親父の一番長い日

(おばあちゃんはゆうげのかたづけをおえたとき)

おばあちゃんは夕餉の片付けを終えた時

(おとうとは２かいのゆりかごのなかで)

弟は２階のゆりかごの中で

(ぼくとおやじはがいとうてれびのからてちょっぷが)

僕と親父は街頭テレビのカラテ・チョップが

(はくねつしたころにいもうとのたんじょうをしった)

白熱した頃に　妹の誕生を知った

(それからおやじはうらないのほんとじしょと)

それから親父は　占いの本と辞書と

(くびっぴきで)

首っぴきで

(じつに１しゅうかんもかけて)

実に一週間もかけて

(むすめのためにつまりはきわめてなにごともない)

娘のために　つまりはきわめて何事もない

(ありふれたなまえをみつけだした)

ありふれた名前を見つけ出した

(おしちやみやまいりふうふはじがじさん)

お七夜　宮参り　夫婦は自画自賛

(かわいいむすめだとはしゃぎまわるけれど)

可愛い娘だと　はしゃぎ廻るけれど

(ぼくにはひいきめにみてもしわくちゃのしっぱいさくひん)

僕にはひいき目に見ても　しわくちゃの失敗作品

(やがてかのじょをおとずれるふこうにむねをいためたｍｍ・・・)

やがて彼女を訪れる　不幸に胸を痛めた　mm・・・

(あにきとしてｍｍ・・・)

兄貴として mm・・・

(いもうとのうまれたころのわがやは)

妹の生まれた頃の我が家は

(おせじにもゆたかなじょうたいでなかったが)

お世辞にも　豊かな状態でなかったが

(くらやみのなかでなにかをきっかけに)

暗闇の中で　何かをきっかけに

(ともりがみえることがある)

灯りが見えることがある

(そんなできごとだったろう)

そんな出来事だったろう

(おやおもうこころにまさるおやごころとやら)

親思う心に勝る　親心とやら

(そんなわけでいもうとはほんのひとかけらも)

そんなわけで妹は　ほんのひとかけらも

(みじめなおもいをせずにそだてられた)

みじめな思いをせずに育てられた

(ただかおがおやじににたことをのぞけば)

ただ顔が親父に似たことを除けば

(しちごさんしんにゅうがくふうふはきょうきらんぶ)

七五三　新入学　夫婦は狂喜乱舞

(あかいらんどせるしょってかせおわれてか)

赤いランドセル　背負ってか　背負われてか

(がっこうへのさかみちをあしもとふらふらおりてゆく)

学校への坂道を　足元ふらふら下りてゆく

(いちまいのすなっぷがいまもむねにのこってるｍｍ・・・)

一枚のスナップが　今も胸に残ってるmm・・・

(あにきとしてｍｍ・・・)

兄貴として mm・・・

(わがやのちすじかいもうともあしだけははやくて)

我が家の血筋か　妹も足だけは速くて

(がっきゅうたいこうのりれーのはながたで)

学級対抗のリレーの花形で

(もっともおやじのおうえんのすごさに)

もっとも親父の応援のすごさに

(あいてがきおくれをして)

相手が気おくれをして

(ずいぶんたすけられてはいたが)

随分助けられてはいたが

(これもわがやのちすじかかなりのえんぎはで)

これも我が家の血筋か　かなりの演技派で

(がくげいかいでもちゃんとやくをもらった)

学芸会でもちゃんと　役をもらった

(おやじのよろこびはいうまでもない)

親父の喜びは　言うまでもない

(たとえそのやくがいっすんぼうしのあかおにのやくであったにしても)

たとえその役が　一寸法師の　赤鬼の役であったにしても

(いもうとさいきかんぱつふうふはむがむちゅう)

妹　才気煥発　夫婦は無我夢中

(はんこうきをすぎておせきはんをたいて)

反抗期を過ぎて　お赤飯を炊いて

(ちゅうがくにいればたしょうおんならしくなるかもしれぬと)

中学に入れば　多少　女らしくなるかも知れぬと

(かぞくのあわいきたいあっさりうらぎられてがっかりｍｍ・・・)

家族の淡い期待　あっさり裏切られてがっかり　mm・・・

(あにきとしてｍｍ・・・)

兄貴として　mm・・・

(いもうとのはつこいはこうこう２ねんのあき)

妹の初恋は高校二年の秋

(あいてのばれーぶのきゃぷてんはよくあるけーす)

相手のバレー部のキャプテンは　よくあるケース

(けっきょくいいだせるはずもなく)

結局言い出せる　筈もなく

(かれはのごとくちったこれもまたよくあるぱたーん)

枯葉の如く散った　これもまたよくあるパターン

(かれしのひとりもいないとはなさけないと)

彼氏のひとりも　いないとは情けないと

(おやじはいつもわらいとばしてはいたが)

親父はいつも　笑い飛ばしては　いたが

(ときおりかかるでんわをいちばんきにしていたのは)

時折かかる電話を　一番気にしていたのは

(とうのおやじじしんだったろう)

当の親父自身だったろう

(きけんなとしごろとふうふはぎしんあんき)

危険な年頃と　夫婦は疑心暗鬼

(ささいないもうとのことばにゆれていた)

些細な妹の言葉に揺れていた

(いまはわがやのいちばんしあわせなひとときもすこし)

今は我が家の　一番幸せなひととき　も少し

(このままいさせてといのっていたのでしょうｍｍ・・・)

このままいさせてと　祈っていたのでしょう　mm・・・

(おやことしてｍｍ・・)

親子として　mm・・

(あるひひとりのわかものがわがやにきて)

或る日ひとりの若者が　我が家に来て

(”おじょうさんをぼくにください”といった)

”お嬢さんを僕に下さい”と言った

(おやじはことばをうしないほおそめうつむいた)

親父は言葉を失い　頬染めうつむいた

(いつのまにきれいになったむすめをみつめた)

いつの間にきれいになった娘を見つめた

(いくつものおもいでがおやじのなかをよぎり)

いくつもの思い出が　親父の中をよぎり

(だからついあんなおおごえをださせた)

だからついあんな大声を出させた

(はじめてみるおやじのろうばいいもうとのおおつぶのなみだ)

初めて見る親父の狼狽　妹の大粒の涙

(いえじゅうのときがとまった)

家中の時が泊まった

(とりなすおふくろにとりつくしまもあたえず)

とりなすお袋に　とりつく島も与えず

(こえをふるわせておやじはかぶりをふった)

声を震わせて　親父はかぶりを振った

(けれどいもうとのしんじつをみたとき)

けれど妹の真実を見た時

(めをとじぶかくいきをして)

眼を閉じ深く息をして

(ちいさなこえで・・・)

小さな声で・・・・

(”わかったむすめはくれてやる)

”わかった娘は　くれてやる

(そのかわりいちどでいい)

その変り一度でいい

(うばっていくきみをきみをなぐらせろ”と)

うばって行く君を君を殴らせろ”と

(いったｍｍ・・・)

言った　mm・・・

(おやじとしてｍｍ・・・)

親父として　mm・・・

(むすめのえらんだおとこにまちがいはないと)

娘の選んだ男に間違いはないと

(しんじていたのもやはりおやじだった)

信じていたのも　やはり親父だった

(はなよめのちちはしずかにむすめのてをとり)

花嫁の父は静かに　娘の手をとり

(さいだんのまえにゆるやかにたった)

祭壇の前にゆるやかに立った

(うぇでぃんぐべるがひしょちのきょうかいに)

ウェディング・ベルが　避暑地の教会に

(なりわたるときぼくはおやじをみていた)

鳴り渡る時　僕は親父を見ていた

(まぎれもないおやじのなみだのゆくえを)

まぎれもない　親父の涙の行方を

(ぼくはいっしょうわすれないだろう)

僕は一生忘れないだろう

(おもいでかかえておふくろがつづく)

思い出かかえて　お袋が続く

(なみだでかすんだめのなかにぼくは)

涙でかすんだ　目の中に僕は

(いままででいちばんきれいないもうとと)

今までで　一番きれいな妹と

(いちばんりっぱなおやじのすがたをきざみこもうとしていたｍｍ・・・)

一番立派な　親父の姿を　刻み込もうとしていた　mm・・・

(あにきとしてｍｍ・・・)

兄貴として　mm・・・

(むすことして)

息子として