夏目漱石「こころ」3-85

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投稿者投稿者たけしいいね1お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-85
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4:燈火(あかり)
19:昨夕(ゆうべ)
35:鋭どい(するどい)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遅れあそばせながら「3-77」を作成いたしましたので、どうぞそちらも遊んでいただけると幸いです。
楽しみにして下さっている皆様には、話が飛んで混乱を招いたと思います。申し訳ございません。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 BEASTななせ 7299 7.5 97.0% 281.8 2122 65 39 2024/10/29
2 mame 5718 A 5.9 96.3% 345.4 2053 78 39 2024/12/15
3 やまちゃん 5007 B+ 5.0 98.5% 403.0 2049 31 39 2024/12/05

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問題文

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(わたくしはほどなくおだやかなねむりにおちました。)

私は程なく穏やかな眠に落ちました。

(しかしとつぜんわたくしのなをよぶこえでめをさましました。)

然し突然私の名を呼ぶ声で眼を覚ましました。

(みるとあいだのふすまがにしゃくばかりあいて、そこにけいのくろいかげがたっています。)

見ると間の襖が二尺ばかり開いて、其所にKの黒い影が立っています。

(そうしてかれのへやにはよいのとおりまだあかりがついているのです。)

そうして彼の室には宵の通りまだ燈火が点いているのです。

(きゅうにせかいのかわったわたくしは、すこしのあいだくちをきくこともできずに、)

急に世界の変った私は、少しの間口を利く事も出来ずに、

(ぼうっとして、そのこうけいをながめていました。)

ぼうっとして、その光景を眺めていました。

(そのときけいはもうねたのかとききました。)

その時Kはもう寐たのかと聞きました。

(けいはいつでもおそくまでおきているおとこでした。)

Kは何時でも遅くまで起きている男でした。

(わたくしはくろいかげぼうしのようなけいにむかって、なにかようかとききかえしました。)

私は黒い影法師のようなKに向って、何か用かと聞き返しました。

(けいはたいしたようでもない、ただもうねたか、まだおきているかとおもって、)

Kは大した用でもない、ただもう寐たか、まだ起きているかと思って、

(べんじょへいったついでにきいてみただけだとこたえました。)

便所へ行った序に聞いて見ただけだと答えました。

(けいはらんぷのひをせなかにうけているので、かれのかおいろやめつきは、)

Kは洋燈の灯を脊中に受けているので、彼の顔色や眼つきは、

(まったくわたくしにはわかりませんでした。)

全く私には分りませんでした。

(けれどもかれのこえはふだんよりもかえっておちついていたくらいでした。)

けれども彼の声は不断よりも却って落ち付いていた位でした。

(けいはやがてあけたふすまをぴたりとたてきりました。)

Kはやがて開けた襖をぴたりと立て切りました。

(わたくしのへやはすぐもとのくらやみにかえりました。)

私の室はすぐ元の暗闇に帰りました。

(わたくしはそのくらやみよりしずかなゆめをみるべくまためをとじました。)

私はその暗闇より静かな夢を見るべく又眼を閉じました。

(わたくしはそれぎりなにもしりません。)

私はそれぎり何も知りません。

(しかしよくあさになって、ゆうべのことをかんがえてみると、なんだかふしぎでした。)

然し翌朝になって、昨夕の事を考えて見ると、何だか不思議でした。

(わたくしはことによると、すべてがゆめではないかとおもいました。)

私はことによると、凡てが夢ではないかと思いました。

など

(それでめしをくうとき、けいにききました。)

それで飯を食う時、Kに聞きました。

(けいはたしかにふすまをあけてわたくしのなをよんだといいます。)

Kはたしかに襖を開けて私の名を呼んだと云います。

(なぜそんなことをしたのかとたずねると、べつにはっきりしたへんじもしません。)

何故そんな事をしたのかと尋ねると、別に判然した返事もしません。

(ちょうしのぬけたころになって、)

調子の抜けた頃になって、

(ちかごろはじゅくすいができるのかとかえってむこうからわたくしにとうのです。)

近頃は熟睡ができるのかと却って向うから私に問うのです。

(わたくしはなんだかへんにかんじました。)

私は何だか変に感じました。

(そのひはちょうどおなじじかんにこうぎのはじまるじかんわりになっていたので、)

その日は丁度同じ時間に講義の始まる時間割になっていたので、

(ふたりはやがていっしょにうちをでました。)

二人はやがて一所に宅を出ました。

(けさからゆうべのことがきにかかっているわたくしは、とちゅうでまたけいをついきゅうしました。)

今朝から昨夕の事が気に掛っている私は、途中でまたKを追窮しました。

(けれどもけいはやはりわたくしをまんぞくさせるようなこたえをしません。)

けれどもKはやはり私を満足させるような答をしません。

(わたくしはあのじけんについてなにかはなすつもりではなかったのかとねんをおしてみました。)

私はあの事件に付いて何か話す積りではなかったのかと念を押して見ました。

(けいはそうではないとつよいちょうしでいいきりました。)

Kはそうではないと強い調子で云い切りました。

(きのううえので「そのはなしはもうやめよう」といったではないかと)

昨日上野で『その話はもう止めよう』と云ったではないかと

(ちゅういするごとくにもきこえました。)

注意する如くにも聞こえました。

(けいはそういうてんにかけてするどいじそんしんをもったおとこなのです。)

Kはそういう点に掛けて鋭どい自尊心を有った男なのです。

(ふとそこにきのついたわたくしは)

不図其所に気のついた私は

(とつぜんかれのもちいた「かくご」ということばをれんそうしだしました。)

突然彼の用いた『覚悟』という言葉を連想し出しました。

(するといままでまるできにならなかったそのにじが)

すると今までまるで気にならなかったその二字が

(みょうなちからでわたくしのあたまをおさえはじめたのです。)

妙な力で私の頭を抑え始めたのです。

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