茜光花火

(あかねいろのわかれみちまで)

茜色の分かれ道まで

(わざとながいとおまわりをゆく)

わざと長い遠回りを行く

(のびたかげとみえないふあん)

伸びた影と見えない不安

(ふまないように)

踏まないように

(ふれないように)

触れないように

(そうだはなびでもしようって)

「そうだ、花火でもしよう」って

(むりにはしゃいだふりして)

無理にはしゃいだふりして

(きたみちをはしり)

来た道を走り

(まだあかるいのにほんとせっかちだな)

まだ明るいのにほんとせっかちだな

(もえつきてはこぼれて)

燃え尽きては零れて

(くだけるようにひかって)

砕けるように光って

(ぼくらのくもはらすほどのひかりじゃない)

僕らの雲晴らすほどの光じゃない

(それでもいのるように)

それでも祈るように

(つよくやきつけるように)

強く焼き付けるように

(みつめたひはいまもまたたいている)

見つめた火は今も瞬いている

(あかねのこるかえりみちは)

茜残る帰り道は

(はしゃいだぶんさびしくなって)

はしゃいだ分寂しくなって

(あしたまたねいつものばしょで)

「明日またね」いつもの場所で

(いわないまま)

言わないまま

(いえないまま)

言えないまま

(もっかいはなびでもしようって)

「もっかい、花火でもしよう」って

(わざととぼけてこらえた)

わざととぼけて堪えた

(でしゃばるななみだ)

でしゃばるな涙

(まだあかるいのにほんとせっかちだな)

まだ明るいのにほんとせっかちだな

(わかれるためであって)

別れるため出会って

(であったことくやんで)

出会ったこと悔やんで

(くすぶるようにのこったのはいたみしかない)

くすぶるように残ったのは痛みしかない

(それでもまたであって)

それでもまた出会って

(おんなじひをわかって)

同じ火を分かって

(もやしたひを)

燃やした日を

(みつめたひは)

見つめた陽は

(つないだひが)

繋いだ火が

(もえつきてもひかって)

燃え尽きても光って

(くだけてなおひかって)

砕けてなお光って

(ぼくらのひがてらしたのは)

僕らの火が照らしたのは

(いたみだけじゃない)

痛みだけじゃない

(とどけといのるように)

届けと祈るように

(あすにやきつけるように)

明日に焼き付けるように

(のこしたひはいまもまたたいている)

残した火は今も瞬いている

(あかねいろはあしたへつづいている)

茜色は明日へ続いている