箱庭の少女

(このへやのなかにはあなたとわたしだけふたりでうたをうたいつづけましょう)

この部屋の中にはあなたと私だけ　二人で歌を歌い続けましょう

(そとのせかいなんてしらなくていいあなたがそれをのぞむなら)

外の世界なんて知らなくていい　あなたがそれを望むなら

(わたしはあなたをちちとよびあなたはわたしをむすめとよんだ)

私はあなたを「父」と呼び　あなたは私を「娘」と呼んだ

(あるけぬわたしをきづかうあなたへやをうつくしいものでうめつくしてくれた)

歩けぬ私を気遣うあなた　部屋を美しいもので埋め尽くしてくれた

(あかいぐらすにあおのすぷーんきいろいわくのについのかがみ)

赤いグラスに青のスプーン　黄色い枠の二対の鏡

(このへやのなかにはあなたとわたしだけふたりでうたをうたいつづけましょう)

この部屋の中にはあなたと私だけ　二人で歌を歌い続けましょう

(そとのせかいなんてしらなくていいあなたがそれをのぞむから)

外の世界なんて知らなくていい　あなたがそれを望むから

(くらいしんしつとまどのけしきそれがわたしにとってせかいのすべて)

暗い寝室と窓の景色　それが私にとって世界のすべて

(あなたはいつでもやさしいけれどそとのせかいのことはおしえてくれない)

あなたはいつでも優しいけれど　外の世界のことは教えてくれない

(へやのこものたちわたしをわらうぼくらときみはにたものどうし)

部屋の小物たち私を笑う　「僕らと君は似た者同士」

(るりらるりらとわたしはうたうのそとのせかいにはきこえないように)

るりらるりらと私は歌うの　外の世界には聞こえないように

(あなたのためだけにうたってあげるわたしがそれをのぞむから)

あなたのためだけに歌ってあげる　私がそれを望むから

(あなたのくちからきいたせんそうということばどうしておへやがもえているの)

あなたの口から聞いた『戦争』という言葉　どうしてお部屋が燃えているの？

(もえつきたやしきからみつかったのはこどくなおとこのなきがらと)

燃え尽きた屋敷から見つかったのは　孤独な男の亡骸と

(やけこげたぜんまいじかけのにんぎょう)

焼け焦げたぜんまい仕掛けの人形