錨の羅針盤

(こえをかけてはまどわせ)

声をかけては惑わせ

(うでをのばしてひきこむ)

腕を伸ばして引き込む

(ほのぐらいみずのそこでは)

ほの暗い水の底では

(ししゃのうたげがひらかれる)

死者の宴が開かれる

(さながらわたしはとりかご)

宛ら私は鳥籠

(こころにおにをかう)

心に鬼を飼う

(うみどりもあさましく)

海鳥も浅ましく

(いかりのそばをとぶ)

錨の傍を飛ぶ

(がんじがらめのぷりまどんな)

雁字搦めのプリマドンナ

(そのこえにさそわれ)

その声に誘われ

(ししゃがおどるうみのそこに)

死者が踊る海の底に

(しばられてる)

縛られてる

(いちわのやさしいとりはひかりさすらしんばん)

一羽の優しい鳥は　光射す羅針盤

(しずんだいのちのふねよおもかじをとれ！)

沈んだ命の船よ　面舵を取れ！

(おいかぜにのれ！ひくらよ！)

追い風に乗れ！　飛倉よ！

(ふねにせんづるひのこをはらう)

船に　千づる　火の粉を祓う

(あかつきにゆれるすいめん)

暁に揺れる水面

(そらにはえるほしぞらとおく)

空に映える　星空遠く

(つれるふねのさきへ)

連れる船の先へ

(りくにおりたつふなのり)

陸に降り立つ船乗り

(しゃくねつじごくをあるく)

灼熱地獄を歩く

(いびつなちれいのそこでは)

歪な地霊の底では

(にびいろのまくがかかる)

鈍色の幕が掛かる

(さながらせかいはとりかご)

宛ら世界は鳥籠

(けっしてにげられない)

決して逃げられない

(ひなどりもあさましく)

雛鳥も浅ましく

(くちをあけてさけぶ)

口をあけて叫ぶ

(がらんどうのぷりまどんな)

がらんどうのプリマドンナ

(そのこころはくうきょ)

その心は空虚

(ししゃがもえるたにのそこに)

死者が燃える谷の底に

(しばられてる)

縛られてる

(いっとなあさせのとりはいのちもすらしんばん)

一途な浅瀬の鳥は　命燃す羅針盤

(うかんだいのちのふねよいかりをあげろ！)

浮かんだ命の船よ　錨を上げろ！

(だくりゅうにのれ！ひくらよ！)

濁流に乗れ！　飛倉よ！

(ふねをすくうひしゃくをかざす)

船を　救う　柄杓を翳す

(たそがれにきえるすいめん)

黄昏に消える水面

(そらにはえるほしぞらとおく)

空に映える　星空遠く

(すべてきじょにあうために)

全て貴女に会う為に

(うつろなあのひび)

虚ろなあの日々

(しずんだこころのうみ)

沈んだ心の海

(とびたつためには)

飛び立つ為には

(あしかせがじゃまをしてた)

足枷が邪魔をしてた

(さがしてこわして)

探して　壊して

(ただむかしをさがすだけ)

ただ　昔を探すだけ

(しばられただしんでいた)

縛られ　ただ　死んでいた

(そんなひびをにどもきじょに)

そんな　日々を　二度も　貴女に

(にどとにどとおもわせない)

二度と　二度と　思わせ無い

(ほしをつれるいのちのふねは)

星を　連れる　命の船は

(すくいをもとめるかいず)

救いを求める海図

(そのやさしくかなしいこえを)

その優しく　哀しい声を

(すくいもとめつづく)

救い求め続く

(そらにはえるほしぞらとおく)

空に映える　星空遠く

(いかりをおろすことなく)

錨を下ろす事無く

(きじょのまつ)

貴女の待つ

(にらいかないに)

ニライカナイに

(ひくらはへさきをむく)

飛倉は　舳先を向く

(ふねをすくういちわのとりよ)

船を救う一羽の鳥よ

(とりをすくうそらとぶふねよ)

鳥を救う空飛ぶ船よ