盲者の旅路／SUZUMOKU

(ひょうしきもなければみちなんてたいそうなものもなく)

標識もなければ 道なんてたいそうなものもなく

(たったひとつだけのたからものをにぎりしめて)

たった一つだけの 宝物を握りしめて

(さがしていたのはけがれなきむくとあんじゅうのとち)

探していたのは 汚れなき無垢と安住の土地

(あなたのことなどだれひとりとしてしることのないばしょ)

あなたのことなど 誰一人として知ることのない場所

(にげだしただけだろとうしろのほうできこえたこえに)

「逃げ出しただけだろ」と 後ろの方で聞こえた声に

(そんなことはないとひくくほそくつぶやきかえす)

「そんなことはない」と 低く細くつぶやき返す

(わずかにふるえるてじしんのいろはすでにそうはくで)

わずかに震える手 自信の色はすでに蒼白で

(いまにもたちどまりはるかかなたうしろをふりかえる)

今にも立ち止まり 遥か彼方後を振り返る

(たどりついたけしきはどうだい)

辿り着いた景色はどうだい？

(それはぼくにもみえるものなのかい)

それは僕にも見えるものなのかい？

(たからものはやくにたつかい)

宝物は役に立つかい？

(それはぼくにでもつかえるものなのかい)

それは僕にでも使えるものなのかい？

(こどくのたびはまだとほうもなくながくうすぐらく)

孤独の旅はまだ 途方もなく長く薄暗く

(おなじようなにたようなばめんをいくつもこえていた)

同じような似たような 場面をいくつも超えていた

(かわりつづけていたのはほおをなでるかぜのゆくえ)

変わり続けていたのは 頬を撫でる風の行方

(わらわれてもこのあしはうらぎることなくつちをける)

笑われてもこの足は 裏切ることなく土を蹴る

(たどりついたけしきはどうだい)

たどり着いた景色はどうだい？

(それはぼくにもみえるものなのかい)

それは僕にも見えるものなのかい？

(たからものはやくにたつかい)

宝物は役に立つかい？

(それはぼくにでもつかえるものなのかい)

それは僕にでも使えるものなのかい？

(たどりついたけしきはどうだい)

たどり着いた景色はどうだい？

(それはあなたがえがくものだろう)

それはあなたが描くものだろう

(たからものはやくにたつかい)

宝物は役に立つかい？

(それはあなたがみがくものだろう)

それはあなたが磨くものだろう

(たどりついたけしきはそうさ)

たどり着いた景色はそうさ

(それはだれにもみえるものなのさ)

それは誰にも見えるものなのさ

(たからものはやくにたつだろう)

宝物は役に立つだろう？

(それはだれにでもつかえるものなのさ)

それは誰にでも使えるものなのさ