古今和歌集3
和歌は日本語の美の極地
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問題文
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(つれづれのながめにまさるなみだがわそでのみぬれてあふよしもなし)
つれづれのながめにまさる涙河袖のみ濡れてあふよしもなし
(あさみこそそではひつらめなみだがわみさへながるときかばたのまむ)
浅みこそ袖はひつらめ涙河身さへ流ると聞かばたのまむ
(よるべなみみをこそとおくへだてつれこころはきみがかげとなりにき)
よるべなみ身をこそ遠くへだてつれ心は君が影となりにき
(いたづらにゆきてはきぬるものゆえにみまくほしさにいざなはれつつ)
いたづらに行きては来ぬるものゆゑに見まくほしさにいざなはれつつ
(あはぬよのふるしらゆきとつもりなばわれさへともにけぬべきものを)
あはぬ夜のふる白雪とつもりなば我さへともに消ぬべきものを
(あきののにささわけしあさのそでよりもあはでこしよぞひぢまさりける)
秋の野に笹わけし朝の袖よりも逢はでこし夜ぞひぢまさりける
(みるめなきわがみをうらとしらねばやかれなであまのあしたゆくるる)
見るめなきわが身を浦と知らねばやかれなで海人の足たゆくくる
(あはずしてこよひあけなばはるのひのながくやひとをつらしとおもはむ)
逢はずして今宵明けなば春の日の長くや人をつらしと思はむ
(あふことのなぎさにしよるなみなればうらみてのみぞたちかへりける
)
逢ふことのなぎさにしよる浪なれば怨みてのみぞ立ち帰りける
(かねてよりかぜにさきだつなみなれやあふことなきにまだきたつらむ)
かねてより風にさきだつ浪なれや逢ふ事なきにまだき立つらむ
(みちのくにありといふなるなとりがわなきなとりてはくるしかりけり)
みちのくに有りといふなる名取川なき名とりてはくるしかりけり
(あやなくてまだきなきなのたつたがわわたらでやまむものならなくに)
あやなくてまだきなきなの立田河渡らでやまむ物ならなくに
(ひとはいさわれはなきなのおしければむかしもいまもしらずとをいはむ)
人はいさ我は無き名の惜しければ昔も今も知らずとをいはむ
(こりずまにまたもなきなはたちぬべしひとにくからぬよにしすまへば)
懲りずまに又もなき名は立ちぬべし人憎からぬ世にしすまへば
(ひとしれぬわがかよひぢのせきもりはよひよひごとにうちもねななむ)
人知れぬわが通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ
(しのぶれどこひしきときはあしひきのやまよりつきのいでてこそくれ)
しのぶれど恋ひしき時はあしひきの山より月のいでてこそくれ
(こひこひてまれにこよひぞあふさかのゆふつけとりはなかずもあらなむ
)
恋ひ恋ひて稀に今宵ぞ相坂の木綿付け鳥は鳴かずもあらなむ
(あきのよのなのみなりけりあふといへばことぞともなくあけぬるものを)
秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを
(ながしともおもひぞはてぬむかしよりあふひとからのあきのよなれば)
長しとも思ひぞはてぬ昔より逢ふ人からの秋の夜なれば
(あけぬとていまはのこころつくからになどいひしらぬおもひそふらむ)
あけぬとて今はの心つくからになどいひしらぬ思ひそふらむ
など
(あけぬとてかへるみちにはこきたれてあめもなみだもふりそぼちつつ)
明けぬとてかへる道にはこきたれて雨も涙もふりそぼちつつ
(たまくしげあけばきみがなたちぬべみよふかくこしをひとみけむかも)
玉匣あけば君が名立ちぬべみ夜深くこしを人見けむかも
(みづぐきのをかのやかたにいもとあれどねてのあさけのしものふりはも)
水茎の岡の館に妹とあれと寝ての朝けの霜のふりはも
(しはつやまうちいでてみればかさゆひのしまこぎかくるたななしをぶね)
四極山打ち出でて見れば笠結の島漕ぎ隠る棚無し小舟
(みちのくのあさかのぬまのはなかつみかつみるひとにこひやわたらむ)
みちのくの安積の沼の花勝見かつ見る人に恋ひやわたらむ
(あひみずはこひしきこともなからましおとにぞひとをきくべかりける)
逢ひ見ずは恋ひしきこともなからまし音にぞ人を聞くべかりける
(きみといへばみまれみずまれふじのねのめづらしげなくもゆるわがこひ)
君といへば見まれ見ずまれ富士の嶺の珍しげなく燃ゆるわが恋
(ゆめにだにみゆとはみえじあさなあさなわがおもかげにはづるみなれば)
夢にだに見ゆとは見えじ朝な朝なわが面影に恥づる身なれば
(いしまゆくみずのしらなみたちかへりかくこそはみめあかずもあるかな)
石間行く水の白浪立ち帰りかくこそは見めあかずもあるかな
(こころをぞわりなきものとおもひぬるみるものからやこひしかるべき)
心をぞわりなき物と思ひぬる見るものからや恋ひしかるべき
(おもふてふことのはのみやあきをへていろもかはらぬものにはあるらむ)
思ふてふ言の葉のみや秋をへて色もかはらぬ物にはあるらむ
(きみがこむわれやゆかむのいさよひにまきのいたどもささずねにけり)
君や来む我や行かむの十六夜に槙の板戸もささず寝にけり
(みやぎののもとあらのこはぎつゆをおもみかぜをまつごときみをこそまて)
宮城野のもとあらの小萩露をおもみ風を待つごと君をこそ待て
(あなこひしいまもみてしがやまがつのかきほにさけるやまとなでしこ)
あな恋ひし今も見てしが山がつのかきほに咲ける大和撫子
(つのくにのなにはおもはずやましろのとはにあひみむことをのみこそ)
つのくにのなにはおもはず山城のとはにあひ見むことをのみこそ
(しきしまややまとにはあらぬからころもころもへずしてあふよしもがな)
しきしまややまとにはあらぬ唐衣ころもへずしてあふよしもがな
(こひしとはたがなづけなむことならむしぬとぞただにいふべかりける)
恋しとは誰がなづけけむ言ならむ死ぬとぞただにいふべかりける
(みよしののおほかわのべのふじなみのなみにおもはばわがこひめやは)
み吉野のおほ河のべの藤波のなみに思はばわが恋めやは
(あまのはらふみとどろかしなるかみもおもふなかをばさくるものかは)
天の原ふみとどろかし鳴る神も思ふなかをば裂くるものかは
(あずさゆみひきののつづらすえつひにわがおもふひとにことのしげけむ)
梓弓ひき野のつづら末つひにわが思ふ人に事のしげけむ
(なつびきのてびきのいとをくりかへしことしげくともたえむとおもふな)
夏引きの手引きの糸を繰り返し言茂くとも絶えむと思ふな
(さとびとのことはなつののしげくともかれゆくきみにあはざらめやは)
里人のことは夏野のしげくともかれ行く君に逢はざらめやは
(かずかずにおもひおもはずとひがたみみをしるあめはふりぞまされる)
かずかずに思ひ思はずとひがたみ身をしる雨はふりぞまされる
(おほぬさのひくてあまたになりぬればおもへどえこそたのまざりけれ)
大幣の引くてあまたになりぬれば思へどえこそたのまざりけれ
(おほぬさとなにこそたてれながれてもつひによるせはありてふものを)
大幣と名にこそたてれ流れてもつひによる瀬はありてふものを
(すまのあまのしほやくけぶりかぜをいたみおもはぬかたにたなびきにけり)
須磨の海人の塩焼く煙風をいたみ思はぬ方にたなびきにけり
(たまかづらはふきあまたになりぬればたえぬこころのうれしげもなし)
玉鬘はふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし
(いつはりのなきよなりせばいかばかりひとのことのはうれしからまし)
いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言の葉はうれしからまし
(いつはりとおもふものからいまさらにたがまことをかわれはたのまむ)
いつはりと思ふものから今さらにたがまことをか我はたのまむ
(あきかぜにやまのこのはのうつろへばひとのこころもいかがとぞおもふ)
秋風に山の木の葉のうつろへば人の心もいかがとぞ思ふ
(せみのこえきけばかなしななつごろもうすくやひとのならむとおもへば)
蝉のこゑ聞けばかなしな夏衣うすくや人のならむと思へは
(わがかどのいたいのしみずさととほみひとしくまねばくさおひにけり)
わが門の板井の清水里遠み人し汲まねば水草生ひにけり
(みまさかやくめのさらやまさらさらにわがなはたてじよろづよまでに)
美作や久米の佐良山さらさらにわが名はたてじよろづ代までに
(みののくにせきのふぢがわたえずしてきみにつかへむよろずよまでに)
美濃のくに関の藤河たえずして君につかへむ万代までに
(みちのくはいづくはあれどしほがまのうらこぐふねのつなでかなしも)
陸奥はいづくはあれど塩竈の浦漕ぐ舟の綱手かなしも
(わがせこをみやこにやりてしほがまのまがきのしまのまつぞこひしき)
わか背子を都にやりて塩竈の籬の島の松ぞこひしき
(つくばねのこのもかのもにかげはあれどきみがみかげにますかげななし)
筑波嶺の木の下かのもに影はあれど君が御影にます影はなし
(つくばねのみねのもみぢばおちつもりしるもしらぬもなべてかなしも)
筑波嶺の峰のもみぢ葉落ちつもり知るも知らぬもなべてかなしも
(かひがねをさやにもみしがけけれなくよこほりふせるさやのなかやま)
甲斐が嶺をさやにも見しがけけれなく横ほり臥せる小夜の中山
(をふのうらにかたえさしおほひなるなしのなりもならずもねてかたらはむ)
廅の浦に片枝さし覆ひなる梨のなりもならずも寝て語らはむ
(ちはやぶるかものやしろのひめこまつよろづよふともいろはかはらじ)
ちはやぶる賀茂の社の姫小松よろづ世ふとも色はかはらじ
(そまびとはみやきひぐらしあしひきのやまのやまひこよびとよむなり)
杣人は宮木ひぐらしあしひきの山の山彦よびとよむなり
(からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ)
唐衣きつつなれにし妻しあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
(きたへゆくかりぞなくなるつれてこしかずはたらでぞかへるべらなる)
北へ行く雁ぞ鳴くなるつれてこし数はたらでぞ帰るべらなる
(やまかくすはるのかすみぞうらめしきいづれみやこのさかひなるらむ)
山かくす春の霞ぞうらめしきいづれ都のさかひなるらむ
(きえはつるときしなければこしぢなるしらやまのなはゆきにぞありける)
消えはつる時しなければ越路なる白山の名は雪にぞありける
(いとによるものならなくにわかれぢのこころぼそくもおもほゆるかな)
糸に撚る物ならなくに別れ路の心ぼそくも思ほゆるかな
(よをさむみおくはつしもをはらひつつくさのまくらにあまたたびねむ)
夜を寒み置く初霜をはらひつつ草の枕にあまたたび寝ぬ
(ゆうづくよおぼつかなきをたまくしげふたみのうらはあけてこそみめ)
夕月夜おぼつかなきを玉匣ふたみの浦は曙てこそ見め
(かりぐらしたなばたつめにやどからむあまのかはらにわれはきにけり)
狩り暮らしたなばたつめに宿からむ天の河原に我は来にけり
(さくらばなちらばちらなむちらずとてふるさとひとのきてもみなくに)
桜花散らば散らなむ散らずとてふるさと人のきても見なくに
(さわぎなきくものはやしにいりぬればいとどうきよのいとはるるかな)
騒ぎなき雲の林に入りぬればいとど憂き世のいとはるるかな
(ひととせにひとたびきますきみまてばやどかすひともあらじとぞおもふ)
ひととせにひとたび来ます君待てば宿かす人もあらじとぞ思ふ
(このたびはぬさもとりあへずたむけやまもみぢのにしきかみのまにまに)
このたびは幣も取りあへず手向山紅葉の錦神のまにまに
(たむけにはつづりのそでもきるべきにもみぢにあけるかみやかへさむ)
手向けには綴の袖も切るべきに紅葉に飽ける神やかへさむ
(かぎりなきくもいのよそにわかるともひとをこころにおくらさむやは)
限なき雲井のよそに別るとも人を心におくらさむやは
(たらちねのおやのまもりとあひそふるこころばかりはせきなとどめそ)
たらちねの親のまもりとあひそふる心許りはせきなとどめそ
(けふわかれあすはあふみとおもへどもよやふけぬらむそでのつゆけき)
けふ別れ明日はあふみと思へども夜やふけぬらむ袖の露けき
(かへるやまありとはきけどはるかすみたちわかれなばこひしかるべし)
帰山ありとは聞けど春霞立別れなば恋ひしかるべし
(をしむからこひしきものをしらくものたちなむのちはなにここちせむ)
惜しむからこひしきものを白雲のたちなむのちはなに心地せむ
(わかれてはほどをへだつとおもへばやかつみながらにかねてこひしき)
別れては程を隔つと思へばやかつ見ながらに兼ねてこひしき
(あさなけにみべききみとしたのまねばおもひたちぬるくさまくらなり)
あさなけに見べき君としたのまねば思ひたちぬる草枕なり
(はなみつつひとまつときはしろたへのそでかとのみぞあやまたれける)
花見つつ人まつ時は白妙の袖かとのみぞあやまたれける
(ひともととおもひしきくをおおさはのいけのそこにもたれかうえけむ)
一本と思ひし菊を大沢の池の底にも誰か植ゑけむ
(あきのきくにほふかぎりはかざしてむはなよりさきとしらぬわがみを)
秋の菊匂ふかぎりはかざしてむ花より先と知らぬわが身を
(いろかはるあきのきくをばひととせにふたたびにほふはなとこそみれ)
色変はる秋の菊をば一歳に再び匂ふ花とこそ見れ
(あきをおきてときこそありけれきくのはなうつろふからにいろのまされば)
秋をおきて時こそ有りけれ菊の花うつろふからに色のまされば
(さきそめしやどしかはればきくのはないろさへにこそうつろひにけれ)
咲きそめし宿しかはれば菊の花色さへにこそ移ろひにけれ
(さほやまのははそのもみぢちりぬべみよるさへみよとてらすつきかげ)
佐保山の柞の紅葉散りぬべみ夜さへ見よと照らす月影
(たつたがはもみぢみだれてながるめりわたらばにしきなかやたえなむ)
竜田河もみぢ乱れて流るめり渡らば錦なかや絶えなむ
(たつたがはもみぢはながるかむなびのみむろのやまにしぐれふるらし)
竜田河もみぢは流る神なびのみむろの山に時雨ふるらし
(こひしくばみてもしのばむもみぢばをふきなちらしそやまおろしのかぜ)
恋ひしくば見ても偲ばむもみぢ葉を吹きな散らしそ山おろしの風
(あきのつきやまべさやかにてらせるはおつるもみぢのかずをみよとか)
秋の月山辺さやかに照らせるは落つるもみぢの数を見よとか
(もみぢばのながれてとまるみなとにはくれなひふかきなみやたつらむ)
もみぢ葉の流れて止まる水門には紅深き浪や立つらむ
(かむなびのみむろのやまをあきゆけばにしきたちきるここちこそすれ)
神なびのみむろの山を秋ゆけば錦たちきる心地こそすれ
(わがきつるかたもしられずくらぶやまきぎのこのはのちるとまがふに)
わが来つる方もしられず鞍馬山木木の木の葉の散るとまがふに
(かむなびのやまをすぎゆくあきなればたつたがはにぞぬさはたむくる)
神なびの山をすぎ行く秋なれば竜田河にぞ幣は手向くる
(あきのやまもみぢをぬさとたむくればすむわれさへぞたびごこちする)
秋の山紅葉を幣と手向くれば住む我さへぞ旅心ちする
(しらなみにあきのこのはのうかべるをあまのながせるふねかとぞみる)
白浪に秋の木の葉の浮かべるを海人の流せる舟かとぞ見る
(かぜふけばおつるもみぢばみずきよみちらぬかげさへそこにみえつつ)
風吹けば落つるもみぢ葉水きよみ散らぬ影さへ底に見えつつ