ごんぎつね【4】
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問題文
(つきのいいばんでした。ごんは、ぶらぶらあそびにでかけました。)
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。
(なかやまさまのおしろのしたをとおってすこしいくと、ほそいみちのむこうから、)
中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、
(だれかくるようです。はなしごえがきこえます。ちんちろりん、ちんちろりんとまつむしが)
だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が
(ないています。ごんは、みちのかたがわにかくれて、じっとしていました。)
鳴いています。ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。
(はなしごえはだんだんちかくなりました。それはひょうじゅうとかすけというおひゃくしょうでした。)
話声はだんだん近くなりました。それは兵十と加助というお百姓でした。
(「そうそう、なあかすけ」と、ひょうじゅうがいいました。)
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。
(「ああん?」)
「ああん?」
(「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」)
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
(「なにが?」)
「何が?」
(「おっかあがしんでからは、だれだかしらんが、おれにくりやまつたけなんかを、)
「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、
(まいにちまいにちくれるんだよ」)
まいにちまいにちくれるんだよ」
(「ふうん、だれが?」)
「ふうん、だれが?」
(「それがわからんのだよ。おれのしらんうちに、おいていくんだ」)
「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
(ごんは、ふたりのあとをつけていきました。)
ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
(「ほんとかい?」)
「ほんとかい?」
(「ほんとだとも。うそとおもうなら、あしたみにこいよ。そのくりをみせてやるよ」)
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。その栗を見せてやるよ」
(「へえ、へんなこともあるもんだなあ」)
「へえ、へんなこともあるもんだなア」
(それなり、ふたりはだまってあるいていきました。)
それなり、二人はだまって歩いていきました。
(かすけがひょいと、うしろをみました。ごんはびくっとして、ちいさくなって)
加助がひょいと、後ろを見ました。ごんはびくっとして、小さくなって
(たちどまりました。かすけはごんにはきがつかないで、)
たちどまりました。加助はごんには気がつかないで、
(そのままさっさとあるきました。きちべえというおひゃくしょうのいえまで)
そのままさっさとあるきました。吉兵衛(きちべえ)というお百姓の家まで
(くると、ふたりはそこへはいっていきました。ぽんぽんぽんと)
来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンと
(もくぎょのおとがしています。まどのしょうじにあかりがさしていて、)
木魚の音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、
(おおきなぼうずあたまがうつってうごいていました。)
大きな坊主頭がうつって動いていました。
(ごんは「おねんぶつがあるんだな」とおもいながら)
ごんは「おねんぶつがあるんだな」と思いながら
(いどのそばにしゃがんでいました。しばらくすると、またさんにんほど、)
井戸のそばにしゃがんでいました。しばらくすると、また三人ほど、
(ひとがつれだってきちべえのいえへはいっていきました。)
人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。
(おきょうをよむこえがきこえてきました。)
お経を読む声がきこえて来ました。
