたおばさんのところだろうとこたえました。)

私は大方叔母さんの所だろうと答えました。

(けいはそのおばさんはなんだとまたききます。)

Kはその叔母さんは何だと又聞きます。

(わたくしはやはりぐんじんのさいくんだとおしえてやりました。)

私はやはり軍人の細君だと教えて遣りました。

(するとおんなのねんしはたいていじゅうごにちすぎだのに、)

すると女の年始は大抵十五日過だのに、

(なぜそんなにはやくでかけたのだろうとしつもんするのです。)

何故そんなに早く出掛けたのだろうと質問するのです。

(わたくしはなぜだかしらないとあいさつするよりほかにしかたがありませんでした。)

私は何故だか知らないと挨拶するより外に仕方がありませんでした。

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