煙草の害について その弐

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投稿者投稿者勇気栽培いいね0お気に入り登録
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(そうそう、すっかりいいわすれてましたけど、わたしはつまのやっているおんがくがっこうで)

そうそう、すっかり言い忘れてましたけど、わたしは妻のやっている音楽学校で

(かいけいしゅにんのほかに、すうがく、ぶつり、かがく、ちりれきし、せいがく、ぶんがくそのほかのかもくの)

会計主任のほかに、数学、物理、科学、地理歴史、声楽、文学その他の科目の

(じゅぎょうをうけもたされているんです。だんすとせいがくとかいがは、とくべつのじゅぎょうりょうをとら)

授業を受け持たされているんです。ダンスと声楽と絵画は、特別の授業料を取ら

(れるんですよ、といったって、だんすやせいがくをおしえるのは、やはりわたしなんで)

れるんですよ、と言ったって、ダンスや声楽を教えるのは、やはりわたしなんで

(すがね。うちのおんがくがっこうはぴゃさばーちぃこうじの、13ごうじゅうたくにあるんです。)

すがね。うちの音楽学校はピャサバーチィ小路の、13号住宅にあるんです。

(わたしのじんせいがこうまでついていないのも、きっとこのためにちがいありませんね、)

わたしの人生がこうまでツイていないのも、きっとこの為に違いありませんね、

(つまり、わたしらのすんでいるのが13ごうじゅうたくだし、むすめたちのうまれたのは13にち)

つまり、わたしらの住んでいるのが13号住宅だし、娘達の産まれたのは13日

(だし、いえのまどのかずまで13なんですよ・・・まったくいうことはありませんや!もしなに)

だし、家の窓の数まで13なんですよ・・・全く言う事はありませんや!もし何

(かごそうだんでもおありでしたら、かないはいつでもうちにおりますし、がっこうのきそくしょも)

か御相談でもお有りでしたら、家内はいつでも家におりますし、学校の規則書も

(ごきぼうのむきには、1ぶ30かぺいかでうけつけでうっていますから。おのぞみなら、)

ご希望の向きには、1部30カペイカで受付で売っていますから。お望みなら、

(わたしもおわけしますよ。1ぶがわずかの30かぺいか!ごきぼうのかた?だれもいり)

わたしもお分けしますよ。1部がわずかの30カペイカ!ご希望の方?誰も要り

(ませんか?じゃ20かぺいか!ざんねんだな。そうか、13ごうじゅうたくだからな。まったく)

ませんか?じゃ20カペイカ!残念だな。そうか、13号住宅だからな。全く

(わたしってにんげんは、なにをやらせてもうまくいかないで、このとおりとしもとったし、)

わたしって人間は、何をやらせても上手く行かないで、この通り年もとったし、

(あたまもわるくなっちまいましたよ。げんにこうしてこうえんなんぞをしているときでも、よそ)

頭も悪くなっちまいましたよ。現にこうして講演なんぞをしている時でも、よそ

(めにはたのしそうでしょうが、とうにんにしてみれば、こえをかぎりにさけんで、せかいのはずれ)

目には楽しそうでしょうが、当人にしてみれば、声を限りに叫んで、世界の外れ

(にでもとんでいきたいきもちなんです。ぐちをこぼすあいてもなし、いっそなきた)

にでも飛んで行きたい気持ちなんです。愚痴をこぼす相手もなし、いっそ泣きた

(いくらいですよ。だってむすめがいるだろうに、とおっしゃるんですか。むすめなんぞなんです?)

いくらいですよ。だって娘がいるだろうに、と仰るんですか。娘なんぞ何です?

(わたしがなにかいったところで、やつらはげらげらわらうだけですからね。ついこのあいだも)

わたしが何か言った所で、奴らはゲラゲラ笑うだけですからね。ついこの間も

(かないのしんせきがいえにあそびにきましてね、や、やつらは、いつもふらんすごではなしてい)

家内の親戚が家に遊びに来ましてね、や、奴らは、いつもフランス語で話してい

(るんですが、はなしがわたしのことにおよぶとかならずろしあごではなしはじめるんです。いや)

るんですが、話がわたしのことに及ぶと必ずロシア語で話し始めるんです。いや

など

(わすれましょう。これについてはわすれることにしましょう。いやちょうをけいれんてきじょうたい、)

忘れましょう。これについては忘れる事にしましょう。胃や腸を痙攣的状態、

(つまりけいれんのじょうたいにおくのであります。ごほっごほっ!ちくしょう!せいあくなほっとけー)

つまり痙攣の状態におくのであります。ゴホッゴホッ!畜生!生悪なホットケー

(きめ!それでは、かがくほうていしきのあんきをしていただきましょうか。にこちんのかがくせいぶん)

キめ!それでは、化学方程式の暗記をして頂きましょうか。ニコチンの化学成分

(は、c10h14n2。おかきにならなくてもけっこうです。にこちんそれじたいは)

は、c10h14n2。お書きにならなくても結構です。ニコチンそれ自体は

(むしょくのえきたいで、あんもにあのにおいがします。しかしじつをいえば、われわれにとって)

無色の液体で、アンモニアの匂いがします。しかし実を言えば、我々にとって

(じゅうだいなのは、ちゅうすうしんけいやしょうかきかんのきんにくにおよぼすにこちんのちょくせつのさようでありま)

重大なのは、中枢神経や消化器官の筋肉に及ぼすニコチンの直接の作用でありま

(す。おい!そこのわかいしゅうども!ちれ!かいさんだかいさんしていえにかえれ!おまえたちがここに)

す。おい!そこの若い衆ども!散れ!解散だ解散して家に帰れ!お前達がここに

(きてどうしようというんだ!まったくわからん、ああいったがくせいたちがわいわいさわいで)

来てどうしようと言うんだ!全くわからん、ああいった学生達がワイワイ騒いで

(る、そのこんきょがわかりませんな。これはいっけん、あらあらしいおしのつよいかんしゃくもちに)

る、その根拠が分かりませんな。これは一見、荒々しい押しの強い癇癪持ちに

(みえながら、そのじつなかなかのむそうかでじゆうしそうかのわたしにとってもかいけつふのう)

見えながら、その実なかなかの夢想家で自由思想家のわたしにとっても解決不能

(のもんだいとしてたちはだかっております。あのようにちいさなさわぎたてにしても、いつ)

の問題として立ちはだかっております。あの様に小さな騒ぎ立てにしても、いつ

(なんどき、らんぼうに、いやみんしゅうのちつじょにはってんしたとしたら・・・みんしゅうにかってなことをさせ)

何時、乱暴に、いや民衆の秩序に発展したとしたら・・・民衆に勝手な事をさせ

(ていいなんて、ほうりつのどこにかいてあるんです。わたしはぞうおのとりこになります!)

ていいなんて、法律のどこに書いてあるんです。私は憎悪の虜になります!

(ばかをぶたずにするとしたらじぶんのたましいにつみがしょうじます。たとえばかわぎしのすなのうえには)

馬鹿をぶたずにするとしたら自分の魂に罪が生じます。例えば川岸の砂の上には

(いっこのすいしたいがあったのであります。そしてたとえば、そのまわりにはばかなひゃくしょうど)

一個の水死体があったのであります。そして例えば、その周りには馬鹿な百姓ど

(もがむらがっている。わたしはおいはらいました!ひゃくしょうはたんじゅんなるにんげんであり、なにひとつ)

もが群がっている。私は追い払いました!百姓は単純なる人間であり、何ひとつ

(りかいいたしませんから。とうぜん、わたしのことばにしたがわねばならず、それがまた、かれらのため)

理解いたしませんから。当然、私の言葉に従わねばならず、それが又、彼らの為

(にもなるのです。しかし、ひゃくしょうどもはにやにやわらうばかりで、そこをうごこうとし)

にもなるのです。しかし、百姓どもはニヤニヤ笑うばかりで、そこを動こうとし

(ません。いかなるこんきょによって、そのしたいがよこたわっていたのか?これがはたし)

ません。いかなる根拠によって、その死体が横たわっていたのか?これが果たし

(てちつじょであろうか?このようなぎもんにつきあたりますと、ひっきりなしにつぎのような)

て秩序であろうか?この様な疑問に突き当たりますと、ひっきりなしに次の様な

(もんだいがあたまにうかびます。もし、ゆかのかわりにてんじょうがあり、てんじょうのかわりにゆかが)

問題が頭に浮かびます。もし、床の代わりに天井があり、天井の代わりに床が

(あったら、どうなっただろう?こだいごはりえきをもたらすか、そんしつをもたらすか?)

あったら、どうなっただろう?古代語は利益をもたらすか、損失をもたらすか?

(もしこうちょうがつきにすんでいたらきょうしたちはどんなふうにかれをほうもんするか?もしおとこがおんなの)

もし校長が月に住んでいたら教師達はどんな風に彼を訪問するか?もし男が女の

(ふくそうをしたらどうなるか?きそうてんがいな、ちょうしぜんてきな、ぶさほうでさえあるもんだいだが)

服装をしたらどうなるか?奇想天外な、超自然的な、不作法でさえある問題だが

(よういにへんとうできぬとはいえない。うちのむすめどもにはつねづねこういいきかせているんで)

容易に返答出来ぬとは云えない。うちの娘共には常々こう言い聞かせているんで

(す。「いいかい、りゆうもなくさわげというほうりつはないんだよ」わたしのかないにはむすめが7)

す。「いいかい、理由もなく騒げという法律は無いんだよ」私の家内には娘が7

(にんありましてね・・・いやしつれい、6にんだったかな・・・やっぱり7にんですよ。)

人ありましてね・・・いや失礼、6人だったかな・・・やっぱり7人ですよ。

(ちょうじょはあんなといって27さい、すえむすめは17です。このしぜんかいにそんするいっさいのうつく)

長女はアンナと言って27歳、末娘は17です。この自然界に存する一切の美く

(しい、きよらかな、こうしょうなものが、ことごとく、これら7にんのわかいせいじゅんむくなむすめたちのうちに)

しい、清らかな、高尚なものが、尽く、これら7人の若い清純無垢な娘達の内に

(しゅうちゅうしているのです。とりみだしてこえのふるえましたことをおゆるしください。みなさん!)

集中しているのです。取り乱して声の震えました事をお許し下さい。皆さん!

(わたしはふこうなにんげんです。まったくとるにたらぬばかものになりはててしまいました。しか)

私は不幸な人間です。全く取るに足らぬ馬鹿者に成り果ててしまいました。しか

(しじっさいには、あなたがたのまえにたっているのは、よのちちおやのなかでもっともこうふくなおとこなの)

し実際には、あなた方の前に立っているのは、世の父親の中で最も幸福な男なの

(でしょうね。じっさいそれがとうぜんでしょうしわたしもいをとなえるつもりはありませんがね)

でしょうね。実際それが当然でしょうし私も異を唱えるつもりはありませんがね

(わかっていただけたらな。わたしはね、もう33ねんもつまといっしょにいるんです。これがわたしの)

判って頂けたらな。私はね、もう33年も妻と一緒にいるんです。これが私の

(じんせいのさいりょうのねんげつだったといえるでしょうね。まぁさいりょうとまではいかなくとも、)

人生の最良の年月だったと言えるでしょうね。まぁ最良とまでは行かなくとも、

(がいしてそういったようなもんです。ひとくちにいって、この33ねんのさいげつも、こうふくな)

概してそういった様なもんです。一口に言って、この33年の歳月も、幸福な

(いっしゅんのようにながれさってしまいましてね。さまざまなけってんでなんどかのじょにかなしいおもいを)

一瞬の様に流れ去ってしまいましてね。様々な欠点で何度彼女に悲しい思いを

(させたことだろう。わたしはおとなしくつまのばつをうけはしたもののつまのいかりをなにによって)

させた事だろう。私は大人しく妻の罰を受けはしたものの妻の怒りを何によって

(なぐさめてやっただろう。なんておもったこともときにはありましたがしょうじきのはなし、だいぶぶん)

慰めてやっただろう。なんて思ったことも時にはありましたが正直の話、大部分

(かってにしやがれといったきもちですよ。もっとも、かないはまだきていないようですな。)

勝手にしやがれといった気持ちですよ。最も、家内はまだ来ていない様ですな。

(あれがいなけりゃなんだってすきなことをいえますからね。これでもけっこんしたてのころ)

あれがいなけりゃ何だって好きな事を言えますからね。これでも結婚したての頃

(はわたしもかないをきょういくしたもんですよ。「さぁまーしゃぼくのあごひげをひっつかんで)

は私も家内を教育したもんですよ。「さぁマーシャ僕のアゴ髭を引っつかんで

(ちからいっぱいひきむしっておくれ」「まぁ、まるけーしゃ・いわのうぃち、なにをかんがえだ)

力一杯ひきむしっておくれ」「まぁ、マルケーシャ・イワノウィチ、何を考えだ

(したの?」「いやいや、どうかそうしてくれ、たのむ。えんりょなしにひっつかんで)

したの?」「いやいや、どうかそうしてくれ、頼む。遠慮なしに引っつかんで

(ぐいとひきむしっておくれ」「もうたくさん、なんのためにそんなことをするの?」「まー)

ぐいとひきむしっておくれ」「もう沢山、何の為にそんな事をするの?」「マー

(しゃ、ぼくがたのむのだ、いやようきゅうするんだ。きみがぼくをあいしているならぼくのひげを)

シャ、僕が頼むのだ、いや要求するんだ。君が僕を愛しているなら僕のひげを

(ひっつかんでひっぱっておくれ。さぁ、これがぼくのあごひげだ!、きむしってくれ)

引っつかんで引っ張っておくれ。さぁ、これが僕のアゴ髭だ、引きむしってくれ

(!」「どんなことがあってもいや!いのちよりもあいしているひとをいたいめにあわせるなん)

!」「どんな事があってもいや!命よりも愛している人を痛い目に合わせるなん

(ていやよ、ぜったいにいや!」そもそもかないのけはぶりゅねっとでしてね、かみのいろが)

ていやよ、絶対にいや!」そもそも家内の毛はブリュネットでしてね、髪の色が

(ぶりゅねっとのおんなってのは、さながらしゅうきょうさいばんににてますな。いっぽうではあくまが)

ブリュネットの女ってのは、さながら宗教裁判に似てますな。一方では悪魔が

(へどをはくぐらいのじょうかをもやしながらたほうでははででむこうみずのろんりとひめい)

反吐を吐くぐらいの情火を燃やしながら他方では派手で向こう見ずの論理と悲鳴

(となきごえ、おちつきがなくあきっぽくきまぐれでおこりっぽくて、しばしばははおやと)

と泣き声、落ち着きがなく飽きっぽく気紛れで怒りっぽくて、しばしば母親と

(いいあらそったり、こまづかいにむちうちをくらわせたりする。12さいごろからはやくも)

言い争ったり、小間使いにムチ打ちを食らわせたりする。12歳ごろから早くも

(けがらわしいだんせいをむししはじめべんきょうをなまけたんにんのおんなきょうしをぞうおしこいものがたりを)

穢らわしい男性を無視し始め勉強を怠け担任の女教師を憎悪し恋物語を

(あいどくし、そのさい、しぜんびょうしゃをとばしてこいのうちあけを5どずつよみかえす。)

愛読し、その際、自然描写を飛ばして恋の打ち明けを5度ずつ読み返す。

(おっとのうらぎりにたいしてはどうようのしかえしをおこなって、すぐにわかいする。「しかし、)

夫の裏切りに対しては同様の仕返しを行なって、すぐに和解する。「しかし、

(ぼくがたのむんじゃないか。わかるだろう?ぼくがたのむんだ、ようきゅうするんだ」「どんな)

僕が頼むんじゃないか。わかるだろう?僕が頼むんだ、要求するんだ」「どんな

(にたのまれてもいや」「は、はやくひっぱるんだ」「いやよ」「いい!ひっぱ)

に頼まれてもいや」「は、早く引っ張るんだ」「いやよ」「いい!引っぱ

(れ!」「ぜったいにいや」「ひっぱれといったらひっぱれ」「いやよ」「ひき)

れ!」「絶体にいや」「引っぱれといったら引っぱれ」「いやよ」「引き

(むしるんだ、さぁはやく。あごひげをひっぱれ」「できない」「ええい、さぁ)

むしるんだ、さぁ早く。アゴ髭を引っぱれ」「出来ない」「ええい、さぁ

(つかむんだ、このあごひげを。そうだ、さぁひっぱれ」「うー」「どうだい、ぼく)

掴むんだ、このアゴ髭を。そうだ、さぁ引っぱれ」「うー」「どうだい、僕

(はちっともいたくないよ」「ほんとうにちっともいたかない?」「ほんとうだとも、いたかない)

はちっとも痛くないよ」「本当にちっとも痛かない?」「本当だとも、痛かない

(さぁ、こんどはぼくがきみを、きみのこめかみのけをひっぱるよ。そら!」)

さぁ、今度は僕が君を、君のこめかみの毛を引っ張るよ。そら!」

(「ぎゃあー!」「さぁ、これでぼくがきみよりなんばいもちからがあってがまんづよいのがわかった)

「ぎゃあー!」「さぁ、これで僕が君より何倍も力があって我慢強いのが判った

(だろう?このことは、いつかしょうらい、きみがこぶしをふるってぼくにおそいかかったりぼくのめを)

だろう?この事は、いつか将来、君が拳を振るって僕に襲い掛かったり僕の眼を

(ひっかくとやくそくするときにかならずおもいださなきゃいけないよ。つまりつまはおっとをおそれるべ)

引っ掻くと約束する時に必ず思い出さなきゃ行けないよ。つまり妻は夫を恐るべ

(しさ」でもいまとなっちゃ、わたしはね、ひどくこわいんですよ。かないにぐっとにらまれる)

しさ」でも今となっちゃ、私はね、酷く怖いんですよ。家内にグッと睨まれる

(とちぢみあがっちまうんです。じつにけっこんはすばらしいですな。だれでもあんちょくにできる)

と縮み上がっちまうんです。実に結婚は素晴らしいですな。誰でも安直に出来る

(。けっこんはかねもちもぶんもうもとしわかきものもろうじんもけんこうなものもびょうにんもろしあじんもしなじんも)

。結婚は金持ちも文盲も年若き物も老人も健康な者も病人もロシア人も支那人も

(おらんだじんもみなみおせあにあじんもたいじんもできるのであります。れいがいはせいしんさくらんしゃ)

オランダ人も南オセアニア人もタイ人も出来るのであります。例外は精神錯乱者

(ときょうじんだけでばかやあほやちくしょうどもはすきなようになんかいでもけっこんできるのでありま)

と狂人だけで馬鹿や阿保や畜生どもは好きな様に何回でも結婚できるのでありま

(す。そしてかていせいかつはおおくのよきめんをもちます。もし、かていせいかつがなければ、そ)

す。そして家庭生活は多くの良き面を持ちます。もし、家庭生活がなければ、そ

(うすれば、けっこんはないわけだからむすめたちはいっしょう、ちちおやのすねをかじってくらし、おおくの)

うすれば、結婚は無い訳だから娘達は一生、父親のスネを齧って暮らし、多くの

(おんがくかはぱんにありつけずにひをおくることでありましょう。いがくはどくしんしゃたちがふつう)

音楽家はパンにありつけずに日を送る事でありましょう。医学は独身者達が普通

(きょうじんとなってしに、さいたいしゃたちがはっきょうするひまもなくしぬことをおしえております。)

狂人となって死に、妻帯者達が発狂する暇も無く死ぬ事を教えております。

(どくしんしゃたちのねくたいをむすぶのはこまづかいなのでありますがさいたいしゃにあってはさいくん)

独身者達のネクタイを結ぶのは小間使いなのでありますが妻帯者にあっては妻君

(なのであります。ああ、またはなしがそれました。ほんだいにもどしましょう。ええ、あっ)

なのであります。ああ、また話が逸れました。本題に戻しましょう。ええ、あっ

(ところでわたしのいいたいのは、こういうことなんですよ。うちのむすめたちがこんなに)

ところでわたしの言いたいのは、こういう事なんですよ。うちの娘達がこんなに

(いつまでもよめにいかないでいるのは、きっととうにんたちがうちきなためにおとこたちのめにふれ)

いつまでも嫁に行かないでいるのは、きっと当人達が内気な為に男達の眼に触れ

(るきかいがないからでしょうな。かないはやかいなんぞしたがりませんし、)

る機会がないからでしょうな。家内は夜会なんぞしたがりませんし、(続く)

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