永訣の盃

(さえわたる　ぎんのつきかげ)

冴え渡る　銀の月影

(うみかわし　まおうかあにうえ)

うみ交わし　舞おうか兄上

(こよいあければ　かたきどうしよ)

今宵明ければ　敵同士よ

(まいおちる　きんのはなびら)

舞い落ちる　黄金の花びら

(うみかわし　うたおうかおとうと)

うみ交わし　謡おうか弟

(おなじえにしに　うまれたけど)

同じ縁に　生まれたけど

(だれよりとおい　かなたのほしよ)

誰より遠い　彼方の星よ

(こころはおうぎのおもてうら)

心は扇の表裏

(あなたのじあいは　かせのよう)

貴方の慈愛は　枷のよう

(こころはふじつなまんげきょう)

心は不実な万華鏡

(おまえのりりしさ　こわかった)

お前の凛々しさ　恐かった

(ちにしばられた　ふたりまい)

血に縛られた　二人舞

(いとしいだけじゃ　いられない)

愛しいだけじゃ　いられない

(せなかあわせの　かごめうた)

背中合わせの　籠目歌

(ふりむいたらもう　さようなら)

振り向いたらもう　さようなら

(たがいのおもい　つらぬくために)

互いの信念　貫くために

(やりをてに　きじんとなろう)

槍を手に　鬼神となろう

(すいせいが　あまかけるように)

彗星が　天翔けるように

(いえまもるため　おれはしねない)

家守るため　俺は死ねない

(おまえがきえても　なくこともない)

お前が消えても　泣くこともない

(あなたはまるで　おぼろづき)

貴方はまるで　朧月

(ゆらぎまことは　みせなくて)

揺らぎ真実は　見せなくて

(おまえはきっと　あかいはな)

お前はきっと　赤い花

(ちれどまぶたに　やきついて)

散れど瞼に　焼きついて

(ちにみちびかれ　ふたりまい)

血に導かれ　二人舞

(にくむだけでは　いられない)

憎むだけでは　いられない

(むかいあわせの　かごめうた)

向かい合わせの　籠目歌

(せをむけたらもう　もどれない)

背を向けたらもう　戻れない

(にどといきては　あえないみちへ)

二度と生きては　逢えない道へ

(いくといい　あなたがいばらみち)

行くといい　貴女が茨道

(いくんだろう　おまえがしゅらのみち)

逝くんだろう　お前が修羅の道

(「・・・・・・おわかれです、あにうえ」)

「・・・・・・お別れです、兄上」

(ちにしばられた　ふたりまい)

血に縛られた　二人舞

(いとしくにくしみ　ふたつみよ)

愛しく憎しみ　双つ身よ

(よるがあけうたげも　これまでと)

夜が明け宴も　これまでと

(ふみだしたらさあ　さようなら)

踏みだしたらさあ　さようなら

(このちがあなたの　このみがおまえの)

この血が貴方の　この身がお前の

(さいごのかたみと　そっとだきしめ)

最後の形見と　そっと抱きしめ