心霊写真 -23-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(そのことがもついみがわからないぼくではなかった。)
そのことが持つ意味が分からない僕ではなかった。
(「しん、れい、しゃ、しん?」)
「心、霊、写、真?」
(おもったいじょうにまぬけなこえがでてしまった。)
思った以上に間抜けな声が出てしまった。
(ししょうがぼくをにらみつける。)
師匠が僕を睨みつける。
(しかしそういうことなのだろう。)
しかしそういうことなのだろう。
(ぐんたいというきゅうきょくのじょうげかんけいそしきにみをおくのだから、)
軍隊という究極の上下関係組織に身を置くのだから、
(こういうしゃしんひとつとるのにも、そのすわるぽじしょんにはきまりごとがある。)
こういう写真一つ撮るのにも、その座るポジションには決まりごとがある。
(ちゅうおうにいるほど、そしてぜんれつにいるめうえのにんげんだということだ。)
中央にいるほど、そして前列にいる目上の人間だということだ。
(「ろうじん」がちゅうおうなのはとうぜんとして、)
「老人」が中央なのは当然として、
(そのさゆうにつくのがたいいであるいわかわとはやた。ここまではわかる。)
その左右につくのが大尉である岩川と早田。ここまでは分かる。
(しかしかれらふたりよりもはやくたいいにしょうしんし、めんばーのせいしんてきしちゅうでもあった)
しかし彼ら二人よりも早く大尉に昇進し、メンバーの精神的支柱でもあった
(まさおかてつおが、こんなひだりのすみにすわっているなんてありえないことだった。)
正岡哲夫が、こんな左の隅に座っているなんてありえないことだった。
(かれが、そのばにほんとうにいたのならば。)
彼が、その場に本当にいたのならば。
(「このひだりすみのじんぶつは、ほんとうにそのまさおかてつおなのか」)
「この左隅の人物は、本当にその正岡哲夫なのか」
(「すくなくとも、しりょうにのこるまさおかたいいのしゃしんにきわめてにています」)
「少なくとも、資料に残る正岡大尉の写真に極めて似ています」
(まつうらはけんきゅうぼんのぺーじをひらいてこちらにみせた。)
松浦は研究本の頁を開いてこちらに見せた。
(そこにでているまさおかおかおは、たしかにめのまえのしゃしんのじんぶつとうりふたつだった。)
そこに出ている正岡お顔は、確かに目の前の写真の人物と瓜二つだった。
(「なかまだったというしょうげんがあり、げんにこれだけにているのです。)
「仲間だったという証言があり、現にこれだけ似ているのです。
(まさおかたいいではなく、べつじんであるかのうせいはひくいでしょう」)
正岡大尉ではなく、別人である可能性は低いでしょう」
(ししょうはちいさくうなった。そして「その、まさおかのしぼうじきと、)
師匠は小さく唸った。そして「その、正岡の死亡時期と、
など
(いわかわたちのたいいしょうしんじきのしんぴょうせいは?」と、さらにかくにんする。)
岩川たちの大尉昇進時期の信憑性は?」と、さらに確認する。
(「べんごしせんせいがそのそごにきづきましたね。)
「弁護士先生がその齟齬に気づきましたね。
(それがじじつならばこのしゃしんのもついみがこんていからくずれてします。)
それが事実ならばこの写真の持つ意味が根底から崩れてします。
(さいゆうせんでうらをとりましたよ。)
最優先で裏を取りましたよ。
(いずれもぐんのきろくにはっきりとのこっています。)
いずれも軍の記録にはっきりと残っています。
(けつろんとして、まさおかのしぼうは38ねん6がつ。)
結論として、正岡の死亡は38年6月。
(いわかわ、はやたのたいいしょうしんは、どうねん8がつでまちがいありません」)
岩川、早田の大尉昇進は、同年8月で間違いありません」
(「だったらこいつは」といいながら、ししょうはしゃしんのかおのあたりをこづいた。)
「だったらこいつは」と言いながら、師匠は写真の顔のあたりを小突いた。
(「そのゆうれいってわけかい」)
「その幽霊ってわけかい」
(「それをしらべるのが、わたしのいらいする、あなたのしごとです」)
「それを調べるのが、私の依頼する、あなたの仕事です」
(しんれいしゃしんのかんていをしろというのか。)
心霊写真の鑑定をしろというのか。
(これほどたいへんなじけんにかかわることに、そんなうさんくさいことをからめていいのか、)
これほど大変な事件に関わることに、そんな胡散臭いことを絡めていいのか、
(というしごくとうぜんのおもいがわいた。)
という至極当然の思いが湧いた。
(しかし、しんでいて、もういないはずのおとこがうつっているなんていう)
しかし、死んでいて、もういないはずの男が写っているなんていう
(あやしいしゃしんが、このれきしてきすきゃんだるのゆいいつのしょうこしゃしんだなんて、)
怪しい写真が、この歴史的スキャンダルの唯一の証拠写真だなんて、
(そのかみあわないかんじがおかしくてぼくはおちつかなかった。)
その噛み合わない感じがおかしくて僕は落ちつかなかった。
(まつうらとししょうは、おたがいのしせんをしょうめんからうけとめあい、しばらく)
松浦と師匠は、お互いの視線を正面から受け止め合い、しばらく
(そのひとみのおくのものをよみとこうとするかのようにじっとうごかないでいた。)
その瞳の奥のものを読み解こうとするかのようにじっと動かないでいた。
(やがてししょうはちからをぬいたようにわらい、)
やがて師匠は力を抜いたように笑い、
(「ま、いいけど。ちょっとじかんがほしい」)
「ま、いいけど。ちょっと時間が欲しい」
(「どのくらい」)
「どのくらい」
(「ふつか」)
「二日」
(「だめだ」)
「だめだ」
(ししょうはまつうらをにらむ。)
師匠は松浦を睨む。
(「じゃああしたにはなんとか」)
「じゃあ明日にはなんとか」
(「だめだ」)
「だめだ」
(まつうらがそういいきったあと、さんじゅうびょうほどのちんもくののちに、)
松浦がそう言い切った後、三十秒ほどの沈黙ののちに、
(ししょうが「こんやじゅうに」といった。)
師匠が「今夜中に」と言った。
(まつうらは「いいでしょう」とうなずき、)
松浦は「いいでしょう」と頷き、
(「それはふくしゃのふくしゃです。こんやまであずけますが、よけいなことをかんがえると、)
「それは複写の複写です。今夜まで預けますが、余計なことを考えると、
(ためにはならないことをもうしそえておきます」)
ためにはならないことを申し添えておきます」
(と、ごくあたりまえのくちょうでつけくわえた。)
と、ごくあたりまえの口調で付け加えた。
(しかし、そのことばは、かれのつかうわかいしゅなどのおどしことばなどより)
しかし、その言葉は、彼の使う若い衆などの脅し言葉などより
(よほどしんにせまるきけんさをひめていた。)
よほど真に迫る危険さを秘めていた。
(「ああ、それと」)
「ああ、それと」
(たちあがりかけたまつうらはもういちどこしをおとし、ふところからふうとうをとりだした。)
立ち上がりかけた松浦はもう一度腰を落とし、懐から封筒を取り出した。
(そのなかからすうまいのしゃしんがでてくる。)
その中から数枚の写真が出てくる。