すまきの話 -5-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7521 7.6 97.9% 379.2 2914 62 62 2025/04/01
2 HAKU 7493 7.7 96.4% 378.6 2944 107 62 2025/04/01

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問題文

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(こえがした。)

声がした。

(かすれたこえ。)

掠れた声。

(・・・・・きたか、)

・・・・・きたか、

(どこからともなくきこえてきたのなら、まだよかった。)

どこからともなく聞こえてきたのなら、まだ良かった。

(こえはあきらかにごみいれのなかからきこえてくる。)

声は明らかにゴミ入れの中から聞こえてくる。

(・・・・・よく、きけ じかんが、ない、)

・・・・・よく、聞け 時間が、ない、

(そのこえは、よういにちかよらせないひびきをもっていた。)

その声は、容易に近寄らせない響きを持っていた。

(いや、それはおれのじこぼうえいほんのうがはんえいされていただけなのかもしれない。)

いや、それは俺の自己防衛本能が反映されていただけなのかもしれない。

(そのごみいれは、とてもちいさいのだ。よこからみているだけでは)

そのゴミ入れは、とても小さいのだ。横から見ているだけでは

(くちのぶぶんよりしたはみえないが、おとながなかにいりこむにはちいさすぎる。)

口の部分より下は見えないが、大人が中に入り込むには小さすぎる。

(からだのぱーつがすべてそろっているじょうたいではいりこむには、あまりに。)

身体のパーツがすべて揃っている状態で入り込むには、あまりに。

(・・・・・あやを、さがせ、けいたいが、つながらない、)

・・・・・綾を、さがせ、携帯が、繋がらない、

(たぶん、いえ、にいる、あって、こう、いえ、)

たぶん、家、にいる、会って、こう、言え、

(ごみいれのなかからきこえる、このよのものともしれないこえにこんらんしながらも、)

ゴミ入れの中から聞こえる、この世のものともしれない声に混乱しながらも、

(おれはみみだけにいしきをあつめる。)

俺は耳だけに意識を集める。

(・・・・・これは、ゆめですね)

・・・・・これは、夢ですね

(それきり、こえはとだえた。あしのながいかがごみいれのなかからとびたち、)

それきり、声は途絶えた。足の長い蚊がゴミ入れの中から飛び立ち、

(どこかへきえた。あたりはしずまりかえっている。)

どこかへ消えた。あたりは静まり返っている。

(おれはいきをのむ。ぜんしんにえたいのしれないおかんがぞわぞわとたちのぼってくる。)

俺は息をのむ。全身に得体の知れない悪寒がぞわぞわと立ち上ってくる。

(なにがおこっているのかわからない。)

なにが起こっているのか分からない。

など

(わかろうとすればわかるだろう。あしをふみだし、)

分かろうとすれば分かるだろう。足を踏み出し、

(ごみいれをのぞきこみさえすれば。けれどそのあしがふみだせない。)

ゴミ入れを覗き込みさえすれば。けれどその足が踏み出せない。

(しこうが、のうが、だいのうだかかんのうだかのそうこてきなぶぶんが、)

思考が、脳が、大脳だか間脳だかの蒼古的な部分が、

(いくことをこばんでいるみたいだ。)

行くことを拒んでいるみたいだ。

(ただごとでないことだけはわかっていた。おれのこじんてきでささやかなせかいが)

ただごとでないことだけは分かっていた。俺の個人的でささやかな世界が

(ちめいてきなきずをおい、もうもとのかたちにもどらないだろうことも。)

致命的な傷を負い、もう元の形に戻らないだろうことも。

(ただ、ちをみてもはんしゃてきにきゅうきゅうしゃというはっそうはうかばなかった。)

ただ、血を見ても反射的に救急車という発想は浮かばなかった。

(いまじぶんのするべきさいぜんのことは、ただしじされたことを)

今自分のするべき最善のことは、ただ指示されたことを

(まっとうすることだとちょっかんしたのかもしれない。)

全うすることだと直感したのかもしれない。

(あたまにでんりゅうがはしったようなかるいいたみのあと、おれはめざめたようにはしりだした。)

頭に電流が走ったような軽い痛みの後、俺は目覚めたように走り出した。

(ごみいれからたちあがるなまぐさいにおいをびこうからふりはらうように。)

ゴミ入れから立ち上る生臭い匂いを鼻腔から振り払うように。

(こうえんをでて、いりぐちのそとにとめてあったじてんしゃにとびのる。)

公園を出て、入り口の外にとめてあった自転車に飛び乗る。

(たいへんなことになった。)

大変なことになった。

(たいへんなことになった。)

大変なことになった。

(ちからいっぱいぺだるをこぎだしても、あたまはこんらんしたままだった。)

力一杯ペダルをこぎ出しても、頭は混乱したままだった。

(これはゆめですね?)

これは夢ですね?

(ゆめなわけはない。おそろしいくらい、りあるだ。においも、おとも、あしに、)

夢なわけはない。恐ろしいくらい、リアルだ。匂いも、音も、足に、

(ふとももににゅうさんがたまっていくかんじも。なにもかも。きょういちにちのきおくを)

太股に乳酸が溜まっていく感じも。何もかも。今日一日の記憶を

(よびさましてみる。けれどいちぶのすきもなくつながっているのがわかる。)

呼び覚ましてみる。けれど一分の隙もなく繋がっているのがわかる。

(さっきまでねっとでけんさくしていたさいとのことも、)

さっきまでネットで検索していたサイトのことも、

(そのまえにたべたかっぷめんのことも、それをたべながらこうこうじだいのゆうじんと)

その前に食べたカップ麺のことも、それを食べながら高校時代の友人と

(でんわではなしたことも、あざやかにおもいだせる。)

電話で話したことも、鮮やかに思い出せる。

(ということは、じゃあ・・・・・)

ということは、じゃあ・・・・・

(そこでしこうがたちきられる。いや、おしとどめているのか。)

そこで思考が断ち切られる。いや、押しとどめているのか。

(ししょうに「あや」とほんみょうでよばれたあるくさんのまんしょんへまっすぐにむかう。)

師匠に「綾」と本名で呼ばれた歩くさんのマンションへ真っ直ぐに向かう。

(とちゅうかるいくだりざかがあり、すぴーどをいじしたままごういんにgにさからって)

途中軽い下り坂があり、スピードを維持したまま強引にGに逆らって

(かーぶをまがろうとしたとき、まえからくるつうこうにんとぶつかりそうになった。)

カーブを曲がろうとした時、前から来る通行人とぶつかりそうになった。

(おどろいたひょうじょうのそのひとをなんとかはんどるそうさでさけたが、)

驚いた表情のその人をなんとかハンドル操作で避けたが、

(ばらんすをくずしてじてんしゃからなげだされる。)

バランスを崩して自転車から投げ出される。

(いっかいこかしてしりをうち、おもわずみぎてをあすふぁるとについてしまって)

一回転して尻を打ち、思わず右手をアスファルトについてしまって

(かわがすりむけた。するどいいたみにおそわれる。)

皮が擦りむけた。鋭い痛みに襲われる。

(いたい。すっごくいたい。くっそう、とだれにともしれないあくたいがくちをつく。)

痛い。すっごく痛い。くっそう、と誰にとも知れない悪態が口をつく。

(「あぶねえな、こら」)

「危ねえな、こら」

(ちゃぱつのわかいにいちゃんがかみのけをみだれさせたままちかよってくる。)

茶髪の若い兄ちゃんが髪の毛を乱れさせたまま近寄ってくる。

(おれはとびはねるようにたちあがると、かれにすがりつく。)

俺は飛び跳ねるように立ち上がると、彼にすがりつく。

(「きょうのことおぼえてますか。きのうのことおぼえてますか。)

「今日のこと覚えてますか。昨日のこと覚えてますか。

(じぶんでじぶんのことがわかりますか」)

自分で自分のことがわかりますか」

(かれはすがりついてきたおれにいっしゅんみがまえたが、)

彼はすがりついてきた俺に一瞬身構えたが、

(すぐにどうようしてそのてをふりほどこうとする。)

すぐに動揺してその手を降りほどこうとする。

(「ばかじゃねーの。なんなのおまえ」)

「バカじゃねーの。なんなのお前」

(どしんとおれのかたをりょうてでつき、きびすをかえすとあしばやでさっていった。)

ドシンと俺の肩を両手で突き、踵を返すと足早で去っていった。

(とちゅう、なんどかきもちわるそうにふりかえりながら。)

途中、何度か気持ち悪そうに振り返りながら。

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