月蝕
作:夢野 久作
「……」はタイピングしません、抜かしています。
関連タイピング
-
2nd Full Album『エルマ』収録曲
プレイ回数85 歌詞かな835打 -
上級者向けタイピングゲームだよ
プレイ回数5.4万 長文かな822打 -
打ち切れたら天才だ
プレイ回数7.9万 歌詞540打 -
テトリスサビ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
プレイ回数25万 歌詞かな167打 -
五十音を打ち終わる時間で勝負!あなたは何秒!?
プレイ回数822万 短文かな137打 -
めっちゃいい曲....
プレイ回数6.5万 歌詞かな200打 -
30秒でどこまで打てるのか?全部打てたらチーター!!
プレイ回数8188 歌詞30秒 -
日常系です!ちょっと難しめですっ!
プレイ回数6905 長文かな887打
問題文
ふりがな非表示
ふりがな表示
(はがねのようにすみわたるおおぞらのまんなかで)
鋼のように澄みわたる大空のまん中で
(つきがすすりないている。)
月がすすり泣いている。
(けがらわしいちきゅうのかげが)
……けがらわしい地球の陰影(かげ)が
(じぶんのかおにうつるとて)
自分の顔にうつるとて……
(みぶるししていやがっている。)
……身ぶるしして嫌がっている。
(しかし)
……しかし……
(のがれられぬくらいうんめいは)
逃れられぬ暗い運命は……
(こくこくにかのじょにせまってくる。)
刻々に彼女に迫って来る。
(おおぞらのただなかに)
大空のただ中に……
(はじまったげっしょくが)
……はじまった……月蝕が……
(かのじょはいつとなくしそうをあらわしてきた。)
彼女はいつとなく死相をあらわして来た。
(みずみずしいなまじろいほほ)
みずみずしい生白い頬……
(めにみえぬかみけを、ながながとちへいせんまでひきはえた)
……目に見えぬ髪毛を、長々と地平線まで引きはえた……
(それがつめたくうつくしくすきとおる)
それが冷たく……美しく……透きとおる……
(こめかみのあたりからすいきがひっそりとしたたる。)
コメカミのあたりから水気(すいき)が……ヒッソリとしたたる。
(かのじょはもうしかたがないとあきらめて)
彼女はもう……仕方がないとあきらめて
(くらいみにくいうんめいのてに)
暗い……醜い運命の手に……
(じぶんのびをまかせてしまうつもりらしい。)
自分の美をまかせてしまうつもりらしい。
(あごのあたりがすこしばかりきりかかれる。)
顋(あご)のあたりがすこしばかり切り欠かれる。
(くろいちがむるむるとわく。)
……黒い血がムルムルと湧く。
など
(くらいなまぐさいにおいがおおぞらにながれだす。)
……暗い腥(なまぐさ)いにおいが大空に流れ出す。
(それがいちめんにちへいせんまでひろがってゆく。)
……それが一面に地平線まで拡がってゆく。
(かのじょをとりまくほしのひかりがぎらぎらとさえかえった。)
彼女を取巻く星の光がギラギラと冴えかえった。
(かのじょのまぶたがひとしきりふるえて)
彼女の瞼が一しきりふるえて
(やがてちからなくくろずんでくる。)
やがて力なく黝(くろ)ずんで来る。
(はなのよこにくろいちのかたまりがもりあがる。)
鼻の横に黒い血の塊が盛り上る。
(ふかくきりこまれたやいばのかげに)
……深く斬込まれた刃の蔭に
(あかちゃけたにくがひくひく。)
赤茶気た肉がヒクヒク。
(せかいはくらくなった。)
世界は暗くなった。
(すべてのせいぶつはなまりのようにおもたく)
すべての生物は鉛のように重たく
(はりのようにいたいたしいこころをじっといだいてうごかなくなった。)
針のように痛々しい心をジッと抱いて動かなくなった。
(けれどもくらいこうてつよりもよくきれるえんけいのやいばは)
けれども暗い……鋼鉄よりもよく切れる円形の刃は
(かのじょのあおざめたよこがおをなおもずんずんときりこんでゆく。)
彼女の青ざめた横顔をなおもズンズンと斬り込んでゆく。
(そこからあふれでるくらいなまぐさいにおいにすべてはおぼれこんでゆく。)
そこから溢れ出る暗い……腥いにおいにすべては溺れ込んでゆく。
(やまもうみももりもいえもどうろも)
……山も……海も……森も……家も……道路も……
(そこいらからみあげているにんげんたちも)
……そこいらから見上げている人間たちも……
(そのなかにただひとつのこるしろいひかり)
その中にただ一つ残る白い光……
(かのじょのひたいとはなすじがもうすこしで)
彼女の額と鼻すじが……もうすこしで……
(くろいやいばのかげにおおわれそうになった。)
黒い刃の蔭に蔽(おお)われそうになった。
(そらいちめんのおびただしいほしがちいさなこえでささやきあって)
空一面の夥(おびただ)しい星が小さな声で囁き合って
(またひっそりとしずまった。)
又ヒッソリと静まった。
(いんさんなさいごのとき)
陰惨な最後の時……
(かおをおおいつくすちのしたにかんねんしてとじていたしろいまぶたを)
顔を蔽いつくす血の下に観念して閉じていた白い瞼を
(ぱっちりとかのじょはみひらいた。)
パッチリと彼女は見開いた。
(あんがいにへいきなかおでげかいのひとびとをながしめにみまわした。)
案外に平気な顔で下界の人々を流し眼に見まわした。
(にっこりとわらった。)
ニッコリと笑った。
(ほほほほほほほほ)
……ホホホホホホホホ……
(これはおしばいなのよ。)
これはお芝居なのよ。
(おおぞらのかげとひかりの)
……大空の影と光の……。
(だからわたしはいたくもくるしくも)
だから妾(わたし)は痛くも苦しくも……
(なんともないのよ)
……何ともないのよ……
(そうしてもうじきおしまいになるのよ。)
そうしてもうじきおしまいになるのよ。
(でもみなさんほんとになすったでしょう。)
……でも皆さんホントになすったでしょう。
(あたしめいゆうでしょうおほほほほほ)
……あたし名優でしょう……オホホホホホ……………
(ではさようなら)
ではサヨウナラ……
(みなさんおやすみなさい。)
みなさんおやすみなさい。
(ほほほほほ)
……ホホホホホ…………
(ほほほほほ)
ホホホホホ……………………
