こころ (夏目漱石)

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難易度(4.5) 1353打 長文タグ文学 小説 国語 学習 長文
夏目漱石
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2 7283 7.4 98.1% 182.2 1353 26 25 2021/07/26
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問題文

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(わたくしはそのひとをつねにせんせいとよんでいた。)

私はその人を常に先生と呼んでいた。

(だからここでもただせんせいとかくだけでほんみょうはうちあけない。)

だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。

(これはせけんをはばかるえんりょというよりも、そのほうがわたくしにとってしぜんだからである。)

これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。

(わたくしはそのひとのきおくをよびおこすごとに、すぐ「せんせい」といいたくなる。)

私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。

(ふでをとってもこころもちはおなじことである。)

筆を執っても心持は同じ事である。

(よそよそしいかしらもじなどはとてもつかうきにならない。)

よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。

(わたくしがせんせいとしりあいになったのはかまくらである。)

私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。

(しょちゅうきゅうかをりようしてかいすいよくにいったともだちから)

暑中休暇を利用して海水浴に行った友達から

(ぜひこいというはがきをうけとったので、)

ぜひ来いという端書を受け取ったので、

(わたくしはたしょうのかねをくめんして、でかけることにした。)

私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。

(わたくしはかねのくめんにに、さんにちをついやした。)

私は金の工面に二、三日を費やした。

(ところがわたくしがかまくらについてみっかとたたないうちに、)

ところが私が鎌倉に着いて三日と経たないうちに、

(わたくしをよびよせたともだちは、きゅうにくにもとからかえれというでんぽうをうけとった。)

私を呼び寄せた友達は、急に国元から帰れという電報を受け取った。

(そのときわたくしはまだわかわかしいしょせいであった。)

その時私はまだ若々しい書生であった。

(でんぽうにはははがびょうきだからとことわってあったけれどもともだちはそれをしんじなかった。)

電報には母が病気だからと断ってあったけれども友達はそれを信じなかった。

(ともだちはかねてからくにもとにいるおやたちにすすまないけっこんをしいられていた。)

友達はかねてから国元にいる親たちに勧まない結婚を強いられていた。

(かれはげんだいのしゅうかんからいうとけっこんするにはあまりとしがわかすぎた。)

彼は現代の習慣からいうと結婚するにはあまり年が若過ぎた。

(それにかんじんのとうにんがきにいらなかった。)

それに肝心の当人が気に入らなかった。

(それでなつやすみにとうぜんかえるべきところを、)

それで夏休みに当然帰るべきところを、

(わざとさけてとうきょうのちかくであそんでいたのである。)

わざと避けて東京の近くで遊んでいたのである。

など

(かれはでんぽうをわたくしにみせてどうしようとそうだんをした。)

彼は電報を私に見せてどうしようと相談をした。

(わたくしにはどうしていいかわからなかった。)

私にはどうしていいか分らなかった。

(けれどもじっさいかれのははがびょうきであるとすればかれはもとよりかえるべきはずであった。)

けれども実際彼の母が病気であるとすれば彼は固より帰るべきはずであった。

(それでかれはとうとうかえることになった。)

それで彼はとうとう帰る事になった。

(せっかくきたわたくしはひとりとりのこされた。)

せっかく来た私は一人取り残された。

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