指さし -3-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7670 7.8 98.2% 361.4 2822 50 58 2025/04/05
2 はく 7197 7.5 95.1% 375.4 2847 145 58 2025/04/03
3 Jyo 5143 B+ 5.2 98.0% 538.3 2824 55 58 2025/04/04

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問題文

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(しんれいすぽっとにいすわってかいだんばなしにきょうじるというむちゃを、)

心霊スポットに居座って怪談話に興じるという無茶を、

(よくやれたものだとおもう。はなしているさいちゅうからへんなきぶんだった。)

よくやれたものだと思う。話している最中から変な気分だった。

(ここにはふたりしかいないはずなのに、)

ここには二人しかいないはずなのに、

(もっとおおくのけはいがききみみをたてているようなきがしていた。)

もっと多くの気配が聞き耳を立てているような気がしていた。

(「その・・・・・ゆびさしげーむははじめてだったんだな」)

「その・・・・・指さしゲームは始めてだったんだな」

(ようやくししょうがくちをひらいた。)

ようやく師匠が口を開いた。

(「そうです。たぶん、みんなも。それがどうかしましたか」)

「そうです。たぶん、みんなも。それがどうかしましたか」

(ししょうはめをほそめながらくちもとをゆるめた。)

師匠は目を細めながら口元を緩めた。

(「さいご、みんながどこをゆびさしたか、あててやろうか」)

「最後、みんながどこを指差したか、あててやろうか」

(おどろいた。そしてどうじに、そのかいだんばなしのなかのくわしいようすをせつめいしてないんだから、)

驚いた。そして同時に、その怪談話の中の詳しい様子を説明してないんだから、

(わかるはずはないとおもった。)

分かるはずはないと思った。

(「おまえのはなしだけでわかる」)

「お前の話だけでわかる」

(ししょうはさもとうぜんのようにいいきった。)

師匠はさも当然のように言い切った。

(ぼくはすこしきんちょうする。わかるはずはない。)

僕は少し緊張する。分かるはずはない。

(けれど、ぶきみなふんいきのただようよるのぷれはぶごやのなかでは、そのかくしんがゆらぐ。)

けれど、不気味な雰囲気の漂う夜のプレハブ小屋の中では、その確信が揺らぐ。

(らんぷのまわりをとぶちいさなはむしのおとをききながら、)

ランプの周りを飛ぶ小さな羽虫の音を聞きながら、

(くらやみにうかびあがるかおをみつめる。)

暗闇に浮かび上がる顔を見つめる。

(「ぜんいん、そのかいだんばなしをした「かれ」をゆびさした」)

「全員、その怪談話をした「彼」を指さした」

(そういいながらししょうはぼくのみけんのあたりにゆびをむけ、)

そう言いながら師匠は僕の眉間のあたりに指を向け、

(ついでそのゆびをかくすようににぎりこむ。)

ついでその指を隠すように握り込む。

など

(「と、いいたいところだが、ちがう」)

「と、言いたいところだが、違う」

(なぜなら、とつづける。)

なぜなら、と続ける。

(「おまえはいちどもそのげーむをしんけんにやろうとしていない。)

「お前は一度もそのゲームを真剣にやろうとしていない。

(れいのけはいをさがすなんてことはおそろしくてできないからだ。)

霊の気配を探すなんてことは恐ろしくて出来ないからだ。

(むしろ、じぶんのゆびがそんなばしょをさすことをおそれている。)

むしろ、自分の指がそんな場所をさすことを恐れている。

(ほかのひととおなじほうこうをゆびさしてしまえば、ほんとうにそこにれいがいるような)

他の人と同じ方向を指さしてしまえば、本当にそこに霊がいるような

(きょうふしんをいだいてしまう。そうおもっている。だからぎゃくに、)

恐怖心を抱いてしまう。そう思っている。だから逆に、

(なにもないばしょをささなくてはならない、)

何もない場所を指さなくてはならない、

(とうきょうはくかんねんにとらわれてしまうことはそうぞうにかたくない。)

とう強迫観念にとらわれてしまうことは想像に難くない。

(そしてそれはげーむがすすむにつれて、)

そしてそれはゲームが進むにつれて、

(そのばのみんなのきょうつういしきになっていった・・・・・」)

その場のみんなの共通意識になっていった・・・・・」

(ししょうのことばはゆらぎのないふしぎなじしんにみちていた。)

師匠の言葉は揺らぎのない不思議な自信に満ちていた。

(「さいしょにおんなのこふたりのゆびがそろったあと、たぶんみんなこうおもった。)

「最初に女の子ふたりの指が揃ったあと、たぶんみんなこう思った。

(「もういちど、あのほうこうにそろうのはこわすぎる」と。)

「もう一度、あの方向に揃うのは怖すぎる」と。

(だからいしきてきに、あるいはむいしきにそのほうこうをさけた。)

だから意識的に、あるいは無意識にその方向を避けた。

(そしておそらくそのほうこうからまったくはなれたばしょ、)

そしておそらくその方向から全く離れた場所、

(たとえばはんたいほうこうにたまたまべつのおとこのことおんなのこがゆびをそろえてしまう。)

例えば反対方向に偶々別の男の子と女の子が指を揃えてしまう。

(そしてみんなはおもう。「あそこもだめだ」と。また、ゆびをさせるほういがへる。)

そしてみんなは思う。「あそこも駄目だ」と。また、指をさせる方位が減る。

(しぜん、つぎにゆびがそろうかくりつがあがる。くりかえせばくりかえすほど」)

自然、次に指が揃う確率が上がる。繰り返せば繰り返すほど」

(すっ、すっ、ともじをかくにようにゆびをくうきょにはしらせながら)

スッ、スッ、と文字を書くにように指を空虚に走らせながら

(ししょうはぷれはぶごやのなかをみまわす。)

師匠はプレハブ小屋の中を見回す。

(「そして、「かれ」がいまのじぶんたちのおかれたじょうきょうとそっくりなかいだんをはじめる。)

「そして、「彼」が今の自分たちの置かれた状況とそっくりな怪談を始める。

(これははんそくだ。どんなにこわくてもおはなしのなか、というふぃるたーがはずされ、)

これは反則だ。どんなに怖くてもお話の中、というフィルターが外され、

(かいだんがげんじつをしんしょくしはじめる。)

怪談が現実を侵食し始める。

(こどもたちのこころがきょうふでみたされていったことはまちがいない。)

子供たちの心が恐怖で満たされていったことは間違いない。

(そうして、たったひとつのきょうはくかんねんにしはいされる。)

そうして、たった一つの強迫観念に支配される。

(「つぎはぜったいにほかのひととおなじほうこうをゆびさしてはいけない」と。)

「次は絶対に他の人と同じ方向を指さしてはいけない」と。

(ましてかれのかたったかいだんのけつまつである、)

まして彼の語った怪談の結末である、

(ぜんいんがおなじばしょをさすなんてことは、ぜったいにあってはならない」)

全員が同じ場所をさすなんてことは、絶対にあってはならない」

(ししょうはゆびをおろし、そのままあたまをたれた。)

師匠は指を下ろし、そのまま頭を垂れた。

(「だから、みんなめをとじたままかんがえた。)

「だから、みんな目を閉じたまま考えた。

(ぜったいにほかのみんながささないばしょ。そんなほうこうにいるはずがないばしょ。)

絶対に他のみんながささない場所。そんな方向にいるはずがない場所。

(いそうだなんて、おもいつかないばしょ・・・・・」)

いそうだなんて、思いつかない場所・・・・・」

(ふいにさむけがした。まさか、ししょうにはわかってしまうのか?)

ふいに寒気がした。まさか、師匠には分かってしまうのか?

(「そこは、そのだんわしつは、いちかいにあった。だから・・・・・」)

「そこは、その談話室は、一階にあった。だから・・・・・」

(ししょうはかおをあげてみぎてをつきだし、)

師匠は顔を上げて右手を突き出し、

(そのひとさしゆびをゆっくりとまくだりにむける。)

そのひとさし指をゆっくりと真下に向ける。

(「みんな、したをゆびさした」)

「みんな、下を指さした」

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