ごんぎつね【完】

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問題文
(ごんは、おねんぶつがすむまで、いどのそばにしゃがんでいました。)
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。
(ひょうじゅうとかすけは、またいっしょにかえっていきます。ごんは、ふたりのはなしを)
兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話を
(きこうとおもって、ついていきました。ひょうじゅうのかげぼうしをふみふみいきました。)
きこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。
(おしろのまえまできたとき、かすけがいいだしました。)
お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。
(「さっきのはなしは、きっと、そりゃあ、かみさまのしわざだぞ」)
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」
(「えっ?」と、ひょうじゅうはびっくりして、かすけのかおをみました。)
「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。
(「おれは、あれからずっとかんがえていたが、どうも、そりゃ、にんげんじゃない、)
「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、
(かみさまだ、かみさまが、おまえがたったひとりになったのをあわれにおもわっしゃって、)
神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、
(いろんなものをめぐんでくださるんだよ」)
いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
(「そうかなあ」)
「そうかなあ」
(「そうだとも。だから、まいにちかみさまにおれいをいうがいいよ」)
「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」
(「うん」)
「うん」
(ごんは、へえ、こいつはつまらないなとおもいました。)
ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。
(おれが、くりやまつたけをもっていってやるのに、)
おれが、栗やまつたけを持っていってやるのに、
(そのおれにはおれいをいわないで、かみさまにおれいをいうんじゃあ、)
そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、
(おれは、ひきあわないなあ。)
おれは、引き合わないなあ。
(そのあくるひもごんは、くりをもって、ひょうじゅうのいえへでかけました。)
そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。
(ひょうじゅうはものおきでなわをなっていました。それでごんはいえのうらぐちから、)
兵十は物置で縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、
(こっそりなかへはいりました。そのときひょうじゅうは、ふとかおをあげました。)
こっそり中へはいりました。そのとき兵十は、ふと顔をあげました。
(ときつねがいえのなかへはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがった)
と狐が家の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがった
(あのごんぎつねめが、またいたずらをしにきたな。)
あのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
(「ようし。」)
「ようし。」
(ひょうじゅうはたちあがって、なやにかけてあるひなわじゅうをとって、かやくをつめました。)
兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。
(そしてあしおとをしのばせてちかよって、いまとぐちをでようとするごんを、)
そして足音をしのばせてちかよって、今戸口を出ようとするごんを、
(どんと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。)
ドンと、うちました。ごんは、ばたりとたおれました。
(ひょうじゅうはかけよってきました。いえのなかをみると、どまにくりが、)
兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、土間に栗が、
(かためておいてあるのがめにつきました。)
かためておいてあるのが目につきました。
(「おや」とひょうじゅうは、びっくりしてごんにめをおとしました。)
「おや」と兵十は、びっくりしてごんに目を落しました。
(「ごん、おまえだったのか。いつもくりをくれたのは」)
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
(ごんは、ぐったりとめをつぶったまま、うなずきました。)
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
(ひょうじゅうはひなわじゅうをばたりと、とりおとしました。)
兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。
(あおいけむりが、まだつつぐちからほそくでていました。)
青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。