夏目漱石「こころ」3-75

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夏目漱石「こころ」3-75
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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6:洋燈(らんぷ)
6:斜に(ななめに)
9:暖ためる(あっためる)
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ちょっと長めです。

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問題文

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(そのばんわたくしはいつもよりはやくとこへはいりました。)

その晩私は何時もより早く床へ入りました。

(わたくしがしょくたくのとききぶんがわるいといったのをきにして、)

私が食卓の時気分が悪いと云ったのを気にして、

(おくさんはじゅうじごろそばゆをもってきてくれました。)

奥さんは十時頃蕎麦湯を持って来てくれました。

(しかしわたくしのへやはもうまっくらでした。)

然し私の室はもう真暗でした。

(おくさんはおやおやといって、しきりのふすまをほそめにあけました。)

奥さんはおやおやと云って、仕切りの襖を細目に開けました。

(らんぷのひかりがけいのつくえからななめにぼんやりとわたくしのへやにさしこみました。)

洋燈の光がKの机から斜にぼんやりと私の室に差し込みました。

(けいはまだおきていたものとみえます。)

Kはまだ起きていたものと見えます。

(おくさんはまくらもとにすわって、おおかたかぜをひいたのだろうから)

奥さんは枕元に坐って、大方風邪を引いたのだろうから

(からだをあっためるがいいといって、)

身体を暖ためるが可いと云って、

(ゆのみをかおのそばへつきつけるのです。)

湯呑を顔の傍へ突き付けるのです。

(わたくしはやむをえず、どろどろしたそばゆをおくさんのみているまえでのみました。)

私は已むを得ず、どろどろした蕎麦湯を奥さんの見ている前で飲みました。

(わたくしはおそくなるまでくらいなかでかんがえていました。)

私は遅くなるまで暗いなかで考えていました。

(むろんひとつもんだいをぐるぐるかいてんさせるだけで、ほかになんのこうりょくもなかったのです。)

無論一つ問題をぐるぐる廻転させるだけで、外に何の効力もなかったのです。

(わたくしはとつぜんけいがいまとなりのへやでなにをしているだろうとおもいだしました。)

私は突然Kが今隣りの室で何をしているだろうと思い出しました。

(わたくしはなかばむいしきにおいとこえをかけました。)

私は半ば無意識においと声を掛けました。

(するとむこうでもおいとへんじをしました。)

すると向うでもおいと返事をしました。

(けいもまだおきていたのです。)

Kもまだ起きていたのです。

(わたくしはまだねないのかとふすまごしにききました。)

私はまだ寐ないのかと襖ごしに聞きました。

(もうねるというかんたんなあいさつがありました。)

もう寐るという簡単な挨拶がありました。

(なにをしているのだとわたくしはかさねてといました。)

何をしているのだと私は重ねて問いました。

など

(こんどはけいのこたえがありません。)

今度はKの答がありません。

(そのかわりごろっぷんたったとおもうころに、おしいれをがらりとあけて、)

その代り五六分経ったと思う頃に、押入をがらりと開けて、

(とこをのべるおとがてにとるようにきこえました。)

床を延べる音が手に取るように聞こえました。

(わたくしはもうなんじかとまたたずねました。)

私はもう何時かと又尋ねました。

(けいはいちじにじゅっぷんだとこたえました。)

Kは一時二十分だと答えました。

(やがてらんぷをふっとふきけすおとがして、)

やがて洋燈をふっと吹き消す音がして、

(うちじゅうがまっくらなうちに、しんとしずまりました。)

家中が真暗なうちに、しんと静まりました。

(しかしわたくしのめはそのくらいなかでいよいよさえてくるばかりです。)

然し私の眼はその暗いなかで愈冴えて来るばかりです。

(わたくしはまたなかばむいしきなじょうたいで、おいとけいにこえをかけました。)

私はまた半ば無意識な状態で、おいとKに声を掛けました。

(けいもいぜんとおなじようなちょうしで、おいとこたえました。)

Kも以前と同じような調子で、おいと答えました。

(わたくしはけさかれからきいたことについて、もっとくわしいはなしをしたいが、)

私は今朝彼から聞いた事に就いて、もっと詳しい話をしたいが、

(かれのつごうはどうだととうとうこっちからきりだしました。)

彼の都合はどうだととうとう此方から切り出しました。

(わたくしはむろんふすまごしにそんなだんわをこうかんするきはなかったのですが、)

私は無論襖越にそんな談話を交換する気はなかったのですが、

(けいのへんとうだけはそくざにえられることとかんがえたのです。)

Kの返答だけは即座に得られる事と考えたのです。

(ところがけいはさっきからにどおいとよばれて、)

ところがKは先刻から二度おいと呼ばれて、

(にどおいとこたえたようなすなおなちょうしで、こんどはおうじません。)

二度おいと答えたような素直な調子で、今度は応じません。

(そうだなあとひくいこえでしぶっています。)

そうだなあと低い声で渋っています。

(わたくしはまたはっとおもわせられました。)

私は又はっと思わせられました。

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