俺とお前とあなたと私８

(「おまたせしました、きはらです。」)

「お待たせしました、木原です。」

(「あ、きはらせんせいですか、わたしせんじつおめにかかりましたしせつのものです。」)

「あ、木原先生ですか、私先日お目にかかりました施設のものです。」

(「あのときはおせわになりました。」)

「あの時はお世話になりました。」

(「つかぬことをうかがいますが、うちのかずまとまさとがうかがってませんか？」)

「つかぬ事を伺いますが、うちの一馬と正人が伺ってませんか？」

(「いえ、すがたをみてはいませんが、どうかしましたか？」)

「いえ、姿を見てはいませんが、どうかしましたか？」

(「ふたりできはらせんせいにあいにいくと、てがみをおいていなくなりまして。」)

「二人で木原先生に会いに行くと、手紙を置いていなくなりまして。」

(「わかりました、こちらでもさがしてみますね。」)

「わかりました、こちらでも探してみますね。」

(でんわをきったわたしは、すぐにさがしにでかけた。)

電話を切った私は、すぐに探しに出かけた。

(ねんのためほいくえんのまわりをいっしゅうして、ふたりがいないかたしかめたがすがたはない。)

念のため保育園の周りを一周して、二人が居ないか確かめたが姿はない。

(さがしながらたけうちせんせいにれんらくをいれ、いっしょにさがしてもらうことにした。)

探しながら竹内先生に連絡を入れ、一緒に探してもらうことにした。

(でも、わたしのつとめているほいくえんのなまえをあのこたちしってるのかしら？)

でも、私の勤めている保育園の名前をあの子達知ってるのかしら？

(それにここまでどうやってくるつもりなのかしら？)

それにここまでどうやって来るつもりなのかしら？

(あれこれかんがえながら、しょうてんがいをえきのほうへあるいてさがした。)

あれこれ考えながら、商店街を駅の方へ歩いて探した。

(けいたいでんわにけいさつかられんらくがはいった。)

携帯電話に警察から連絡が入った。

(「きうちです。」)

「木内です。」

(「すみませんえきまえのこうばんですが、きはらさんのおでんわでしょうか？」)

「すみません駅前の交番ですが、木原さんのお電話でしょうか？」

(「きはらです。」)

「木原です。」

(「いまこうばんでふたりのこどもをほごしていてれんらくさきしましたが、しりあいですか」)

「今交番で二人の子供を保護していて連絡先しましたが、知り合いですか」

(わたしはふたりがしせつにいること、けんしゅうでしせつにいったほいくしであることをせつめいした。)

私は二人が施設に居ること、研修で施設に行った保育士であることを説明した。

(たけうちせんせいにもれんらくして、ふたりでえきまえこうばんにむかえにいった。)

竹内先生にも連絡して、二人で駅前交番に迎えに行った。

(「きはらです、ごめいわくをおかけしました。」)

「木原です、ご迷惑をおかけしました。」

(こうばんへついてあたまをさげると、まさとくんがなきながらわたしにしがみついてきた。)

交番へついて頭を下げると、正人君が泣きながら私にしがみついてきた。

(「どうしたの？」)

「どうしたの？」

(こうばんでいったんおちつかせたあと、ふたりをしせつへおくりとどけることにした。)

交番で一旦落ち着かせた後、二人を施設へ送り届けることにした。

(たけうちせんせいは)

竹内先生は

(「おまえたちおなかあいてるんじゃないか？」)

「お前たちお腹空いてるんじゃないか？」

(するとふたりはうなずいた。)

すると二人はうなずいた。

(とりあえずふたりにゆうはんをたべさせようと、ふぁみれすへむかった。)

とりあえず二人に夕飯を食べさせようと、ファミレスへ向かった。

(「かずま、どうしてしせつをぬけだしたんだ。」)

「一馬、どうして施設を抜け出したんだ。」

(たけうちせんせいが、かずまくんにはなしをきいた。)

竹内先生が、一馬君に話を聞いた。

(かずまくんがしばらくかをむいていたが、)

一馬君が暫く下を向いていたが、

(「おれとまさとはしせつのなかで、きもちわるがられているんだ。)

「俺と正人は施設の中で、気持ち悪がられているんだ。

(なかまはずれになったり、いじめられたりずっとがまんしてきたんだ。)

仲間はずれになったり、いじめられたりずっと我慢してきたんだ。

(だけど・・・。」)

だけど・・・。」

(「がまんできなかったのね。」)

「我慢できなかったのね。」

(わたしがそういうと)

私がそう言うと

(ふたりはだまってうなずいた。)

二人は黙ってうなずいた。

(「ごめんなさい・・・。」)

「ごめんなさい・・・。」

(ふたりはちいさなこえでいった。)

二人は小さな声で言った。

(「ぶじでよかったわ。」)

「無事でよかったわ。」

(たけうちせんせいはふたりになにかあったときのために、じぶんのけいたいのでんわばんごうをわたした。)

竹内先生は二人に何かあった時の為に、自分の携帯の電話番号を渡した。

(「もうぬけだしたりするんじゃないぞ、なにかあったらでんわしてこいよ。」)

「もう抜け出したりするんじゃないぞ、何かあったら電話して来いよ。」

(そういってふたりのあたまをなでた。)

そういって二人の頭を撫でた。

(ゆうしょくをたべふたりをしせつへおくりとどけた。)

夕食を食べ二人を施設へ送り届けた。

(しせつちょうにこんかいのことについて、べつのへやではなしをしました。)

施設長に今回の事について、別の部屋で話をしました。

(「あのこたちはしせつでどうなんですか？ほかのこどもとのかんけいは。」)

「あの子達は施設でどうなんですか？他の子供との関係は。」

(しせつちょうはしぶいかおをした。)

施設長は渋い顔をした。

(「ほかのこどもたちのなかにはいっていけていないんじゃないですか？」)

「ほかの子供達の中に入っていけていないんじゃないですか？」

(しせつちょうは)

施設長は

(「あのこたちがなにかいいましたが？」)

「あの子たちが何か言いましたが？」

(たけうちせんせいはなにかかんじたのか、)

竹内先生は何か感じたのか、

(「いえなにもいいませんよ、きうちせんせいにあいたくなったといってました。)

「いえ何も言いませんよ、木内先生に会いたくなったと言ってました。

(だまってでてくることはしないようにちゅういはしましたよ。」)

黙って出てくることはしないように注意はしましたよ。」

(しせつちょうはあんしんしたように。)

施設長は安心したように。

(「ごめいわくをおかけしました、ありがとうございます。」)

「ご迷惑をおかけしました、ありがとうございます。」

(とあたまをさげたが、かんじんなことはいわなかった。)

と頭を下げたが、肝心なことは言わなかった。

(わたしとたけうちせんせいはしゃくぜんとしないまましせつをでた。)

私と竹内先生は釈然としないまま施設を出た。