心霊写真 -21-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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| 1 | berry | 7858 | 神 | 7.9 | 98.5% | 421.6 | 3362 | 49 | 59 | 2026/07/21 |
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問題文
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(そしてこの1938ねんから39ねんのこのじき、)
そしてこの1938年から39年のこの時期、
(かれはごじゅうだいこうはんで、ざまにあったりくぐんしかんがっこうのきょうかんのにんについていました。)
彼は五十代後半で、座間にあった陸軍士官学校の教官の任についていました。
(せいかくには1928ねんからきょうかんのしょくにありました。)
正確には1928年から教官の職にありました。
(おもに、せんちにおけるちけいにかんするかもくをうけもっていたようです。)
主に、戦地における地形に関する科目を受け持っていたようです。
(じゅうようなのは、このせいねんしょうこうたちが、ぜんいんりくぐんしかんがっこうのそつぎょうせいであり、)
重要なのは、この青年将校たちが、全員陸軍士官学校の卒業生であり、
(じきてきにも、きょうかん・すなみだいごのおしえをうけていたであろうというじじつです。)
時期的にも、教官・角南大悟の教えを受けていたであろうという事実です。
(もっとも、りくぐんのかんぶこうほなまは、すべからくりくぐんしかんがっこうを)
もっとも、陸軍の幹部候補生は、すべからく陸軍士官学校を
(でているものであり、ただりくぐんしかんがっこうせいだったというだけで、)
出ているものであり、ただ陸軍士官学校生だったというだけで、
(じっこうはんであるかれらせいねんしょうこうらをむすびつけるひんとにはならないはずでした。)
実行犯である彼ら青年将校らを結びつけるヒントにはならないはずでした。
(ただもときょうかんであるすなみだいごとかれらとが、たいぎゃくじけんのとしかそのぜんねんに、)
ただ元教官である角南大悟と彼らとが、大逆事件の年かその前年に、
(こうしていっしょにうつっているこのようなしゃしんがでてくると、)
こうして一緒に写っているこのような写真が出てくると、
(はなしはまったくかわってきます。)
話は全く変わってきます。
(もしかりに、りくぐんしかんがっこうじだいに、いわかわたちがすなみだいごのおしえをうけ、)
もし仮に、陸軍士官学校時代に、岩川たちが角南大悟の教えを受け、
(そのしんぽうしゃとなり、そつぎょうごもそのじょげん・ざんげんにしたがうがままに、)
その信奉者となり、卒業後もその助言・讒言(ざんげん)に従うがままに、
(きんじょうてんのうへいかをしいぎゃくしようとしたならば、じっこうはんでなくともとうぜんにれんざし、)
今上天皇陛下を弑虐しようとしたならば、実行犯でなくとも当然に連座し、
(しそうてきしゅぼうしゃとしてしざいにあたいします。)
思想的首謀者として死罪に値します。
(けいほうからたいぎゃくざいがきえさったげんだいにおいても、そのつみはとてつもなくおもい。)
刑法から大逆罪が消え去った現代においても、その罪はとてつもなく重い。
(はいせんをへてなお、てんのうというおうをこくみんのうえにいただくこのくににおいては、ね」)
敗戦を経てなお、天皇という王を国民の上にいただくこの国においては、ね」
(「たしかにすきゃんだるだな。せんきょどころのはなしじゃない」)
「確かにスキャンダルだな。選挙どころの話じゃない」
(ししょうはぼそりといった。)
師匠はぼそりと言った。
など
(「これがおおやけになれば、じけんとうじはたちとじゅうはっさいであり、)
「これが公になれば、事件当時二十歳と十八歳であり、
(すでにせいじんしていたむすこのすなみそういちろうともりたかのふたりにも、)
すでに成人していた息子の角南総一郎と盛高の二人にも、
(せけんのひなんのほこさきはむかうでしょう。)
世間の非難の矛先は向かうでしょう。
(このしゃしんいちまいで、すなみいちぞくのめいうんはおおきくかわることになります」)
この写真一枚で、角南一族の命運は大きく変わることになります」
(ですが、とまつうらはこえをおとした。)
ですが、と松浦は声を落とした。
(「このしゃしんをどのようにしてかてにはいれたたむらは、)
「この写真をどのようにしてか手に入れた田村は、
(われわれのこもんべんごしのじむしょにあらわれ、とりひきのちゅうかいをいらいします。)
我々の顧問弁護士の事務所に現れ、取り引きの仲介を依頼します。
(たんにきんがほしいのであれば、すなみけをゆすればいいはずです。)
単に金が欲しいのであれば、角南家を強請ればいいはずです。
(ゆうかいじけんのみのしろきんどころではない、とてつもないきんがくがつまれることでしょう。)
誘拐事件の身代金どころではない、とてつもない金額が積まれることでしょう。
(しかしそうしなかったのは、このれきしのやみにほうむられたしんじつをはくじつのもとに)
しかしそうしなかったのは、この歴史の闇に葬られた真実を白日の下に
(さらしたい、というるぽらいたーとしてのかれなりのおもいがあったのかもしれない。)
晒したい、というルポライターとしての彼なりの想いがあったのかも知れない。
(そしてすなみけとてきたいしている、)
そして角南家と敵対している、
(とかれがおもいこんでいたわれわれのもとへとやってくるのです。)
と彼が思い込んでいた我々の元へとやってくるのです。
(べんごしはれいせいにじょうきょうをはんだんし、わたしにれんらくします。)
弁護士は冷静に状況を判断し、私に連絡します。
(わたしはすぐにちかくにいたわかいしゅをむかわせました。)
私はすぐに近くにいた若い衆を向かわせました。
(そのしゃしんのこうひょうをじょうけんに、あとはいくらでゆずりわたすか、)
その写真の公表を条件に、あとは幾らで譲り渡すか、
(そのはらのよみあいをしていた、いや、しているつもりだったたむらは、)
その腹の読み合いをしていた、いや、しているつもりだった田村は、
(あらわれたわかいしゅうをみて、じぶんのよみちがいをさとります。)
現れた若い衆を見て、自分の読み違いを悟ります。
(つまり、われわれもそのしゃしんをにぎりつぶすはらだということをね。)
つまり、我々もその写真を握りつぶす腹だということをね。
(たむらはていこうしましたがとりおさえられ、それをしりめにべんごしは)
田村は抵抗しましたが取り押さえられ、それを尻目に弁護士は
(じむしょにあったこぴーきでしゃしんのふくしゃをとろうとします。)
事務所にあったコピー機で写真の複写をとろうとします。
(しかしそのふくしゃがかんりょうするまえに、いっしゅんのすきをついてたむらがわかいしゅをふりほどき、)
しかしその複写が完了する前に、一瞬の隙をついて田村が若い衆を振りほどき、
(べんごしをつきとばしてしゃしんをうばいかえします。)
弁護士を突き飛ばして写真を奪い返します。
(そしてとうそうしたのです」)
そして逃走したのです」
(まつうらはゆびをこうごにくんでたんたんとかたる。)
松浦は指を交互に組んで淡々と語る。
(「わかいしゅうともみあいになったときに、はらをけがしていたたむらですが、)
「若い衆ともみ合いになった時に、腹を怪我していた田村ですが、
(にげこんだこちらのじむしょでおうきゅうしょちをされ、)
逃げ込んだこちらの事務所で応急処置をされ、
(そのあともとうそうしたままつかまらないでいます」)
その後も逃走したまま捕まらないでいます」
(よけいなことを、ともいわず、ただじじつとしてかたっているようなくちょうだった。)
余計なことを、とも言わず、ただ事実として語っているような口調だった。
(「われわれのもとにのこされた、このしっぱいしたふくしゃ。)
「我々の元に残された、この失敗した複写。
(かんじんの「ろうじん」、すなみだいごのかおがくろくつぶれてうつっていないのです。)
肝心の「老人」、角南大悟の顔が黒く潰れて写っていないのです。
(これでは、どくとしてのかちはきわめてよわいものとなります。)
これでは、毒としての価値は極めて弱いものとなります。
(そうきゅうに、ほんものをもってとうそうをつづけているたむらをおさえるひつようがあるのです」)
早急に、本物を持って逃走を続けている田村を押さえる必要があるのです」
(「ちょっとまて、たむらをおさえるひつようがあるのは、)
「ちょっと待て、田村を押さえる必要があるのは、
(ほんもののすきゃんだるしゃしんをこうひょうされたくないからだろう。)
本物のスキャンダル写真を公表されたくないからだろう。
(なんで、すでにてなかにあってにぎりつぶせるこぴーのほうのどくせいがかんけいあるんだ。)
なんで、すでに手中にあって握りつぶせるコピーの方の毒性が関係あるんだ。
(まるでそれじゃあ・・・・・)
まるでそれじゃあ・・・・・
(おまえらも、すなみけをねだろうとしているみたいじゃないか」)
お前らも、角南家を強請ろうとしているみたいじゃないか」
(ししょうのといかけに、まつうらはかおいろひとつかえず、ないもこたえなかった。)
師匠の問い掛けに、松浦は顔色一つ変えず、ないも答えなかった。