にっかり妖かし数え唄

(あきたがおばけみたっていったけどけっきょくいなかったね)

「秋田がおばけ見たって言ったけど」「結局いなかったね」

(ねぼけてみまちがえたんだろうなあきた)

「寝ぼけて見間違えたんだろう。な、秋田」

(そうだといいんですが)

「そうだと…、いいんですが」

(きもだめしみたいでここわかったです)

「肝試しみたいで…」「こ、怖かったです…」

(にっかりさんがたすけてくれたからかいけつですね)

「にっかりさんが助けてくれたから解決ですね」

(たすかったありがとうございます)

「助かった」「ありがとうございます」

(さはやくへやにかえってねるばい)

「さ、早く部屋に帰って寝るばい」

(わきざしたずさえくらきみち)

脇差携え　暗き道

(ひとつひとりのかげすがたこわいはなしですか)

ひとつ　ひとりの影姿　「怖い話ですか？」

(ふたつふゆりとたたずまいおれはねる)

ふたつ　ふゆりと佇(たたず)まい　「俺は、寝る」

(みっつみのけがよだつえみそいつはぶきみだな)

みっつ　身の毛が弥立(よだ)つ笑み　「そいつは不気味だな」

(よっつようじをだいているめずらしいおはなしですね)

よっつ　幼児を抱いている　「珍しいお話ですね」

(いつつこやつはあやかしかおばけなんていると)

いつつ　こやつは妖(あや)かしか　「おばけなんていると？」

(むっつむしんでかたなぬきあやしいものはせいばいします)

むっつ　無心で刀抜き　「怪しいものは成敗します！」

(ななつなくなれふたりともややめてください)

ななつ　亡くなれ二人とも　「や、やめてください」

(やっつやみくもふりおとしねないとおはだがあれちゃうよ)

やっつ　やみくも振り落とし　「寝ないとお肌が荒れちゃうよ」

(ここのつころりとおちたくびさあねようぜ)

ここのつ　ころりと落ちた首　「さあ、寝ようぜ！」

(とうとこちらをわらいみるねむれるでしょうか)

とう　と、こちらを笑い見る　「眠れるでしょうか…」

(ぼうれいうたいしかぞえうたおやすみなさい)

亡霊歌いし　数え唄　「おやすみなさい」

(ひとりおおい)

一人、多い…

(ああさまよえるにせもののさびしげなこころ)

あゝ　彷徨える贋作(にせもの)の　淋しげな魂(こころ)

(ああゆめかげろうしんきろううれうよりきみのえがおをかぞえよう)

あゝ　夢　陽炎　蜃気楼　憂うより　君の笑顔を数えよう

(さあみんなはやくねろよはーい)

「さあ、みんな早く寝ろよ」「はーい」

(へやにひそんだあやかしをとらえきるのもまたいっきょう)

部屋に潜んだ　妖(あや)かしを　捕らえ斬るのも　また一興

(ひとつひとみをきったよるつつづきがあるのか)

ひとつ　人身を斬った夜　「つ、続きがあるのか？」

(ふたつふるえがとまらないそりゃそうだろうな)

ふたつ　震えが止まらない　「そりゃそうだろうな…」

(みっつみみもとのこるのはなんだ)

みっつ　耳元残るのは　「なんだ…？」

(よっつよういなわらいごえにっかりさんきみわるいですよ)

よっつ　妖異な笑い声　「にっかりさん、気味悪いですよ」

(いつついつまでつづくのかもうおわりにしましょう)

いつつ　いつまで続くのか　「もう終わりにしましょう」

(むっつむざんにあさむかえねむれなかったんだ)

むっつ　無惨に朝迎え　「眠れなかったんだ…」

(ななつなきがらさがしたがももしかして)

ななつ　亡骸探したが　「も、もしかして…」

(やっつやつらのけはいなしいなかったのですね)

やっつ　奴らの気配なし…　「いなかったのですね…」

(ここのつこけのおいしげるなんがあったと)

ここのつ　苔の生い茂る　「なんがあったと？」

(とうとうろうがよこたわるぶきみですね)

とう　灯籠が横たわる　「不気味…ですね…」

(どこからともなくきこえるはあぁあねむい)

どこからともなく　聞こえるは　「あぁあ…眠い」

(ぼうれいうたいしかぞえうたおやすみなさい)

亡霊歌いし　数え唄　「おやすみなさい」

(ふたりおおい)

二人、多い…

(ああうたかたのあだざくらものうげなこころ)

あゝ　泡沫(うたかた)の仇桜(あだざくら)　物憂げな魂(こころ)

(ああはかなくもまよいばなつかめぬきみのかげ)

あゝ　儚くも迷い花　掴めぬ君の影

(ああさまよえるにせもののさびしげなこころ)

あゝ　彷徨える贋作(にせもの)の　淋しげな魂(こころ)

(ああゆめかげろうしんきろううれうより)

あゝ　夢　陽炎　蜃気楼　憂うより

(きみのえがおをかぞえよう)

君の笑顔を数えよう

(ああうたかたのあだざくらものうげなこころ)

あゝ　泡沫(うたかた)の仇桜(あだざくら)　物憂げな魂(こころ)

(ああはかなくもまよいばなつかめぬきみのかげ)

あゝ　儚くも迷い花　掴めぬ君の影

(ああさまよえるにせもののさびしげなこころ)

あゝ　彷徨える贋作(にせもの)の　淋しげな魂(こころ)

(ああゆめかげろうしんきろううれうよりきみのえがおをかぞえよう)

あゝ　夢　陽炎　蜃気楼　憂うより　君の笑顔を数えよう