夏目漱石「こころ」3-104
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。
オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2:生埋(いきうめ)
3:己れ(おのれ)
18:気拙い(きまずい)
26:未(まだ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 8512 | 神 | 8.5 | 99.1% | 192.3 | 1652 | 15 | 32 | 2024/09/12 |
2 | ヤス | 7816 | 神 | 8.1 | 95.9% | 204.7 | 1670 | 70 | 32 | 2024/10/19 |
3 | BEASTななせ | 7285 | 光 | 7.6 | 95.6% | 224.7 | 1715 | 78 | 32 | 2024/11/01 |
4 | デコポン | 6813 | S++ | 7.0 | 96.9% | 236.0 | 1660 | 52 | 32 | 2024/10/04 |
5 | だだんどん | 6584 | S+ | 7.2 | 92.0% | 230.1 | 1658 | 143 | 32 | 2024/09/22 |
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問題文
(ごじゅうさん)
五十三
(「しょもつのなかにじぶんをいきうめすることのできなかったわたくしは、)
「書物の中に自分を生埋する事の出来なかった私は、
(さけにたましいをひたして、おのれをわすれようとこころみたじきもあります。)
酒に魂を浸して、己れを忘れようと試みた時期もあります。
(わたくしはさけがすきだとはいいません。)
私は酒が好きだとは云いません。
(けれどものめばのめるたちでしたから、)
けれども飲めば飲める質でしたから、
(ただりょうをたのみにこころをもりつぶそうとつとめたのです。)
ただ量を頼みに心を盛り潰そうと力めたのです。
(このせんぱくなほうべんはしばらくするうちにわたくしをなおえんせいてきにしました。)
この浅薄な方便はしばらくするうちに私を猶厭世的にしました。
(わたくしはらんすいのまっさいちゅうにふとじぶんのいちにきがつくのです。)
私は爛酔の真最中に不図自分の位置に気が付くのです。
(じぶんはわざとこんなまねをしておのれをいつわっているぐぶつだということに)
自分はわざとこんな真似をして己れを偽っている愚物だという事に
(きがつくのです。)
気が付くのです。
(するとみぶるいとともにめもこころもさめてしまいます。)
すると身振いと共に眼も心も醒めてしまいます。
(ときにはいくらのんでもこうしたかそうじょうたいにさえはいりこめないで)
時にはいくら飲んでもこうした仮装状態にさえ入り込めないで
(むやみにしずんでいくばあいもでてきます。)
無暗に沈んで行く場合も出て来ます。
(そのうえぎこうでゆかいをかったあとには、きっとちんうつなはんどうがあるのです。)
その上技巧で愉快を買った後には、きっと沈鬱な反動があるのです。
(わたくしはじぶんのもっともあいているさいとそのははおやに、)
私は自分の最も愛している妻とその母親に、
(いつでもそこをみせなければならなかったのです。)
何時でも其所を見せなければならなかったのです。
(しかもかれらはかれらにしぜんなたちばからわたくしをかいしゃくしてかかります。)
しかも彼等は彼等に自然な立場から私を解釈して掛ります。
(さいのはははときどききまずいことをさいにいうようでした。)
妻の母は時々気拙い事を妻に云うようでした。
(それをさいはわたくしにかくしていました。)
それを妻は私に隠していました。
(しかしじぶんはじぶんで、たんどくにわたくしをせめなければきがすまなかったらしいのです。)
然し自分は自分で、単独に私を責めなければ気が済まなかったらしいのです。
(せめるといっても、けっしてつよいことばではありません。)
責めると云っても、決して強い言葉ではありません。
(さいからなにかいわれたために、わたくしがげきしたためしはほとんどなかったくらいですから。)
妻から何か云われた為に、私が激した例は殆んどなかった位ですから。
(さいはたびたびどこがきにいらないのかえんりょなくいってくれとたのみました。)
妻は度々何処が気に入らないのか遠慮なく云ってくれと頼みました。
(それからわたくしのみらいのためにさけをやめろとちゅうこくしました。)
それから私の未来のために酒を止めろと忠告しました。
(あるときはないて「あなたはこのごろにんげんがちがった」といいました。)
ある時は泣いて『貴方はこの頃人間が違った』と云いました。
(それだけならまだいいのですけれども、)
それだけなら未可いのですけれども、
(「けいさんがいきていたら、あなたもそんなにはならなかったでしょう」)
『Kさんが生きていたら、貴方もそんなにはならなかったでしょう』
(というのです。)
と云うのです。
(わたくしはそうかもしれないとこたえたことがありましたが、)
私はそうかも知れないと答えた事がありましたが、
(わたくしのこたえたいみと、さいのりょうかいしたいみとはまったくちがっていたのですから、)
私の答えた意味と、妻の了解した意味とは全く違っていたのですから、
(わたくしはこころのうちでかなしかったのです。)
私は心のうちで悲しかったのです。
(それでもわたくしはさいになにごともせつめいするきにはなれませんでした。)
それでも私は妻に何事も説明する気にはなれませんでした。