夏目漱石「こころ」3ー103

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-103
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
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1:一層(いっそ)
1:有(あり)のまま
13:一雫(ひとしずく)
31:確な(たしかな)
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7833 8.0 97.3% 258.5 2081 56 37 2024/09/10

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問題文

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(わたくしはいっそおもいきって、ありのままをさいにうちあけようとしたことがなんどもあります。)

私は一層思い切って、有のままを妻に打ち明けようとした事が何度もあります。

(しかしいざというまぎわになると)

然しいざという間際になると

(じぶんいがいのあるちからがふいにきてわたくしをおさえつけるのです。)

自分以外のある力が不意に来て私を抑え付けるのです。

(わたくしをりかいしてくれるあなたのことだから、せつめいするひつようもあるまいとおもいますが、)

私を理解してくれる貴方の事だから、説明する必要もあるまいと思いますが、

(はなすべきすじだからはなしておきます。)

話すべき筋だから話して置きます。

(そのじぶんのわたくしはさいにたいしておのれをかざるきはまるでなかったのです。)

その時分の私は妻に対して己を飾る気はまるでなかったのです。

(もしわたくしがなきともにたいするとおなじようなぜんりょうなこころで、)

もし私が亡友に対すると同じような善良な心で、

(さいのまえにざんげのことばをならべたなら、)

妻の前に懺悔の言葉を並べたなら、

(さいはうれしなみだをこぼしてもわたくしのつみをゆるしてくれたにちがいないのです。)

妻は嬉し涙をこぼしても私の罪を許してくれたに違ないのです。

(それをあえてしないわたくしにりがいのださんがあるはずはありません。)

それを敢てしない私に利害の打算がある筈はありません。

(わたくしはたださいのきおくにあんこくないってんをいんするにしのびなかったから)

私はただ妻の記憶に暗黒な一点を印するに忍びなかったから

(うちあけなかったのです。)

打ち明けなかったのです。

(じゅんぱくなものにひとしずくのいんきでもようしゃなくふりかけるのは、)

純白なものに一雫の印気でも容赦なく振り掛けるのは、

(わたくしにとってたいへんなくつうだったのだとかいしゃくしてください。)

私にとって大変な苦痛だったのだと解釈して下さい。

(いちねんたってもけいをわすれることのできないわたくしのこころはつねにふあんでした。)

一年経ってもKを忘れる事の出来ない私の心は常に不安でした。

(わたくしはこのふあんをくちくするためにしょもつにおぼれようとつとめました。)

私はこの不安を駆逐するために書物に溺れようと力めました。

(わたくしはもうれつないきおいをもってべんきょうしはじめたのです。)

私は猛烈な勢をもって勉強し始めたのです。

(そうしてそのけっかをよのなかにおおやけにするひのくるのをまちました。)

そうしてその結果を世の中に公けにする日の来るのを待ちました。

(けれどもむりにもくてきをこしらえて、)

けれども無理に目的を拵えて、

(むりにそのもくてきのたっせられるひをまつのはうそですからふゆかいです。)

無理にその目的の達せられる日を待つのは噓ですから不愉快です。

など

(わたくしはどうしてもしょもつのなかにこころをうずめていられなくなりました。)

私はどうしても書物のなかに心を埋めていられなくなりました。

(わたくしはまたうでくみをしてよのなかをながめだしたのです。)

私は又腕組をして世の中を眺めだしたのです。

(さいはそれをこんにちにこまらないからこころにたるみがでるのだとかんさつしていたようでした。)

妻はそれを今日に困らないから心に弛みが出るのだと観察していたようでした。

(さいのいえにもおやこふたりくらいはすわっていてどうかこうかくらしていけるざいさんが)

妻の家にも親子二人位は坐っていてどうかこうか暮らしていける財産が

(あるうえに、わたくしもしょくぎょうをもとめないでさしつかえのないきょうぐうにいたのですから、)

ある上に、私も職業を求めないで差支のない境遇にいたのですから、

(そうおもわれるのももっともです。)

そう思われるのも尤もです。

(わたくしもいくぶんかすぽいるされたきみがありましょう。)

私も幾分かスポイルされた気味がありましょう。

(しかわたくしのうごかなくなったげんいんのおもなものは、まったくそこになかったのです。)

然し私の動かなくなった原因の主なものは、全く其所になかったのです。

(おじにあざむかれたとうじのわたくしは、)

叔父に欺むかれた当時の私は、

(ひとのたのみにならないことをつくづくかんじたにはそういありませんが、)

他の頼みにならない事をつくづく感じたには相違ありませんが、

(ひとをわるくとるだけあって、じぶんはまだたしかなきがしていました。)

他を悪く取るだけあって、自分はまだ確な気がしていました。

(せけんはどうあろうともこのおれはりっぱなにんげんだというしんねんが)

世間はどうあろうともこの己は立派な人間だという信念が

(どこかにあったのです。)

何処かにあったのです。

(それがけいのためにみごとにはかいされてしまって、)

それがKのために美事に破壊されてしまって、

(じぶんもあのおじとおなじにんげんだといしきしたとき、)

自分もあの叔父と同じ人間だと意識した時、

(わたくしはきゅうにふらふらしました。)

私は急にふらふらしました。

(ひとにあいそをつかしたわたくしは、じぶんにもあいそをつかしてうごけなくなったのです。)

他に愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。

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