桜雨 -10-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(ひるまはやけにかんさんとしているいんしょうだ。)
昼間はやけに閑散としている印象だ。
(とおりにめんしたのみやらしいみせにはほとんどしゃったーがおりている。)
通りに面した飲み屋らしい店にはほとんどシャッターが下りている。
(そんななか、くたびれたじゃんぱーをきたちゅうねんのおとこがみちのまんなかにたって、)
そんな中、くたびれたジャンパーを着た中年の男が道の真ん中に立って、
(つうこうにんをじろじろとみていた。)
通行人をじろじろと見ていた。
(いかがわしいみせのよびこみにしても、こえかけさえしていない。)
いかがわしい店の呼び込みにしても、声掛けさえしていない。
(たまにみかけるが、いったいああいうひとはこのまちでどんなやくわりがあると)
たまに見かけるが、いったいああいう人はこの街でどんな役割があると
(いうのだろう。かいまみるおとなしゃかいは、まだまだふしぎなことばかりだった。)
いうのだろう。垣間見る大人社会は、まだまだ不思議なことばかりだった。
(それにしてもざびえるはどうしてこんなところをうろうろしているのだろう。)
それにしてもザビエルはどうしてこんなところをうろうろしているのだろう。
(ほどうならげーむせんたーでもじゅんかいしているほうがげんじつてきだ。)
補導ならゲームセンターでも巡回している方が現実的だ。
(こんなばしょでおこなわれるふりょうこういなど、せいとのなかのごくひとにぎりだろうに。)
こんな場所で行われる不良行為など、生徒の中のごく一握りだろうに。
(ふと、よーこにきかされたむせきにんなうわさばなしがみみのおくでさいせいされる。)
ふと、ヨーコに聞かされた無責任な噂話が耳の奥で再生される。
(ざびえるのとくしゅなせいへきのことだ。じょしこうせいがすきだなどという。)
ザビエルの特殊な性癖のことだ。女子高生が好きだなどという。
(わたしにはそんなふうにはみえなかった。)
私にはそんな風には見えなかった。
(あのらくがきのあいあいかさのほうがよほどしんぴょうせいがある。)
あの落書きの相合傘の方がよほど信憑性がある。
(しかし。このいやにくうそなひるまのほてるがいをあるいていると、)
しかし。この嫌に空疎な昼間のホテル街を歩いていると、
(なんだかへんなくうそうがわいてくるのだった。)
なんだか変な空想が湧いてくるのだった。
(かみをさわられそうになったことをおもいだし、ふかいなきもちになる。)
髪を触られそうになったことを思い出し、不快な気持ちになる。
(といって、ざびえるじしんがしんそこきらいなわけではない。)
と言って、ザビエル自身が心底嫌いなわけではない。
(そんなことをおもいながらざびえるのかおをおもいうかべる。)
そんなことを思いながらザビエルの顔を思い浮かべる。
(ただ、へんなうわさをたてられたちゅうがくのときのくらいおもいでがよみがえるのがいやだった。)
ただ、変な噂を立てられた中学の時の暗い思い出が蘇るのが嫌だった。
など
(「ねえ、ちょっと」)
「ねえ、ちょっと」
(ぼうっとしていたときに、ふいによこからこえをかけられておどろいた。)
ぼうっとしていた時に、ふいに横から声をかけられて驚いた。
(「ここでなにしてるの。そのせいふく、じょしこうだよね」)
「ここでなにしてるの。その制服、女子校だよね」
(わかいおとこだった。こじゃれたふくをきていて、かみはきいろくそめていた。)
若い男だった。小洒落た服を着ていて、髪は黄色く染めていた。
(「べつに」)
「別に」
(なるべくむひょうじょうであしらおうとしたが、おとこはいやにからだをちかづけてくる。)
なるべく無表情であしらおうとしたが、男は嫌に身体を近づけてくる。
(「ねえ」)
「ねえ」
(「べつに」)
「別に」
(そういってはなれようとするが、しつこかった。)
そう言って離れようとするが、しつこかった。
(ばしょがばしょだけに、すこしこわくなる。)
場所が場所だけに、少し怖くなる。
(しゅういのめもかなぐりすてて、はしってにげたほうがいいのか、いっしゅんまよった。)
周囲の目もかなぐり捨てて、走って逃げた方がいいのか、一瞬迷った。
(しかしそのつぎのしゅんかん、はいごからするどいこえがあがった。)
しかしその次の瞬間、背後から鋭い声が上がった。
(「なにしてるっ」)
「なにしてるっ」
(おどろいてふりむくと、すこしまえにみうしなったざびえるがいた。)
驚いて振り向くと、少し前に見失ったザビエルがいた。
(そのけんまくにおどろいて、わかいおとこはへへへ、とばつのわるそうなかわいたわらいをのこして)
その剣幕に驚いて、若い男はへへへ、とバツの悪そうな乾いた笑いを残して
(さっていった。)
去っていった。
(たすかった、とおもうとどうじに、やっぱりいた、といういやなかんそうがのうりをよぎった。)
助かった、と思うと同時に、やっぱりいた、という嫌な感想が脳裏をよぎった。
(「だいじょうぶか」)
「大丈夫か」
(そういってちかよってくるのが、さっきのおとことおなじくらいふかいで、)
そう言って近寄ってくるのが、さっきの男と同じくらい不快で、
(おもわずからだをかたくする。)
思わず身体を硬くする。
(「なにかされなかったか」)
「なにかされなかったか」
(だいいっせいが、だからいっただろう、)
第一声が、だから言っただろう、
(というおしつけがましいせっきょうではなかったのがゆいいつのすくいか。)
という押し付けがましい説教ではなかったのが唯一の救いか。
(「はい」そうへんじをしたあとの、だいにこえは「だからいっただろう」だった。)
「はい」そう返事をした後の、第二声は「だから言っただろう」だった。
(そしてうんざりしたわたしにむかって、だいさんせいがつづいた。)
そしてうんざりした私に向かって、第三声が続いた。
(「なにかかわされそうにならなかったか」)
「なにか買わされそうにならなかったか」
(きんちょうをおびたこえに、どきりとする。)
緊張を帯びた声に、ドキリとする。
(かわされる?)
買わされる?
(なにかのかげがあたまのなかをはしった。しんぞうがたかなりはじめる。)
なにかの影が頭の中を走った。心臓が高鳴り始める。
(「かうって、なにを?」)
「買うって、なにを?」
(「なにって、その・・・・・」)
「なにって、その・・・・・」
(ざびえるはこんわくしたかおで、くちごもった。)
ザビエルは困惑した顔で、口ごもった。
(わたしはちょっかんにしたがい、じぶんのすかーとのぽけっとにはいっているものをとりだした。)
私は直感に従い、自分のスカートのポケットに入っているものを取り出した。
(「これですか」)
「これですか」
(そのおれんじしょくのふくろをみたしゅんかん、ざびえるのかおいろがかわった。)
そのオレンジ色の袋を見た瞬間、ザビエルの顔色が変わった。
(なにかいいだそうとするまえに、わたしはそのきせんをせいする。)
なにか言い出そうとする前に、私はその機先を制する。