『キュートアグレッション』/キタニタツヤ

(たにんのいたみにはどんかんで)

他人の痛みには鈍感で

(じぶんのいたみにはびんかんなぼくら)

自分の痛みには敏感な僕ら

(ししゅんきにこわれちゃってなおせなくなった)

思春期に壊れちゃって直せなくなった

(やまないはるのきょうそうで)

止まない春の狂躁で

(ふたしてられないしょうどうがりーくしていく)

蓋してられない衝動がリークしていく

(ぼくもこわしたいなあ)

僕も壊したいなあ

(きみのこころのやわいとこ)

君の心のやわいとこ

(すきかってかみついてしまいたくなって)

好き勝手噛みついてしまいたくなって

(たやすくおれそうなほそいくび)

容易く折れそうな細い首

(すこしだけくるしめたくなって)

少しだけ苦しめたくなって

(やっぱりほしくなっちゃうな)

やっぱり欲しくなっちゃうな

(きみのすべてをこのまちがねむるまえにつれさりたいよ)

君の全てをこの街が眠る前に、連れ去りたいよ

(３６どあまりのきみのくびすじに)

36度あまりの君の首筋に

(すこしあとがのこったってかまわないでしょう)

少し跡が残ったって、構わないでしょう？

(だからいまはゆるして)

だから今は許して

(こんなばけものにだっておやがいたりするんだ)

こんな化け物にだって親がいたりするんだ

(むせきにんなひともいるね)

無責任な人もいるね

(かわいそうってことばにそって)

可哀想って言葉に沿って

(ひびをよそおってりゃまんぞくそうで)

日々を装ってりゃ満足そうで

(かめりあこんぷれっくすをくすぐるために)

カメリアコンプレックスをくすぐる為に

(あいをろうひしている)

愛を浪費している

(いっけんしてみればかんようで)

一見してみれば寛容で

(はみだすぼくらにはきょうりょうなせかいは)

はみ出す僕らには狭量な世界は

(ｈｏｃｕｓ－ｐｏｃｕｓっていうんだ)

hocus-pocusって言うんだ

(おとなはみんなぺてんしさ)

大人はみんなペテン師さ！

(ふえたいというほんのうと)

殖えたいという本能と

(せいふくしたいというれつじょうをかくしている)

征服したいという劣情を隠している

(ぼくにはできないなあ)

僕にはできないなあ

(わすれたいほどのかこなど)

忘れたいほどの過去など

(わすれられるほどのいたみとまじないで)

忘れられるほどの痛みと呪いで

(うわがきしたいよ)

上書きしたいよ

(どうじょうのよちもないほど)

同情の余地もないほど

(きみのわるいきみのはりつけたなきがおを)

気味の悪い君の張り付けた泣き顔を

(ふみにじってみたいな)

踏み躙ってみたいな

(きみのこころのやわいとこ)

君の心のやわいとこ

(すきかってかみついてしまいたくなって)

好き勝手噛みついてしまいたくなって

(たやすくおれそうなほそいくび)

容易く折れそうな細い首

(すこしだけくるしめたくなって)

少しだけ苦しめたくなって

(かったりいあいみすゆーとかいらないぼくたちは)

かったりいアイミスユーとかいらない、僕たちは

(るさんちまんがにこごったどすぐろいあいを)

ルサンチマンが煮凝ったドス黒い愛を

(やつあたりみたいにぶつけてむしりあう)

八つ当たりみたいにぶつけて、毟り合う

(くだらないどろじあいに)

くだらない泥試合に

(むちゅうになった)

夢中になった

(やっぱりほしくなっちゃうな)

やっぱり欲しくなっちゃうな

(きみのすべてをこのまちがねむるまえにつれさりたいよ)

君の全てをこの街が眠る前に、連れ去りたいよ

(３６どあまりのきみのくびすじに)

36度あまりの君の首筋に

(すこしあとがのこったってかまわないでしょう)

少し跡が残ったって、構わないでしょう？

(だからいまはゆるして)

だから今は許して