心霊写真 -24-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(「わたしは、さいげんかのうせいというやつをじゅうしするのでね。)
「私は、再現可能性というやつを重視するのでね。
(あなたの「かんてい」のせっとくりょくもじゅうようですが、)
あなたの「鑑定」の説得力も重要ですが、
(おなじことをおなじようにさいげんするしょうめいほうほうもたいせつなものです。)
同じことを同じように再現する証明方法も大切なものです。
(このしゃしん、いずれもしんれいしゃしんといわれているものですが、)
この写真、いずれも心霊写真と言われているものですが、
(それらについてもしんがんについて「かんてい」ねがいますよ」)
それらについても真贋について「鑑定」願いますよ」
(まつうらがししょうにていじしたしゃしんはぜんぶでよんまい。)
松浦が師匠に提示した写真は全部で四枚。
(うみべでかぞくづれがとったとおぼしききねんしゃしんには、)
海辺で家族連れが撮ったと思しき記念写真には、
(たっているおとこのこのりょうひざからさきがうつっていない。)
立っている男の子の両膝から先が写っていない。
(かっぷるがあいすくりーむをてにぴーすをしているしゃしんには、)
カップルがアイスクリームを手にピースをしている写真には、
(じょせいのほうのかたにだれのものともしれないてがのっかっている。)
女性の方の肩に誰のものとも知れない手が乗っかっている。
(いえのまえでとられたしゃしんでは、ははおやとおとこのこがうつっているそのうしろ、)
家の前で撮られた写真では、母親と男の子が写っているその後ろ、
(いえのまどにうすわらいをうかべているぶきみなおとこがうすっすらとみえている。)
家の窓に薄笑いを浮かべている不気味な男が薄っすらと見えている。
(のみかいのせきでのいちばめんをうつしたものには、もりあがるひとびとのうしろに)
飲み会の席での一場面を写したものには、盛り上がる人々の後ろに
(もやのようなものがあらわれ、そのもやがやはりひとのかおのようにみえた。)
もやのようなものが現れ、そのもやがやはり人の顔のように見えた。
(「きゅうきょつてをたどってかきあつめたいのでね、)
「急遽つてを辿ってかき集めたいのでね、
(どれもほんものかどうかわたしにもわかりません。)
どれも本物かどうか私にも分かりません。
(しかし、それがとられたはいけいはすべてはあくしています。)
しかし、それが撮られた背景はすべて把握しています。
(てきとうなことをいってもばれますよ」)
適当なことを言ってもバレますよ」
(「めいんとあわせてぜんぶでごまいか。それでほうしゅうがごばいかよ。)
「メインと合わせて全部で五枚か。それで報酬が五倍かよ。
(えらそうにいってたわりに、けいさんどおりじゃないか」)
偉そうに言ってたわりに、計算通りじゃないか」
など
(ししょうのかるくちにまつうらもおうじる。)
師匠の軽口に松浦も応じる。
(「あなたにはさらにそのばいを、といったはずです。)
「あなたにはさらにその倍を、と言ったはずです。
(しんようできないなら、いまてつききんを」)
信用できないなら、いま手つき金を」
(ふところにてをいれかけたまつうらを、ししょうがせいする。)
懐に手を入れかけた松浦を、師匠が制する。
(「かねはいらないといったはずだ。)
「金は要らないと言ったはずだ。
(わたしののぞみは、とっととこのちゃばんげきがおわって、)
わたしの望みは、とっととこの茶番劇が終わって、
(やくざのいないへいおんなにちじょうがもどってくることだけだ」)
ヤクザのいない平穏な日常が戻ってくることだけだ」
(「おれは、かねをいらないというにんげんはしんじない。)
「俺は、金を要らないという人間は信じない。
(ここまでしったにんげんをただでかいほうするとおもうか。)
ここまで知った人間をただで解放すると思うか。
(いらいははたせ。それをはたすことを、かねもとらず、どうやっておれにしんようさせる」)
依頼は果たせ。それを果たすことを、金も取らず、どうやって俺に信用させる」
(まつうらのくちょうと、そのせおうそらきがかわった。)
松浦の口調と、その背負う空気が変わった。
(へんとうしだいでは、ただではすまない、それがわかる。)
返答次第では、ただではすまない、それが分かる。
(いようなきんちょうかんのなか、ししょうがうっそりとくちをひらいた。)
異様な緊張感の中、師匠がうっそりと口を開いた。
(「わたしには、これしかないんだ。そんなにんげんのぷらいどを、おまえはわらうか?」)
「わたしには、これしかないんだ。そんな人間のプライドを、お前は笑うか?」
(とてもすんだめで、ひょうじょうで、ししょうがそういったのだ。)
とても澄んだ目で、表情で、師匠がそう言ったのだ。
(まつうらはいっしゅん、うろたえたような、そんなふうにみえた。)
松浦は一瞬、うろたえたような、そんなふうに見えた。
(だが、すぐにむひょうじょうにもどり、「いいだろう」とつぶやいた。)
だが、すぐに無表情に戻り、「いいだろう」と呟いた。
(そしてめいしをすいへいにとばすようにしてなげ、きゃっちしたししょうに)
そして名刺を水平に飛ばすようにして投げ、キャッチした師匠に
(「こんやくじまでにれんらくをいれろ」といいおいてたちあがった。)
「今夜九時までに連絡を入れろ」と言い置いて立ち上がった。
(そしてどあからでていくときに、なにかいおうとしてたちどまり)
そしてドアから出て行く時に、なにか言おうとして立ち止まり
(こちらをふりむいたあと、そしてけっきょくなにもいわずにむきなおると、)
こちらを振り向いたあと、そして結局なにも言わずに向き直ると、
(そのままさっていった。)
そのまま去って行った。
(やがてかいかにえんじんのじゅうていおんがひびき、)
やがて階下にエンジンの重低音が響き、
(そのあともすぐにどこかへいってしまった。)
その後もすぐにどこかへ行ってしまった。
(ぼくはようやくふかいいきをひとつついた。)
僕はようやく深い息を一つついた。
(ぐったりとつかれている。ただきいていただけなのに。)
ぐったりと疲れている。ただ聞いていただけなのに。
(こうちょくし、とまっていたくうきがようやくながれだしたようなきがする。)
硬直し、止まっていた空気がようやく流れ出したような気がする。
(「なんなんですか!」)
「なんなんですか!」
(ぼくはそうわめいた。)
僕はそう喚いた。
(「きえたたいぎゃくじけんだのなんだの、わけのわからないことばっかりいって、)
「消えた大逆事件だのなんだの、わけのわからないことばっかり言って、
(あげくがしんれいしゃしんですか。なんのちゃばんだっていうのです!」)
挙句が心霊写真ですか。なんの茶番だって言うのです!」
(「まあおちつけ」)
「まあ落ち着け」
(ししょうはてにしたしゃしんのこぴーにめをおとしたまま、まだみうごきをしない。)
師匠は手にした写真のコピーに目を落としたまま、まだ身動きをしない。
(「しょちょうのるすちゅうに、かってにこんないらいをひきうけて、)
「所長の留守中に、勝手にこんな依頼を引き受けて、
(どうやってもしりませんよ」)
どうやっても知りませんよ」
(「うるさいな。ちょっとしずかにしろ」)
「うるさいな。ちょっと静かにしろ」
(「だいたい、これがしんれいしゃしんですか。)
「だいたい、これが心霊写真ですか。
(こんなにはっきりうつってるじゃないですか。これはにんげんですよ、ふつうの。)
こんなにはっきり写ってるじゃないですか。これは人間ですよ、普通の。
(それがまさおかなんとかだってんなら、しんだじきか、さつえいじきか、)
それが正岡なんとかだってんなら、死んだ時期か、撮影時期か、
(どっちかがまちがってるんですよ」)
どっちかが間違ってるんですよ」