ピアノフィッシュ

(ぶあついじしょのなかでいのちのしくみをしった)

分厚い辞書の中で命の仕組みを知った

(ちかくではなしたかった)

近くで話したかった

(いきていくいみをわけてほしくて)

生きていく意味を分けてほしくて

(きょねんよりながくさしたひのかげをぬってあるいた)

去年より長く射した陽の影を縫って歩いた

(たちどまったころころとよこからおとがしたから)

立ち止まった　コロコロと横から音がしたから

(ひどくうつくしいいちりんのはなわらいかけた)

ひどく美しい一輪の花　笑いかけた

(あついなつにゆだった)

暑い夏に茹だった

(かわりばえのしないぴあのふれーず)

代わり映えのしないピアノフレーズ

(しろいゆびでなぞったそのさきにみとれていたんだ)

白い指でなぞったその先に見とれていたんだ

(こどうがたかなったさいごかもしれないじかんに)

鼓動が高鳴った最後かもしれない時間に

(しおりをひとつはさんだわすれないように)

栞を一つ挟んだ忘れないように

(おとなになりたいからがんかけをしたんだ)

大人になりたいから願掛けをしたんだ

(みぎのてくびでおどるみさんがかぜをよんだ)

右の手首で踊るミサンガ　風を呼んだ

(きょねんよりくらくともったたそがれをすくってひろった)

去年より暗く灯った黄昏をすくって拾った

(またこようやくそくだよ)

また来よう約束だよ

(ずっとみのままでかれたとしてもあいしたいのさ)

ずっと実のままで枯れたとしても愛したいのさ

(およぐさかなは)

泳ぐ魚は

(みじかいなつにゆだった)

短い夏に茹だった

(かわりばえのしないぴあのふれーず)

代わり映えのしないピアノフレーズ

(あおいそらにまよったおちるなみだをおもいだした)

青い空に迷った落ちる涙を思い出した

(こどうがたかなったせつなとえいえんのうみで)

鼓動が高鳴った刹那と永遠の海で

(しおりをひとつはさんだわすれないように)

栞を一つ挟んだ忘れないように

(ああことしもつきがきれいだ)

ああ　今年も月が綺麗だ

(ああことしもゆきがひかった)

ああ　今年も雪が光った

(ああことしもつばめがとんだ)

ああ　今年も燕が飛んだ

(そしてきみのいないなつがくるんだ)

そして君のいない夏が来るんだ

(あついなつにゆだったしろいゆびでなぞった)

暑い夏に茹だった　白い指でなぞった

(こどうがたかなったしおりをひとつはさんだ)

鼓動が高鳴った　栞を一つ挟んだ

(あついなつにゆだった)

暑い夏に茹だった

(かわりばえのしないぴあのふれーず)

代わり映えのしないピアノフレーズ

(しろいゆびでなぞったそのさきにみとれていたんだ)

白い指でなぞったその先に見とれていたんだ

(こどうがたかなったいつかはいろどるじかんに)

鼓動が高鳴ったいつかは彩る時間に

(しおりをひとつはさんだわすれないように)

栞を一つ挟んだ忘れないように