海野十三『密林荘事件』

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ただ一人の証人が殺人者だと断定された理由を問う、読者への挑戦。
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1 ねね 3987 D++ 4.1 96.3% 1139.5 4723 179 64 2024/02/28

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問題文

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(みつりんそうで、くまいせいねんがじさつしたというじけんが、れいのゆうめいなはただけいぶのところへ)

密林荘で、熊井青年が自殺したという事件が、例の有名な旗田警部のところへ

(まわされてきた。このじけんは、そのくまいせいねんがせいさんかりをのんでしんだという)

廻されて来た。この事件は、その熊井青年が青酸加里を飲んで死んだという

(てんではめいりょうであるが、そのせいさんかりをよういしたのがとうにんであるか、それともほかの)

点では明瞭であるが、その青酸加里を用意したのが当人であるか、それとも他の

(ものであるかがめいりょうでない。それからもう1つのなんてんは、そのみつりんそうがみつりんちゅうの)

者であるかが明瞭でない。それからもう一つの難点は、その密林荘が密林中の

(いっけんやであって、ふきんにいえもなく、ひとのつうこうもあまりないところであるがため、)

一軒家であって、附近に家もなく、人の通行もあまりないところであるがため、

(くまいせいねんのしのぜんごのじょうきょうをしょうげんするものがほとんどいないことだった。それに)

熊井青年の死の前後の状況を証言する者が殆んど居ないことだった。それに

(ついてなにかをのべえるものは、いまのところそのみつりんそうのもちぬしのむすこであるしばたにせいねん)

ついて何かを述べ得る者は、今のところその密林荘の持主の息子である柴谷青年

(ただ1りがあるのみであった。このしばたにせいねんは、くまいとともにこのさんそうにきていた)

ただ一人が有るのみであった。この柴谷青年は、熊井と共にこの山荘に来ていた

(ものである。はただけいぶからのよびだしで、そのしばたにせいねんはやくしょへやってきた。かれは)

者である。旗田警部からの呼出しで、その柴谷青年は役所へやって来た。彼は

(やせがたの、かおいろのどすぐろい、そしていまどききんぶちめがねをかけているという)

痩せ型の、顔色のどす黒い、そして今時金縁眼鏡をかけているという

(じんぶつだった。けいぶはさっそくこのせいねんについてたずねるところがあった。「はなはだ)

人物だった。警部は早速この青年について訊ねるところがあった。「甚だ

(おてすうですが、くまいくんのじさつじょうきょうについて、もう1どわたしにくわしいおはなしをして)

お手数ですが、熊井君の自殺状況について、もう一度私に詳しいお話をして

(いただきたいのですが・・・・・・。さあどうぞ、たばこをおとりください」と、けいぶはじぶんの)

頂きたいのですが……。さあどうぞ、煙草をおとり下さい」と、警部は自分の

(しがれっと・けーすをせいねんのまえへさしだした。「は、これはどうもすみません」)

シガレット・ケースを青年の前へ差出した。「は、これはどうもすみません」

(しばたにはおおいによろこんで、かみまきたばこを1ぽんとって、けいぶのらいたーでひをつけた。)

柴谷は大いに喜んで、紙巻煙草を一本取って、警部のライターで火をつけた。

(しばたにのゆびさきは、やにでそめたようにかっしょくであった。「これまでになんどもおはなしした)

柴谷の指先は、やにで染めたように褐色であった。「これまでに何度もお話した

(ことですが」しばたにはことわりながら「くまいとはたいへんしたしいあいだがらでしたが、ここ)

ことですが」柴谷は断りながら「熊井とはたいへん親しい間柄でしたが、ここ

(1かげつばかりかれはひじょうにそううつしょうにおちいっていましてね、しぬんだしぬんだとぼくに)

一ヶ月ばかり彼は非常に躁鬱性に陥っていましてね、死ぬんだ死ぬんだと僕に

(もらしていました。ぼくはしんぱいしましてね、なんとかしてかれをげんきづけたいとおもい、)

洩らしていました。僕は心配しましてね、何とかして彼を元気づけたいと思い、

(それにはとかいをはなれてだいしぜんのふところにはいるのがいいとかんがえ、さいわいにうちのみつりんそうが)

それには都会を離れて大自然の懐に入るのがいいと考え、幸いにうちの密林荘が

など

(あいていたものですから、そこへつれていったのです。もちろんさんそうですから、)

空いていたものですから、そこへ連れていったのです。もちろん山荘ですから、

(2りでじすいせいかつするしかなかったのです」「なるほど。それでみつりんそうと)

二人で自炊生活するしかなかったのです」「なるほど。それで密林荘と

(いうのは、どんなところですか」「けんきょうにあるしんりんちたいのおくにあるのです。)

いうのは、どんなところですか」「県境にある森林地帯の奥にあるのです。

(ゆうめいなばつばつこをそばにひかえていますが、こがんからおくへやく10ちょうほど、ひるなおくらき)

有名な××湖を傍にひかえていますが、湖岸から奥へ約十町ほど、昼なお暗き

(まがりくねったこみちをはいっていくと、とつぜんみつりんそうのまえにでるわけです。ここは)

曲りくねった小径を入って行くと、突然密林荘の前に出るわけです。ここは

(いわゆるばつばつのげんしりんといわれています。もののはんちょうとみとおしがきかないくらい)

いわゆる××の原始林といわれています。ものの半町と見通しがきかない位

(まがっています。そこへはいるとなつでもひやりとさむくなります」「ひしょにはもって)

曲っています。そこへ入ると夏でもひやりと寒くなります」「避暑には持って

(こいのばしょですね」「ええ、ですからかれをさそったわけです。たしかにかれは)

来いの場所ですね」「ええ、ですから彼を誘ったわけです。たしかに彼は

(ひましにげんきづきました。ちょうど3かめのあさのこと、ぼくたちはさんそうをいっしょにでて、)

日増しに元気づきました。丁度三日目の朝のこと、僕たちは山荘を一緒に出て、

(ようちょうのこみちをこがんへぬけ、そこでみぎへいき、おぜがわをすこしかわかみへあるいたところで)

羊腸の小径を湖岸へ抜け、そこで右へ行き、小瀬川を少し川上へ歩いたところで

(つりをはじめました。ところがぼくのはりにはかなりえものがひきかかりましたが、くまいくんの)

釣を始めました。ところが僕の針にはかなり獲物が引懸りましたが、熊井君の

(ほうはさっぱりだめです。そこでかれはばしょをかえるといいだしました。ぼくはそこを)

方はさっぱり駄目です。そこで彼は場所を換えるといい出しました。僕はそこを

(うごくことにはふさんせいでしたから、2りはわかれることになり、ひるめしまえにはさんそうへ)

動くことには不賛成でしたから、二人は別れることになり、昼飯前には山荘へ

(もどることをもうしあわせました。かれはもとのみちをひきかえし、こがんのひだりのほうへいった)

戻ることを申合わせました。彼は元の道を引返し、湖岸の左の方へ行った

(つりばしょへいとをおろすのだといっていました」「ああ、そう。それで・・・・・・」「ぼくは)

釣場所へ糸を下ろすのだといっていました」「ああ、そう。それで……」「僕は

(そこでずっとつりをつづけました。えものもかなりたまったので、11じにもう)

そこでずっと釣りをつづけました。獲物もかなり溜ったので、十一時にもう

(みきりをつけ、そのばしょをはなれてきとについたのです。で、さんそうのちかくまできた)

見切りをつけ、その場所を放れて帰途についたのです。で、山荘の近くまで来た

(とき、ぼくはきゅうになんだかむなさわぎがしてきたので、さんそうの10けんほどてまえからかけ)

とき、僕は急に何だか胸騒ぎがしてきたので、山荘の十間ほど手前から駈け

(だして、いえへとびこみました。げんかんのとをひらいてなかへあしをふみこみますと、さあ)

出して、家へ飛込みました。玄関の戸を開いて中へ足を踏み込みますと、さあ

(たいへん、ぼくはかれより5ふんかんおくれてかえったばかりにいちだいじとっぱつです。くまいくんは)

たいへん、僕は彼より五分間後れて帰ったばかりに一大事突発です。熊井君は

(ゆかのうえにたおれてしんでいたのです。かおいろはかわり、しんぞうはとまっていました。)

床の上に倒れて死んでいたのです。顔色は変り、心臓は停っていました。

(とうとうかれはやったのです、じさつを・・・・・・。まったくざんねんでした」と、しばたにはめを)

とうとう彼はやったのです、自殺を……。全く残念でした」と、柴谷は目を

(しばたたき「じさつのしゅだんは、すぐわかりました。てーぶるのうえに、のみのこしの)

しばたたき「自殺の手段は、すぐ分りました。卓子の上に、飲みのこしの

(うぃすきーのびんがあり、そのよこにからになったこっぷがありましたが、ぷーんと)

ウィスキーの壜があり、その横に空になったコップがありましたが、ぷーんと

(つよくあんにんのにおいがしていました。かれはせいさんかりをもちいたのです。もうちょっと)

強く杏仁の匂いがしていました。彼は青酸加里を用いたのです。もうちょっと

(ぼくがはやくもどってくれば、こんなことをかれにさせずにすんだものを。まったくざんねんで)

僕が早く戻って来れば、こんなことを彼にさせずに済んだものを。全く残念で

(たまりません」「よくわかりました。で、そのひ、だれからいきゃくがありましたか」)

たまりません」「よく分りました。で、その日、誰か来客がありましたか」

(「いいえ、ありません。2かかんというものは、だれもこなかったです」「その)

「いいえ、ありません。二日間というものは、誰も来なかったです」「その

(しんだくまいくんはたばこをすいましたか」「いや、かれはまったくたばこをやりません」)

死んだ熊井君は煙草をすいましたか」「いや、彼は全く煙草をやりません」

(「なるほど。それから、あなたがさんそうへもどられたとき、げんかんのとびらはあいて)

「なるほど。それから、貴方が山荘へ戻られたとき、玄関の扉は空いて

(いましたか、それともしまっていましたか」「ええと、たしかにしまっていました」)

いましたか、それとも閉っていましたか」「ええと、たしかに閉っていました」

(「へやのまどはどうでしたか」「へやのまどもぜんぶしまっていました」「ああ、)

「部屋の窓はどうでしたか」「部屋の窓も全部閉っていました」「ああ、

(そうですか。そこでしばたにさん」とはただけいぶはちょっとことばをとめ、かれにしずかな)

そうですか。そこで柴谷さん」と旗田警部はちょっと言葉を停め、彼にしずかな

(しせんをおくった。「わたしはあなたからほんとうのはなしをうかがいたいものです。いままでのはなしには、)

視線を送った。「私は貴方から本当の話を伺いたいものです。今までの話には、

(うそがまじっていますね。さ、はじめてください、くまいくんをころしたいきさつをつつまず)

嘘が交っていますね。さ、始めて下さい、熊井君を殺したいきさつを包まず

(・・・・・・」)

……」

(はて、しばたにのはなしのどこにうそがあったろうか。めいけいぶはただは、どのてんをもって、)

はて、柴谷の話のどこに嘘があったろうか。名警部旗田は、どの点を以て、

(しばたにのちんじゅつにいつわりをみとめたろうか。どくしゃよ、はんだんあらんことを。ごはんだんが)

柴谷の陳述に偽りを認めたろうか。読者よ、判断あらんことを。ご判断が

(つかねば、もう1どはじめからおよみなおしねがいたい。--それでもおわかりに)

つかねば、もう一度始めからお読み直し願いたい。――それでもお分りに

(ならなければ、つぎのぶんしょうを、おわりからぎゃくにおよみあれ。)

ならなければ、次の文章を、終りから逆にお読みあれ。

(かいなはでずはたっかなけきがちくていでんしはいまくにですきとたっえかがにたばし)

かいなはで筈たっかなけきが口ていでん死は井熊に既きとたっ帰が谷柴

(らなぜな。いならかわはににたばしたっえかてれくお、はかたっどもがいまくつい。いながずは)

らな故何。いなら分はに谷柴たっ帰てれ後、はかたっ戻が井熊つい。いなが筈

(るかわはとこなんそ、しかし。たっいと「たいつりえかへうそんさてれくおんふ5りよんくいまく」)

る分は事なんそ、しかし。たっいと「たいつり帰へ荘山てれ後分五りよ君井熊」

(はにたばしれか)

は谷柴れか

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