洒落怖《迷子》

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問題文

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(「ほんじつもごらいてんいただきましてまことにありがとうございます。)

「本日もご来店いただきまして誠にありがとうございます。

(ごらいてんちゅうのおきゃくさまに、まいごのおしらせをいたします。」)

ご来店中のお客様に、迷子のお知らせを致します。」

(ひゃっかてんにきんむしていたつまのたいけんだん。)

百貨店に勤務していた妻の体験談。

(「すみません、ちょっと3ばんいってきますね」)

「すみません、ちょっと3番行ってきますね」

(3ばんとはぎょうかいのいんごでといれのこと。)

3番とは業界の隠語でトイレの事。

(つまがといれからもどるとちゅう、おやとはぐれた3~4さいのおんなのこが、)

妻がトイレから戻る途中、親とはぐれた3~4歳の女の子が、

(えれべーたーまえのべんちにこしをかけないていた。)

エレベーター前のベンチに腰を掛け泣いていた。

(すこしようすをみていたが、おやがもどってくるようすもない。)

少し様子を見ていたが、親が戻って来る様子もない。

(「おかあさんとはぐれちゃった?」)

「お母さんとはぐれちゃった?」

(といかけむなしくおんなのこはなくだけだった。)

問いかけ空しく女の子は泣くだけだった。

(あたりをみまわしてもこどもをさがしているようすのひとはいない。)

辺りを見回しても子供を探している様子の人はいない。

(しかたなくさーびすかうんたーへいちじあずけることにした。)

仕方なくサービスカウンターへ一時預ける事にした。

(おんなのこをつれていくと、かかりがそれはもうてなれたかんじで)

女の子を連れて行くと、係がそれはもう手慣れた感じで

(おんなのこをあやしながらいすにすわらせる。)

女の子をあやしながら椅子に座らせる。

(もうひとりのかかりがつまにかんたんなじょうきょうをきいてきたのでせつめいしていたが、)

もう一人の係が妻に簡単な状況を聞いてきたので説明していたが、

(そのあいだもおんなのこはなきやまなかったそうだ。)

その間も女の子は泣き止まなかったそうだ。

(「よくあるのよ。ないちゃってなまえきけないこと」)

「よくあるのよ。泣いちゃって名前聞けないこと」

(すこしこまったかおをしながらかかりのひとはかんないほうそうをはじめた。)

少し困った顔をしながら係の人は管内放送を始めた。

(「ほんじつもごらいてんいただきましてまことにありがとうございます。)

「本日もご来店いただきまして誠にありがとうございます。

(ごらいてんちゅうのおきゃくさまに、まいごのおしらせをいたします。)

ご来店中のお客様に、迷子のお知らせを致します。

など

(ちゃいろのわんぴーすとくろいくつをおめしになった3さいぐらいのおんなのこが、)

茶色のワンピースと黒い靴をお召しになった3才ぐらいの女の子が、

(さーびすかうんたーでおつれさまをおまちです。)

サービスカウンターでお連れ様をお待ちです。

(おこころあたりのおきゃくさまは、2かいさーびすかうんたーまでおこしくださいませ。)

お心当たりのお客様は、2階サービスカウンターまでお越しくださいませ。

(くりかえします・・・」)

繰り返します・・・」

(あなうんすがおわるころ、ようやくおんなのこがなきやんできた。)

アナウンスが終わる頃、ようやく女の子が泣き止んできた。

(あらためてなまえをきくと”ゆみ”とこたえた。)

改めて名前を聞くと”ユミ”と答えた。

(「ゆみちゃん、もうすぐおかあさんがくるからね。」)

「ユミちゃん、もうすぐお母さんが来るからね。」

(かかりはゆみちゃんにあめをわたしてなだめていた。)

係はユミちゃんに飴を渡して宥めていた。

(つまもひとあんしんしてじぶんのうりばにもどろうとしたところ、)

妻も一安心して自分の売り場に戻ろうとしたところ、

(じょせいがさーびすかうんたーをたずねてきた。)

女性がサービスカウンターを尋ねて来た。

(「さきほどのほうそうをきいてきました。むすめがたいへんごめいわくをおかけしました。」)

「先程の放送を聞いてきました。娘が大変ご迷惑をおかけしました。」

(ほそみで40だいこうはんくらいのじょせいがかかりにあたまをさげていた。)

細身で40代後半くらいの女性が係に頭を下げていた。

(こどものねんれいのわりには、おかあさんずいぶんとしいってるなぁとおもったそうだ。)

子供の年齢の割には、お母さん随分歳いってるなぁと思ったそうだ。

(「ゆみちゃん!だめでしょどこかにいっちゃ。おかあさんしんぱいしたんだからね!」)

「ユミちゃん!ダメでしょどこかに行っちゃ。お母さん心配したんだからね!」

(とうのゆみちゃんはきょとんとしていた。)

当のユミちゃんはきょとんとしていた。

(じょせいがかかりにあたまをさげて、ゆみちゃんのてをひいてえれべーたーにむかっていく。)

女性が係に頭を下げて、ユミちゃんの手を引いてエレベーターに向かっていく。

(いちぶしじゅうをみていたつまはあるきながら、おやこがあるいていくさまをみていた。)

一部始終を見ていた妻は歩きながら、親子が歩いて行く様を見ていた。

(よかったよかった、ちょっといいことしたきぶんにつまはひたったそうだ。)

良かった良かった、ちょっといい事した気分に妻は浸ったそうだ。

(ふとはいごのさーびすかうんたーがさわがしい。)

ふと背後のサービスカウンターが騒がしい。

(なにかあったかとふりかえると、さきほどのかかりにわかいじょせいがなにかこえをあらげている。)

何かあったかと振り返ると、先程の係に若い女性が何か声を荒げている。

(きになったつまはそのばにたちどまった。)

気になった妻はその場に立ち止まった。

(「ですから!わたしはゆみのははおやなんです!」)

「ですから!私はユミの母親なんです!」

(きこえてきたのはとんでもないひとことだった。)

聞こえてきたのはとんでもない一言だった。

(つまがはっとしてえれべーたーをみると、)

妻がハッとしてエレベーターを見ると、

(さきほどのじょせいがゆみちゃんをつれてのりこもうとしていた。)

先程の女性がユミちゃんを連れて乗り込もうとしていた。

(「ゆみちゃん!えれべーたー!えれべーたーのところにいますよ!」)

「ユミちゃん!エレベーター!エレベーターのところにいますよ!」

(つまもとっさにおおごえをあげてゆびをさした。)

妻も咄嗟に大声を上げて指を差した。

(かかりふたりとははおやというじょせいがえれべーたーにしせんをむけた。)

係二人と母親という女性がエレベーターに視線を向けた。

(ははおやをなのったじょせいはゆみちゃんのてをひいてえれべーたーにのりこむ。)

母親を名乗った女性はユミちゃんの手を引いてエレベーターに乗り込む。

(「ゆみ!ゆみ!」)

「ユミ!ユミ!」

(ははおやはなまえをよびながらひっしにおいかけていく。)

母親は名前を呼びながら必死に追いかけていく。

(かかりもそのあとをおいかけていった。)

係もその後を追いかけていった。

(だが、むじょうにもえれべーたーのどあはしまってしまう。)

だが、無情にもエレベーターのドアは閉まってしまう。

(つまもこのいちだいじにえすかれーたーをかけおり、いちかいのえれべーたーにむかった。)

妻もこの一大事にエスカレーターを駆け下り、一階のエレベーターに向かった。

(1かいにおりるとえれべーたーがついたあとで、ははおやをなのったじょせいが)

1階に降りるとエレベーターが着いた後で、母親を名乗った女性が

(ゆみちゃんのてをぐいぐいひきながらでぐちへとあるいていく。)

ユミちゃんの手をぐいぐい引きながら出口へと歩いて行く。

(ゆうかい)

誘拐

(そのにもじがのうりをよぎる。)

その二文字が脳裏を過る。

(つまがそのじょせいにむかってはしっていくと)

妻がその女性に向かって走っていくと

(「すみません、そこのあなた!」でぐちにいたけいびいんはじょせいをよびとめた。)

「すみません、そこのあなた!」出口にいた警備員は女性を呼び止めた。

(どうやらにかいのさーびすかうんたーのかかりのひとりがれんらくしたようだった。)

どうやら二階のサービスカウンターの係の一人が連絡したようだった。

(ぴたっ・・・とあゆみをとめるじょせいとゆみちゃん。)

ピタッ・・・と歩みを止める女性とユミちゃん。

(「もうしわけありませんが、じむしょですこしおはなしをおうかがいできますか?」)

「申し訳ありませんが、事務所で少しお話をお伺いできますか?」

(とけいびいんがごきをつよめてじょせいにといかける。)

と警備員が語気を強めて女性に問いかける。

(「いそいでますので」へいぜんとじょせいはいいはなちでぐちをぬけようとする。)

「急いでますので」平然と女性は言い放ち出口を抜けようとする。

(「ゆみ!」はいごでははおやのこえがした。ようやくおいついたのだ。)

「ユミ!」背後で母親の声がした。ようやく追いついたのだ。

(「ゆみちゃん、いきましょ」)

「ユミちゃん、行きましょ」

(しせんをゆみちゃんにむけることなく、まっすぐむいたままいいはなった。)

視線をユミちゃんに向けることなく、まっすぐ向いたまま言い放った。

(けいびいんがさいど「すみませんがじむしょで」といいかけたとき)

警備員が再度「すみませんが事務所で」と言いかけた時

(「ああああああああああ!!!!!!もうおおおおおおおおおおおおお)

「ああああああああああ!!!!!!もうおおおおおおおおおおおおお

(すこしだったのにいいいいいいいいいいいい!!!!!!」)

少しだったのにいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

(とはんきょうらんになってもっていたばっぐをふりまわす。)

と半狂乱になって持っていたバッグを振り回す。

(とめにはいったけいびいんをつきとばしはしりさっていった。)

止めに入った警備員を突き飛ばし走り去っていった。

(そのこうけいにそこにいたすべてのひとがあっけにとられた。)

その光景にそこにいた全ての人が呆気にとられた。

(けいびいんすうにんでおいかけ、けいさつにもちろんつうほうしたが)

警備員数人で追いかけ、警察にもちろん通報したが

(じょせいをつかまえることはできなかったそうだ。)

女性を捕まえる事は出来なかったそうだ。

(「このはなしのなかで。わたしがほんとうにぞっとしたのはなんだかわかる?」)

「この話の中で。私が本当にゾッとしたのは何だかわかる?」

(つまがにやにやしながらはなしをききおえたおれにといかけてきた。)

妻がニヤニヤしながら話を聞き終えた俺に問いかけて来た。

(「にせもののははおやのかおとか?」)

「偽物の母親の顔とか?」

(「ちがうちがう、たしかにこわかったけどそれじゃない」)

「違う違う、確かに怖かったけどそれじゃない」

(「それじゃさいごあばれたってとこ?」)

「それじゃ最後暴れたってとこ?」

(「あれもびびった!でもちがう」)

「あれもビビった!でも違う」

(「んー、ゆみちゃんってなまえじゃなかったとか?」)

「んー、ユミちゃんって名前じゃなかったとか?」

(「それもちがう。でもまいごのあなうんすではなまえをよみあげていなかったのに)

「それも違う。でも迷子のアナウンスでは名前を読み上げていなかったのに

(”ゆみちゃん”ってむかえにきたんだよあのおばさん」)

”ユミちゃん”って迎えに来たんだよあのおばさん」

(「まじ?」)

「マジ?」

(「まじだよ」)

「マジだよ」

(「それがいちばんこわい」)

「それが一番怖い」

(「でしょ?でもそこじゃないんだよ・・・。)

「でしょ?でもそこじゃないんだよ・・・。

(わたしがほんとうにぞっとしたのはさ・・・おいかけてきたおかあさんにむかって、)

私が本当にゾッとしたのはさ・・・追いかけて来たお母さんに向かって、

(”このひとだれ?”ってゆみちゃんがいったことなんだよね。」)

”この人誰?”ってユミちゃんが言った事なんだよね。」

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