苦悩の梨

(みにくいあひるをうつすかがみ)

醜い鶩を映す鏡

(といただしても)

問い質しても

(みあたらないさんかっけい)

見当たらない　三角形

(じごくでひとりすくわれずなげいた)

地獄で独り　救われず　嘆いた

(ぬぐいきれぬざいあくとしじまは)

拭い切れぬ罪悪と静寂は

(きたないところをみないようにして)

汚い処を見ない様にして

(しあわせぶったいじょうなせいじょうしゃ)

幸せ振った異常な正常者

(おかまいなしにゆびさしわらえる)

お構い無しに　指差し　笑える

(みにくいあひるのこは？)

醜い鶩の子は？

(またのぞまれぬいのちすておくまじょと)

また望まれぬ命　捨て置く　魔女と

(いたずらにとがめられるあくま)

徒に　咎められる悪魔

(ただいつまでもへいおんをのぞまれたから)

ただ何時迄も平穏を望まれたから

(なにもいえずにたたずむ)

何も言えずに佇む

(ほら「おいでおいで」といわれた)

ほら「おいでおいで」と言われた

(わたしがちがったまちがっていた)

私が違った　間違っていた

(くちをつぐみささったとげが)

口を噤み　刺さった棘が

(いたくてただいたくて)

痛くて　ただ痛くて

(しじまのなかちがうわたし)

静寂の中　違う私

(すくいさえもないなら)

救いさえも無いなら

(どうかどうかころしてくれ)

どうかどうか　殺してくれ

(きずつくまえに)

傷付く前に

(なもしらないだれかが)

名も知らない誰かが

(ころされるがさだめか)

殺されるが運命か

(やかれためのいんがが)

焼かれた目の因果が

(くるわせてるはぐるま)

狂わせてる歯車

(なもしらないだれかが)

名も知らない誰かが

(ころされるがさだめか)

殺されるが運命か

(やかれためのいんがが)

焼かれた目の因果が

(くるわせてるはぐるま)

狂わせてる歯車

(なもしらないだれかに)

名も知らない誰かに

(ねがわくはしんのいのりを)

願わくは　真の祈りを

(やかれためのいんがが)

焼かれた目の因果が

(つつましくいきることすら)

慎ましく生きる事すら

(またおもむろにじゅうじにかけられたまじょと)

また徐に　十字に　架けられた魔女と

(ひたすらにひとをはばむあくま)

只管に　人を阻む悪魔

(ただいつからかふおんをのぞまれたから)

ただ何時からか不穏を望まれたから

(つぐんだくちがひらけて)

噤んだ口が開けて

(あくまのみぎてがささやいていた)

悪魔の右手が囁いていた

(「おまえはここではない」と)

「お前は　此処ではない」と

(そのいみにきづけないわたしは)

その意味に気づけない私は

(おろかでただおろかで)

愚かで　ただ愚かで

(「おいでおいで」といわれた)

「おいでおいで」と言われた

(わたしがちがったまちがっていた)

私が違った　間違っていた

(くちをひらきささったとげが)

口を開き　刺さった棘が

(いたくてただいたくて)

痛くて　ただ痛くて

(しじまのなかちがうわたし)

静寂の中　違う私

(すくいさえもないなら)

救いさえも無いなら

(どうかどうかゆるしてくれ)

どうかどうか　許してくれ

(きずつくまえに)

傷付く前に