洒落怖《懐中電灯貸して》

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(これはわたしのははからきいたはなしです。)

これは私の母から聞いた話です。

(ははがしょうがくせいだったころ、じもとのちくではおぼんじきにきまって)

母が小学生だった頃、地元の地区ではお盆時期に決まって

(ぼちできもだめしをしていたそうです。)

墓地で肝試しをしていたそうです。

(みなでたいれつをくみ、いちれつになってぼちのなかをぬうようにあるきまわるというもので、)

皆で隊列を組み、一列になって墓地の中を縫うように歩き回るというもので、

(いつもはははぬけだせないめいろにいるようでこわかったとかたっています。)

いつも母は抜け出せない迷路にいるようで怖かったと語っています。

(そのとしのきもだめしで、はははたいれつのこうほうにまわり、)

その年の肝試しで、母は隊列の後方に回り、

(まえにながくつづくたいれつについていっていました。)

前に長く続く隊列について行っていました。

(するとふいにかたをたたかれ、つづけて)

すると不意に肩を叩かれ、続けて

(「ごめん、おとしものしたからかいちゅうでんとうかしてくれない?」)

「ごめん、落とし物したから懐中電灯貸してくれない?」

(というおんなのこのこえがきこえたそうで、かいちゅうでんとうをもっていなかったははは)

という女の子の声が聞こえたそうで、懐中電灯を持っていなかった母は

(かいちゅうでんとうをもっているすこしまえのひとからかりて、そのこにわたしたそうです。)

懐中電灯を持っている少し前の人から借りて、その子に渡したそうです。

(きもだめしがおわり、あのこがさいごまでもどらなかったことをきにしていたははに、)

肝試しが終わり、あの子が最後まで戻らなかった事を気にしていた母に、

(かいちゅうでんとうをわたしてくれたせんぱいがこえをかけてきました。)

懐中電灯を渡してくれた先輩が声を掛けてきました。

(せんぱい「きみ、かいちゅうでんとうは?」)

先輩「君、懐中電灯は?」

(はは「うしろのこがおとしものしたみたいで、かいちゅうでんとうかしたんですけど、)

母「後ろの子が落とし物したみたいで、懐中電灯貸したんですけど、

(そのこもどってこないんです。」)

その子戻って来ないんです。」

(せんぱい「え・・きみいちばんうしろじゃなかった?」)

先輩「え・・君一番後ろじゃなかった?」

(せんぱいのことばにははははっとしたそうです。)

先輩の言葉に母はハッとしたそうです。

(たしかにはじめのときはじぶんのうしろにならぶすうにんがみえていたのに、)

確かに初めの時は自分の後ろに並ぶ数人が見えていたのに、

(きもだめしちゅうはあしおとがきこえてこなかったこと。)

肝試し中は足音が聞こえてこなかった事。

など

(おとしものをしてさぞあせっているだろうにもかかわらず、)

落とし物をしてさぞ焦っているだろうにも関わらず、

(あしおとひとつたてずにどこかへいったおんなのこ。)

足音一つ立てずにどこかへ行った女の子。

(おんなのこをふくめたじぶんのうしろにならんだこたちのかおをなぜかおもいだせないこと。)

女の子を含めた自分の後ろに並んだ子達の顔を何故か思い出せない事。

(すべてがふにおち、こわいよりもなるほどなというきもちだったそうです。)

全てが腑に落ち、怖いよりもなるほどなという気持ちだったそうです。

(けっきょくそのひはかいちゅうでんとうはみつからず、よくじつのひるまにはは、せんぱい、)

結局その日は懐中電灯は見つからず、翌日の昼間に母、先輩、

(そのほかのゆうしのめんばーでかいちゅうでんとうをそうさくしたところ、ぶじみつかったそうです。)

その他の有志のメンバーで懐中電灯を捜索した所、無事見つかったそうです。

(じぶんとはまったくかかわりのない、しらないひとのおはかのうえに、でんちがきれたじょうたいで。)

自分とは全く関わりのない、知らない人のお墓の上に、電池が切れた状態で。

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