暗やみ動物園【歌詞】幼蚕文庫

(それはまちのはずれのどうぶつえん)

それは町のはずれの動物園

(わたしはおりのなかでふるえているのです)

わたしは檻の中でふるえているのです

(くらやみいくつものめがひかる)

暗やみ幾つもの目が光る

(ちかちかぱちぱち)

チカチカ パチパチ

(ここはくらやみどうぶつえん)

こゝは暗やみ動物園

(よるのてんまくをさくなきごえ)

夜の天幕を裂く鳴き声

(ほうせきのいろをしたたてがみ)

宝石の色をした鬣（たてがみ）

(うずをまくおおきなつのむちのようにちゅうをまうしっぽ)

渦を巻く大きな角 鞭のように宙を舞う尻尾

(かけめぐるくうそうがおくびょうなわたしをおどかす)

駆け巡る空想が臆病なわたしを脅かす

(じぶんでくみたてたがらくたのおりはもろい)

自分で組み立てたガラクタの檻は脆い

(せかいじゅうのなにもかもがきばをむいているきがして)

世界中の何もかもが牙をむいている気がして

(おりのなかでいきをひそめくらやみのむこうにめをこらす)

檻のなかで息をひそめ暗やみの向こうに目を凝らす

(あっちでほえてこっちがうなりこんやもちっともねむれない)

あっちで吠えてこっちが唸り今夜もちっとも眠れない

(ぼうえんきょうはおりのそとでこんやもほしがみえないの)

望遠鏡は檻の外で今夜も星が見えないの

(そろりさしだしたてにつめたいおみずをかけられました)

そろり差し出した手につめたいおみずを掛けられました

(わたしがいけないの？)

わたしがいけないの？

(けだものはわたしなの？)

けだものはわたしなの？

(おりのそとのけものたちがほんとうはうつくしいことを)

檻の外の獣たちが本当は美しいことを

(しっているのけれどこわいの)

知っているの けれどこわいの

(くらやみのむこうになにかがある)

暗やみの向こうに何かゞある

(ねえどうしたらゆるしてくださる)

ねえ如何したら許してくださる

(おしおきをしてはくれませんか)

御仕置きをしては呉れませんか

(おりのかぎはどこにかくしただろう)

檻の鍵はどこに隠したゞろう

(あこがれたはなのとげがいたくてじぶんをとじこめたの)

あこがれた花の棘が痛くてじぶんをとじこめたの

(おりのそとのけものたちがゆかいなおんがくのなかで)

檻の外の獣たちが愉快な音楽の中で

(ひっかきあってあいしあってわたしもそこでおどれるかしら)

引っ掻き合って愛し合ってわたしも其処で踊れるかしら

(うすよごれたはだしのむすめをだれもがゆびさしわらうだろう)

薄汚れた裸足の娘を誰もが指差し嗤うだろう

(けれどおりのそとにでたのなら)

けれど檻のそとに出たのなら

(たよりないあしでもあるきだせる)

たより無い肢（あし）でも歩き出せる

(こわいこわいくらやみ)

こわいこわいくらやみ

(わたしはどこでもうたえるわ)

わたしは何処でも歌えるわ