先生 後編 -9-

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師匠シリーズ
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問題文

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(ぼくのかぜはただのかぜだった。かんせんしょうのおそろしいびょうきなどではなかった。)

僕の風邪はただの風邪だった。感染症の恐ろしい病気などではなかった。

(すっかりからだがよくなってもぼくはあまりそとにはでなかった。)

すっかり身体が良くなっても僕はあまり外には出なかった。

(いえにこもってしゅくだいをやり、ぜんぶかたづけてしまうとこんどは)

家にこもって宿題をやり、全部片付けてしまうと今度は

(こうみんかんにあるとしょしつでほんをかりてよんだ。)

公民館にある図書室で本を借りて読んだ。

(しげちゃんやびょういんからもどったたろちゃんなんかがあそびにさそってきても、)

シゲちゃんや病院から戻ったタロちゃんなんかが遊びに誘ってきても、

(あんまりきがのらなかった。)

あんまり気が乗らなかった。

(それでもだんぼーるでつくったすーぱーかーにのりこんであそぶなかまたちを)

それでもダンボールで作ったスーパーカーに乗り込んで遊ぶ仲間たちを

(みていると、みんなあんまりできがわるいのでいてもたってもいられなくなり、)

見ていると、みんなあんまり出来が悪いので居ても立ってもいられなくなり、

(かっこいいふぇらーりをさくせいしてさんせんした。)

カッコいいフェラーリを作成して参戦した。

(ただぶつけてあそぶだけなのだが、ふぇらーりのかがやくぼでぃに)

ただぶつけて遊ぶだけなのだが、フェラーリの輝くボディに

(おそれをなしたやつらがにげまわるのはきもちがよかった。)

恐れをなしたやつらが逃げ回るのは気持ちが良かった。

(さいごはしげちゃんといっきうちになってとうとうまけてしまった。)

最後はシゲちゃんと一騎打ちになってとうとう負けてしまった。

(しげちゃんのぼでぃには、だんぼるぎーに・かうんたっくと)

シゲちゃんのボディには、ダンボルギーニ・カウンタックと

(まじっくいんきでかいてあった。やっぱりかなわない。)

マジックインキで書いてあった。やっぱりかなわない。

(そんなふうにぼくはすこしずつげんきになっていったけれど、)

そんな風に僕は少しずつ元気になっていったけれど、

(ちんじゅのもりにはちかづかなかった。)

鎮守の森には近づかなかった。

(「もういくでない」とじいちゃんにいわれたこと、そしてせんせいじしんに)

「もう行くでない」とじいちゃんに言われたこと、そして先生自身に

(きてはいけないといわれたことを、じぶんへのいいわけにしていたのかもしれない。)

きてはいけないと言われたことを、自分への言い訳にしていたのかも知れない。

(かんがえないようにしてもなつはおわる。ぼくにもかえるべきほんとうのいえがあり、)

考えないようにしても夏は終わる。僕にも帰るべき本当の家があり、

(がっこうがある。このままめをとじ、みみをふさいだままにはできなかった。)

学校がある。このまま目を閉じ、耳を塞いだままには出来なかった。

など

(けじめだとおもったのだ。あんがいりちぎなこどもだったらしい。)

ケジメだと思ったのだ。案外律儀な子どもだったらしい。

(あしたにもおせわになったしげちゃんのいえからおいとまするというひ。)

明日にもお世話になったシゲちゃんの家からおいとまするという日。

(ぼくはちんじゅのもりへひとりではいっていった。)

僕は鎮守の森へ一人で入っていった。

(あいかわらずみみのいたくなるようなせみしぐれのなか、うすぐらいはかげのしたを)

あいかわらず耳の痛くなるような蝉時雨の中、薄暗い葉影の下を

(もくもくとあるく。じんじゃのさんどうをよこめに、みちのおくへとあしをすすめる。)

黙々と歩く。神社の参道を横目に、道の奥へと足を進める。

(あめがほとんどふらないので、やわらかいつちについたあしあとが)

雨がほとんど降らないので、柔らかい土についた足跡が

(きたならしくのこっているのがめにつく。)

汚らしく残っているのが目に付く。

(みんなぼくのあしあとのようだった。ぼくはそれをみながらおもいだす。)

みんな僕の足跡のようだった。僕はそれを見ながら思い出す。

(あのひ、はじめてこのもりをぬけたとき、)

あの日、初めてこの森を抜けた時、

(じんじゃよりむこうにはだれのあしあともついていなかったことを。)

神社より向こうには誰の足跡もついていなかったことを。

(よくかんがえるとおかしい。せんせいがいっていたように、ぼくらのむらと)

よく考えるとおかしい。先生が言っていたように、僕らの村と

(もりのむこうのしゅうらくとのあいだにはこのちんじゅのもりをぬけるほかにみちがないのであれば、)

森の向こうの集落との間にはこの鎮守の森を抜けるほかに道がないのであれば、

(ひとのあしあとがたくさんついているはずなのだ。)

人の足跡がたくさんついているはずなのだ。

(やくばだってゆうびんきょくだってもりのこっちがわにしかないのだから。)

役場だって郵便局だって森のこっち側にしかないのだから。

(そんなほころびをみつけられないまま、ぼくはしらずしらずのうちに)

そんな綻びを見つけられないまま、僕は知らず知らずのうちに

(このよのうらがわにあしをふみいれていたのだろうか。)

この世の裏側に足を踏み入れていたのだろうか。

(うつむきかげんでもくもくとあるきつづけ、くらいきのあーちをぬけるとあおぞらがずじょうにひろがった。)

俯き加減で黙々と歩き続け、暗い木のアーチを抜けると青空が頭上に広がった。

(おなじだ。みどりのあぜみち。はたけ。かえるのなきごえ。そらをよこぎるつばめのはねのきせき。)

同じだ。緑の畦道。畑。蛙の鳴き声。空を横切るツバメの羽の軌跡。

(めのまえのこうけいにいっしゅんめをほそめて、そしてやがてきづく。)

目の前の光景に一瞬目を細めて、そしてやがて気づく。

(あぜみちにざっそうがおいしげっていること。はたけにもざっそうがおいしげっていること。)

畦道に雑草が生い茂っていること。畑にも雑草が生い茂っていること。

(かえるのなきごえはずっとちいさいこと。やまのちゅうふくにみえるみんかは、)

蛙の鳴き声はずっと小さいこと。山の中腹に見える民家は、

(やねにあながあきとてもひとがすんでいるようにはみえないこと。)

屋根に穴が開きとても人が住んでいるようには見えないこと。

(そしておなじことがひとつ。でんしんばしらもでんせんも、どこにもみえない。)

そして同じことが一つ。電信柱も電線も、どこにも見えない。

(ぼくらふらふらとあぜみちをあるく。からまるくさをふみつけながら、)

僕らふらふらと畦道を歩く。絡まる草を踏みつけながら、

(さかみちのまえについた。なだらかにつづき、みあげるとそのむこうには)

坂道の前に着いた。なだらかに続き、見上げるとその向こうには

(ふるぼけたかわらやねがある。あせをふりはらいながらぼくはさかをのぼる。)

古ぼけた瓦屋根がある。汗を振り払いながら僕は坂を登る。

(とちゅうでふりかえり、しゅうらくをみおろす。だれもいない。)

途中で振り返り、集落を見下ろす。誰もいない。

(うごくもののかげといえばつばめばかりだ。ところどころにしろいはながさいている。)

動くものの影といえばツバメばかりだ。所々に白い花が咲いている。

(ぼくはひろばにつく。こうていとよばれてはじめてそうであるときづいたはずのばしょは、)

僕は広場に着く。校庭と呼ばれて初めてそうであると気付いたはずの場所は、

(いまはそういわれてもわからない。くちたもくへんがさんらんするあれはてたひろばだった。)

今はそう言われても分からない。朽ちた木片が散乱する荒れ果てた広場だった。

(そしてそのむこう。ぼくがまいにちみあげていたこうしゃはくろくへんしょくして)

そしてその向こう。僕が毎日見上げていた校舎は黒く変色して

(ひどくゆがんでいる。かべにはいたるところにあながあき、)

酷く歪んでいる。壁にはいたる所に穴が開き、

(ささくれだったもくへんがぎざぎざにつきでている。)

ささくれ立った木片がギザギザに突き出ている。

(むかってひだりした、ちいさなおもやがあったばしょにはこげたようなあとと、)

向かって左下、小さな母屋があった場所には焦げたような跡と、

(がれきのざんがいがあるだけだった。)

瓦礫の残骸があるだけだった。

(ぼくはめのまえのこうけいがいみするもののことをかんがえるよゆうもなく、)

僕は目の前の光景が意味するもののことを考える余裕もなく、

(ふらふらとむゆうびょうのようにげんかんぐちにすいこまれていった。)

ふらふらと夢遊病のように玄関口に吸い込まれていった。

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