怖い話《鉄の檻》

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問題文

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(わたしがしょうがくせいのころ、そぼのいえにはとてもおおきなくらがあった。)

私が小学生の頃、祖母の家にはとても大きな蔵があった。

(とびらにはがんじょうななんきんじょうがかかっていて、きょうみはあったがはいることはできなかった。)

扉には頑丈な南京錠が掛かっていて、興味はあったが入ることはできなかった。

(12がつのあるひ、なんねんかにいちどすることになっている)

12月のある日、何年かに一度することになっている

(くらのすすはらいにわたしもはじめてさんかすることになった。)

蔵の煤払いに私も初めて参加することになった。

(しんせきがそうでであつまり、なかのものをはこびだしてほこりなどをふいたりする。)

親戚が総出で集まり、中のものを運び出して埃などを拭いたりする。

(たかそうなつぼやらせんじちゅうにつかわれたのであろうぐんぷくなどがでてきて、)

高そうな壺やら戦時中に使われたのであろう軍服などが出てきて、

(おなじようにはじめてさんかした2さいとしうえのいとことはしゃいだのをおぼえている。)

同じように初めて参加した2歳年上の従兄弟とはしゃいだのを覚えている。

(ひととおりものをはこびだしたところで、くらのなかをほうきではくさぎょうにはいった。)

一通り物を運び出したところで、蔵の中を箒で履く作業に入った。

(くらのなかはとてもひろく、てんじょうもたかい。)

蔵の中はとても広く、天井も高い。

(そして、なにともいえないふるいにおいがした。)

そして、何とも言えない古いにおいがした。

(なかをみわたしていると、がんじょうそうなてつのおりが)

中を見渡していると、頑丈そうな鉄の檻が

(くらのかたすみにおかれているのをみつけた。)

蔵の片隅に置かれているのを見つけた。

(おおきさてきにくまでもいれていたのかとおもうほどりっぱなものであった。)

大きさ的に熊でも入れていたのかと思うほど立派なものであった。

(さすがにこれはおもすぎてはこびだせなかったのだろう。)

流石にこれは重すぎて運び出せなかったのだろう。

(しかし、ふるいものであろうそのてつのおりはていきてきにていれされているようで)

しかし、古いものであろうその鉄の檻は定期的に手入れされているようで

(さびひとつなくにぶくひかっていた。)

錆ひとつなく鈍く光っていた。

(くらのそとにでて、そぼにおりのことをたずねてみると)

蔵の外に出て、祖母に檻のことを尋ねてみると

(それまであかるかったそぼのひょうじょうが、ふとくらくなった。)

それまで明るかった祖母の表情が、ふと暗くなった。

(そして、ひくいこえでこういった。)

そして、低い声でこう言った。

(「あのおりにははいってはいけないよ。)

「あの檻には入ってはいけないよ。

など

(はいっていたものが、いまものこっているかもしれない。」)

入っていたものが、今も残っているかもしれない。」

(そぼのしんけんなひょうじょうをみて、)

祖母の真剣な表情を見て、

(まだおさないわたしでもほんとうにちかづいてはいけないのだなとわかった。)

まだ幼い私でも本当に近づいてはいけないのだなと分かった。

(そのあと、すすはらいはなにごともなくおわり、)

その後、煤払いは何事もなく終わり、

(いそがしいしんせきたちやりょうしんはいえにかえっていった。)

忙しい親戚たちや両親は家に帰っていった。

(しょうがくせいのわたしやいとこはふゆやすみにはいっていたため、)

小学生の私や従兄弟は冬休みに入っていた為、

(ねんまつまでそぼのいえでとまることになった。)

年末まで祖母の家で泊まることになった。

(そぼのいえにはあそびどうぐなどほとんどなかったが)

祖母の家には遊び道具などほとんど無かったが

(きょうだいのいなかったわたしはいとことあそぶのがしんそこたのしく、)

兄弟のいなかった私は従兄弟と遊ぶのが心底楽しく、

(まるめたしんぶんがみでちゃんばらをしたり、おおきなそぼのいえで)

丸めた新聞紙でチャンバラをしたり、大きな祖母の家で

(かくれんぼをしていれば、いくらでもあそべた。)

かくれんぼをしていれば、いくらでも遊べた。

(あるひのころ、いつものようにかくれんぼをしていたわたしは、)

ある日のころ、いつものようにかくれんぼをしていた私は、

(いえのなかをいくらさがしてもいとこをみつけられなかった。)

家の中をいくら探しても従兄弟を見つけられなかった。

(あるていどさがしたわたしはこうさんし、いとこにまいったとよびかけた。)

ある程度探した私は降参し、従兄弟に参ったと呼びかけた。

(みみをすましてみると、にわのほうからちいさくいとこのこえがきこえてくる。)

耳を澄ましてみると、庭の方から小さく従兄弟の声が聞こえてくる。

(にわにでたわたしはおどろいた。)

庭に出た私は驚いた。

(くらのとびらがあいている。)

蔵の扉が開いている。

(なんきんじょうがかかっているうえ、しょうがくせいがあけられるおもさのとびらではない)

南京錠が掛かっているうえ、小学生が開けられる重さの扉ではない・

(それにこのいえにいるおとなは、いまはかいものにいっているそぼだけのはずなのだ。)

それにこの家にいる大人は、今は買い物に行っている祖母だけのはずなのだ。

(おどろいていると、くらのなかからいとこのこえがきこえてきた。)

驚いていると、蔵の中から従兄弟の声が聞こえてきた。

(「おーい、だしてくれ!」)

「おーい、出してくれ!」

(なかをのぞいてみると、いとこがあのおりのなかにはいっていた。)

中を覗いてみると、従兄弟があの檻の中に入っていた。

(いつもはきじょうないとこのかおはなみだとはなみずでくしゃくしゃだった。)

いつもは気丈な従兄弟の顔は涙と鼻水でくしゃくしゃだった。

(「くらのとびらがあいていたからなかにはいったんだけど、おりのとびらもひらいてたから)

「蔵の扉が開いていたから中に入ったんだけど、檻の扉も開いてたから

(ためしにはいってみたんだ。)

試しに入ってみたんだ。

(そしたらこのとびら、きゅうにしまってびくともしない!」)

そしたらこの扉、急に閉まってびくともしない!」

(ふあんになったわたしだが、おりにはちかづきたくなかった。)

不安になった私だが、檻には近づきたくなかった。

(いりぐちからそぼをよんでくるとつたえて、ぜんりょくでちかくのしょうてんがいへむかった。)

入口から祖母を呼んでくると伝えて、全力で近くの商店街へ向かった。

(さいわいすぐにそぼはみつかったため、いとこのことをつたえた。)

幸いすぐに祖母は見つかった為、従兄弟のことを伝えた。

(つたえたとたん、そぼのかおいろはまっさおになり)

伝えた途端、祖母の顔色は真っ青になり

(ものすごいはやさでわたしをつれていえにかえってきた。)

物凄い速さで私を連れて家に帰ってきた。

(いえにもどり、すぐにくらへむかった。)

家に戻り、すぐに蔵へ向かった。

(しかし、おりのなかにいるはずのいとこはいなかった。)

しかし、檻の中にいるはずの従兄弟はいなかった。

(そぼはひざからくずれおち、すすりなきはじめた。)

祖母は膝から崩れ落ち、啜り泣き始めた。

(「ちかくのこうばんにいって、おまわりさんをよんできてちょうだい・・・」)

「近くの交番に行って、おまわりさんを呼んできてちょうだい・・・」

(そういわれたわたしは、いそいでこうばんにむかった。)

そう言われた私は、急いで交番に向かった。

(それからはいろいろなひとにしつもんぜめにされ、)

それからは色々な人に質問攻めにされ、

(なんどもなんどもおなじことをきかれ、きおくがあいまいだ。)

何度も何度も同じことを聞かれ、記憶が曖昧だ。

(あとになってしらされたが、けいさつがけんめいなそうさくをしたにもかかわらず、)

後になって知らされたが、警察が懸命な捜索をしたにも関わらず、

(いとこはみつからなかったそうだ。)

従兄弟は見つからなかったそうだ。

(そぼはあのひいらいぼーっとすることがおおくなり、)

祖母はあの日以来ぼーっとすることが多くなり、

(つぎのとしのふゆになくなってしまった。)

次の年の冬に亡くなってしまった。

(そぼのはうりにだされ、あとちにはあぱーとがたったらしい。)

祖母のは売りに出され、跡地にはアパートが建ったらしい。

(いとこに、おりにはちかづくなとつたえておけば)

従兄弟に、檻には近づくなと伝えておけば

(いとこはいなくならなかったのだろうか。)

従兄弟はいなくならなかったのだろうか。

(くやんでもくやんでももうおそかった。)

悔やんでも悔やんでももう遅かった。

(あのおりは、どうなったのだろうか。)

あの檻は、どうなったのだろうか。

(そぼのいっていたおりにはいっていたものとは。)

祖母の言っていた檻に入っていたものとは。

(わたしはいまでもわからない。)

私は今でも分からない。

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