＜正調＞「佐渡の二ッ岩」

(はぁいまもこいしよ)

ハァ　今も恋しよ

(だんさぶろうさんよ)

団三郎さんヨ

(つきがでたでたと)

月が出た　出たと

(われらはてんかのおとおりじゃ)

我等は天下のお通りじゃ

(とおくにきけよ)

遠くに聞けよ

(よんじゅうきゅうりなみのさき)

四十九里　波の先

(いまもこいしよだんさぶろうさんよ)

今も恋しよ　団三郎さんヨ

(はぁわれらむじなのなかの)

ハァ我ら狢の中の

(そのなもたかきおんたいしょう)

その名も高き御大将

(そのぎょりょくのほどに)

その御力の程に

(いまなおつよくのこるとよ)

今なお強く残るとヨ

(ひとにつたわるうわさに)

人に伝わる噂に

(だましたものもかずしれず)

だましたものも数知れず

(いくたいくせんたいげんに)

幾多幾千大言に

(ひともかくもとおそれるとよ)

人もかくもと畏るとヨ

(つきがでたでたら)

月が出た　出たら

(われらがやこうのはじまりじゃ)

我等が夜行の始まりじゃ

(よごとならして)

夜毎鳴らして

(よんじゅうきゅうりなみのさき)

四十九里　波の先

(いまもこいしよ)

今も恋しよ

(だんさぶろうさんよ)

団三郎さんヨ

(はぁきゅうゆうとものたのみと)

ハァ旧友ともの頼みと

(いうからにゃ)

言うからにゃ

(どうしてぎょうかりよかうみをこえ)

どうして　行かりよか海を越え

(なげくななくな)

嘆くな泣くな

(またいつかどうにかあえるとよ)

またいつかどうにか会えるとヨ

(なくななくなというたとて)

泣くな泣くなと言うたとて

(けしてとどかぬわがおもい)

けして届かぬわが想い

(こいしこいしとうたえば)

恋し恋しと唄えば

(うみをこえてとどくかよ)

海を越えて届くかヨ

(つきがでたでたら)

月が出た　出たら

(われらがこうたのはじまりじゃ)

我等が小唄の始まりじゃ

(つきこそかがみに)

月こそ鏡に

(よんじゅうきゅうりなみのさき)

四十九里　波の先

(いまもこいしよだんさぶろうさんよ)

今も恋しよ　団三郎さんヨ

(さぁうたえうたえよ)

サァ唄え唄えヨ

(さぁつきもおどれよ)

サァ月も踊れヨ

(ならせよたいこをよ)

鳴らせよ　太鼓をヨ

(はぁそしていくとしたったとて)

ハァそして幾年経ったとて

(わすれられるものでもなし)

忘れられるものでもなし

(けしてわすれぬように)

けして忘れぬように

(つきがでるたびうたうのよ)

月が出るたび唄うのヨ

(ゆめをみるよなそらに)

夢を見るよな空に

(うかぶうかぶまるいつき)

浮かぶ浮かぶ丸い月

(いつかごみみにとどけと)

いつか御耳に届けと

(こえをあわせてうたうのよ)

声を合わせて唄うのヨ

(つきがでたでたら)

月が出た　出たら

(われらはこよいもうたうのじゃ)

我等は今宵も唄うのじゃ

(ひびくははるか)

響くははるか

(よんじゅうきゅうりなみのさき)

四十九里　波の先

(つきがでたでたと)

月が出た　出たと

(われらがてんかはこれにあり)

我らが天下はこれにあり

(とおくにきけよ)

遠くに聞けよ

(よんじゅうきゅうりなみのさき)

四十九里　波の先

(いまもこいしよだんさぶろうさんよ)

今も恋しよ　団三郎さんヨ