奥の細道
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問題文
(くさのともすみかわるよぞひなのいえ)
草の戸も住替る代ぞひなの家
(ゆくはるやとりなきうおのめはなみだ)
行春や鳥啼魚の目は泪
(あらたうとあおばわかばのひのひかり)
あらたうと青葉若葉の日の光
(そりすててくろかみやまにころもがえ)
剃捨て黒髪山に衣更
(しばらくはたきにこもるやげのはじめ)
暫時は瀧に籠るや夏の初
(かさねとはやえなでしこのななりべし)
かさねとは八重撫子の名成べし
(なつやまにあしだをおがむかどでかな)
夏山に足駄を拝む首途哉
(きつつきもいおりはやぶらずなつこだち)
木啄も庵はやぶらず夏木立
(のをよこにうまひきむけよほととぎす)
野を横に馬牽むけよほとゝぎす
(たいちまいうえてたちさるやなぎかな)
田一枚植て立去る柳かな
(うのはなをかざしにせきのはれぎかな)
卯の花をかざしに関の晴着かな
(ふうりゅうのはつやおくのたうえうた)
風流の初やおくの田植うた
(よのひとのみつけぬはなやのきのくり)
世の人の見付ぬ花や軒の栗
(さなえとるてもとやむかししのぶずり)
早苗とる手もとや昔しのぶ摺
(おいもたちもさつきにかざれかみのぼり)
笈も太刀も五月にかざれ帋幟
(かさじまはいづこさつきのぬかりみち)
笠嶋はいづこさ月のぬかり道
(さくらよりまつはにふたきをみつきごし)
桜より松は二木を三月越し
(あやめぐさあしにむすばんわらじのお)
あやめ草足に結ん草鞋の緒
(まつしまやつるにみをかれほととぎす)
松島や鶴に身をかれほとゝぎす
(なつくさやつわものどもがゆめのあと)
夏草や兵どもが夢の跡
(うのはなにかねふさみゆるしらがかな)
卯の花に兼房みゆる白毛かな
(さみだれのふりのこしてやひかりどう)
五月雨の降のこしてや光堂
(のみしらみうまのばりするまくらもと)
蚤虱馬の尿する枕もと
(すずしさをわがやどにしてねまるなり)
涼しさを我宿にしてねまる也
(はいいでよかひやがしたのひきのこえ)
這出よかひやが下のひきの声
(まゆはきをおもかげにしてべにこのはな)
まゆはきを俤にして紅粉の花
(こがいするひとはこだいのすがたかな)
蚕飼する人は古代のすがた哉
(のどけさやいわにしみいれせみのこえ)
閑さや岩にしみ入蝉の声
(さみだれをあつめてはやしもがみがわ)
五月雨をあつめて早し最上川
(ありがたやゆきをかほらすみなみだに)
有難や雪をかほらす南谷
(すずしさやほのみかづきのはぐろさん)
涼しさやほの三か月の羽黒山
(くものみねいくつくずしてつきのやま)
雲の峯幾つ崩て月の山
(かたられぬゆどのにぬらすたもとかな)
語られぬ湯殿にぬらす袂かな
(ゆどのさんぜにふむみちのなみだかな)
湯殿山銭ふむ道の泪かな
(あつみやまやふくらかけてゆうすずみ)
あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ
(あつきひをうみにいれたりもがみがわ)
暑き日を海にいれたり最上川
(きさかたやあめにせいしがねぶのはな)
象潟や雨に西施がねぶの花
(しおこしやつるはぎぬれてうみすずし)
汐越や鶴はぎぬれて海涼し
(きさかたやりょうりなにくふかみまつり)
象潟や料理何くふ神祭
(あまのいえやといたをしきてゆうすずみ)
蜑の家や戸板を敷て夕涼
(なみこえぬちぎりありてやみさごのす)
波こえぬ契ありてやみさごの巣
(ふみづきやむいかもつねのよるにはにず)
文月や六日も常の夜には似ず
(あらうみやさどによこたふあまのがわ)
荒海や佐渡によこたふ天河
(ひとつやにゆうじょもねたりはぎとつき)
一家に遊女もねたり萩と月
(わせのかやわけいるみぎはありそうみ)
わせの香や分入右は有磯海
(つかもうごけわがなくこえはあきのかぜ)
塚も動け我泣声は秋の風
(あきすずしてごとにむけやうりなすび)
秋涼し手毎にむけや瓜茄子
(あかあかとひはつれなくもあきのかぜ)
あかあかと日は難面もあきの風
(しほらしきなやこまつふくはぎすすき)
しほらしき名や小松吹萩すゝき
(むざんやなかぶとのしたのきりぎりす)
むざんやな甲の下のきりぎりす
(いしやまのいしよりしろしあきのかぜ)
石山の石より白し秋の風
(やまなかやきくはたおらぬゆのにおい)
山中や菊はたおらぬ湯の匂
(ゆきゆきてたふれふすともはぎのはら)
行行てたふれ伏とも萩の原
(きょうよりやかきつけけさんかさのつゆ)
今日よりや書付消さん笠の露
(よもすがらあきかぜふくやうらのやま)
終宵秋風聞やうらの山
(にわはきていでばやてらにちるやなぎ)
庭掃て出ばや寺に散柳
(ものかきておうぎひきさくなごりかな)
物書て扇引さく余波哉
(つきすましゆぎょうのもてるすなのうえ)
月清し遊行のもてる砂の上
(めいげつやほっこくびよりさだめなき)
名月や北国日和定なき
(さびしさやすまにかちたるはまのあき)
寂しさや須磨にかちたる濱の秋
(なみのまやこがいにまじるはぎのちり)
波の間や小貝にまじる萩の塵
(はまぐりのふたみにわかれゆくあきぞ)
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ