夏目漱石「こころ」3-84

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-84
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2:文字(もんじ)
6:尊とい(たっとい)
17:夜(よ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回は最後二行からの続きです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 BEASTななせ 6884 S++ 7.3 94.3% 212.5 1556 93 27 2024/10/29
2 mame 5542 A 5.8 94.7% 258.9 1519 84 27 2024/12/15
3 やまちゃん 4893 B 4.9 98.6% 304.5 1511 21 27 2024/12/05

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問題文

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(よんじゅうさん)

四十三

(「そのころはかくせいとかあたらしいとかいうもんじのまだないじぶんでした。)

「その頃は覚醒とか新らしいとかいう文字のまだない時分でした。

(しかしけいがふるいじぶんをさらりとなげだして、)

然しKが古い自分をさらりと投げ出して、

(いちいにあたらしいほうがくへはしりださなかったのは、)

一意に新らしい方角へ走り出さなかったのは、

(げんだいじんのかんがえがかれにかけていたからではなかったのです。)

現代人の考えが彼に欠けていたからではなかったのです。

(かれにはなげだすことのできないほどたっといかこがあったからです。)

彼には投げ出す事の出来ない程尊とい過去があったからです。

(かれはそのためにこんにちまでいきてきたといってもいいくらいなのです。)

彼はそのために今日まで生きて来たと云っても可い位なのです。

(だからけいがいっちょくせんにあいのもくてきぶつにむかってもうしんしないといって、)

だからKが一直線に愛の目的物に向って猛進しないと云って、

(けっしてそのあいのなまぬるいことをしょうこだてるわけにはいきません。)

決してその愛の生温い事を証拠立てる訳には行きません。

(いくらしれつなかんじょうがもえていても、かれはむやみにうごけないのです。)

いくら熾烈な感情が燃えていても、彼は無暗に動けないのです。

(ぜんごをわすれるほどのしょうどうがおこるきかいをかれにあたえないいじょう、)

前後を忘れる程の衝動が起る機会を彼に与えない以上、

(けいはどうしてもちょっとふみとどまって)

Kはどうしても一寸踏み留まって

(じぶんのかこをふりかえらなければならなかったのです。)

自分の過去を振り返らなければならなかったのです。

(そうするとかこがさししめすみちをいままでどおりあるかなければならなくなるのです。)

そうすると過去が指し示す路を今まで通り歩かなければならなくなるのです。

(そのうえかれにはげんだいじんのもたないごうじょうとがまんがありました。)

その上彼には現代人の有たない強情と我慢がありました。

(わたくしはこのそうほうのてんにおいてよくかれのこころをみぬいていたつもりなのです。)

私はこの双方の点に於て能く彼の心を見抜いていた積りなのです。

(うえのからかえったばんは、わたくしにとってひかくてきあんせいなよでした。)

上野から帰った晩は、私に取って比較的安静な夜でした。

(わたくしはけいがへやへひきあげたあとをおいかけて、かれのつくえのそばにすわりこみました。)

私はKが室へ引き上げたあとを追い懸けて、彼の机の傍に坐り込みました。

(そうしてとりとめもないせけんばなしをわざとかれにしむけました。)

そうして取り留めもない世間話をわざと彼に仕向けました。

(かれはめいわくそうでした。)

彼は迷惑そうでした。

など

(わたくしのめにはしょうりのいろがたしょうかがやいていたでしょう、)

私の眼には勝利の色が多少輝いていたでしょう、

(わたくしのこえにはたしかにとくいのひびきがあったのです。)

私の声にはたしかに得意の響があったのです。

(わたくしはしばらくけいとひとつひばちにてをかざしたあと、じぶんのへやにかえりました。)

私はしばらくKと一つ火鉢に手を翳した後、自分の室に帰りました。

(ほかのことにかけてはなにをしてもかれにおよばなかったわたくしも、)

外の事にかけては何をしても彼に及ばなかった私も、

(そのときだけはおそるるにたりないというじかくをかれにたいしてもっていたのです。)

その時だけは恐るるに足りないという自覚を彼に対して有っていたのです。

(わたくしはほどなくおだやかなねむりにおちました。)

私は程なく穏やかな眠に落ちました。

(しかしとつぜんわたくしのなをよぶこえでめをさましました。)

然し突然私の名を呼ぶ声で眼を覚ましました。

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