南洲翁遺訓〈現代語訳〉1~3

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西郷隆盛の教えです。
ふんわりと現代語に訳しております。
詳しくは大家の翻訳を参照してください。

前半の「1~20」は、主に為政者(上に立つ者)としての訓えが説かれ、
後半の「21~41」は、主に個人の修身についての訓えが説かれています。
個人的には後半の「21~」進めるのがお勧めです。

ローマ字欄に原文を記載してあります。
盛和塾関係の方に是非おすすめです。
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問題文

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(せいふにはいってかくりょうとなりこくせいをつかさどるということは、)

政府に入って閣僚となり国政を司るという事は、

廟堂に立ちて大政を爲すは

(すなわちてんちしぜんのみちをおこなうものであるから、)

すなわち天地自然の道を行なうものであるから、

天道を行ふものなれば、

(いささかもしりしよくをはさんではならない。)

いささかも私利私欲を挟んではならない。

些とも私を挾みては濟まぬもの也。

(いかなるときもこころをこうへいにたもち、つねにせいどうをふみ、)

いかなる時も心を公平に保ち、常に正道を踏み、

いかにも心を公平に操り、正道を蹈み、

(そしてひろくよのけんめいなものをじんせんし、)

そして広く世の賢明な者を人選し、

廣く賢人を選擧し、

(そのようなしょくむをちゅうじつにじっこうできるじんぶつにせいけんをとらせることこそがてんいである。)

そのような職務を忠実に実行出来る人物に政権を執らせる事こそが天意である。

能く其職に任ふる人を擧げて政柄を執らしむるは、即ち天意也。

(それゆえしんにけんめいでてきにんだとみとめるじんぶつがいたばあい、)

それゆえ真に賢明で適任だと認める人物がいた場合、

夫れゆゑ眞に賢人と認る以上は、

(すぐにでもかれにじぶんのしょくをゆずるほどでなくてはならない。)

すぐにでも彼に自分の職を譲る程でなくてはならない。

直に我が職を讓る程ならでは叶はぬものぞ。

(したがって、いかにくににこうせきがあったからといって、)

従って、いかに国に功績があったからといって、

故に何程國家に勳勞有る共、

(そのしょくむにふてきにんなにんげんをかんしょくにひきあげてやる、)

その職務に不適任な人間を官職に引き上げてやる、

其職に任へぬ人を官職を以て

(こういったじんじはまずいちばんやってはならないことだ。)

こういった人事はまず一番やってはならないことだ。

賞するは善からぬことの第一也。

(かんしょくというものは、そのちいにてきにんなじんぶつをよくえらんでさずけるべきで、)

官職というものは、その地位に適任な人物をよく選んで授けるべきで、

官は其人を選びて之を授け、

(こうせきのあるものにはちいではなくほうきゅうをおおくあたえてひょうかし、)

功績のある者には地位ではなく俸給を多く与えて評価し、

功有る者には俸祿を以て賞し、

(そのこうせきをしょうれいするのがよいだろう。)

その功績を奨励するのが良いだろう。

之を愛し置くものぞと

(このようになんしゅうおうがおっしゃるので、)

このように南洲翁が仰るので、

申さるゝに付、

(それではしょうしょちゅうきのこうのなかに、)

それでは尚書仲虺の誥の中に、

然らば尚書仲虺に

(「とくのたかいものにはそうおうのかんいをあたえ、こうせきのおおいものにはそうおうのほうしょうをあたえる」)

「徳の高い者には相応の官位を与え、功績の多い者には相応の褒賞を与える」

「徳懋んなるは官を懋んにし、功懋んなるは賞を懋んにする」

(というのがありますが、これはつまりとくのあるものにはかんい、)

というのがありますが、これはつまり徳のある者には官位、

と之れ有り、徳と官と相配し、

(こうせきあるものにはほうしょうをという、)

功績ある者には褒賞をという、

功と賞と相對するは

(いまここでのおはなしのことをいみしているのでしょうか、とおたずねしたところ、)

今ここでのお話の事を意味しているのでしょうか、とお尋ねしたところ、

此の義にて候ひしやと請問せしに、

など

(なんしゅうおうはたいへんによろこばれて、まったくそのとおりだとこたえられた。)

南洲翁は大変に喜ばれて、まったくその通りだと答えられた。

翁欣然として、其通りぞと申されき。

(しんにけんめいでてきにんなじんぶつが、おおくのやくにんたちをまとめあげる、)

真に賢明で適任な人物が、多くの役人達をまとめ上げる、

賢人百官を總べ、

(せいけんはひとつのたいせいでしゅうちゅうしている。)

政権は一つの体制で集中している。

政權一途に歸し、

(このようなこくたいというもののこんぽんがげんかくにさだまっていなければ、)

このような国体というものの根本が厳格に定まっていなければ、

一格の國體定制無ければ、

(たとえすぐれたじんざいをもちいてはつげんできるばをもうけ、)

たとえ優れた人材を用いて発言出来る場を設け、

縱令人材を登用し、言路を開き、

(たいしゅうのいけんをとりいれたにしても、)

大衆の意見を取り容れたにしても、

衆説を容るゝ共、

(そのしゅしゃせんたくにいっていのほうしんがなく、)

その取捨選択に一定の方針が無く、

取捨方向無く、

(なんのじぎょうもざつばくになりせいこうするはずがないだろう。)

何の事業も雑駁になり成功するはずがないだろう。

事業雜駁にして成功有べからず。

(きのうだされためいれいが、きょうまたすぐへんこうになるというありさまとなってしまう。)

昨日出された命令が、今日またすぐ変更になるという有様となってしまう。

昨日出でし命令の、今日忽ち引き易ふると云樣なるも、

(これらはみなそれぞれをとうかつするところが、ひとつにまとまっておらず、)

これらは皆それぞれを統括するところが、一つにまとまっておらず、

皆統轄する所一ならずして、

(つまりはせいじのほうこうせいがひとつにさだまっていないのがげんいんなのである。)

つまりは政治の方向性が一つに定まっていないのが原因なのである。

施政の方針一定せざるの致す所也。

(そもそもせいじというもののこっかくはまず)

そもそも政治というものの骨格はまず

政の大體は、

(こくみんのきょういく、ぐんびのきょうか、しょくりょうのあんていじきゅう、このみっつである。)

国民の教育、軍備の強化、食料の安定自給、この三つである。

文を興し、武を振ひ、農を勵ますの三つに在り。

(そのたもろもろのじぎょうは、みなこのみっつのせいさくをほかんするためのしゅだんでしかない。)

その他諸々の事業は、皆この三つの政策を補完する為の手段でしかない。

其他百般の事務は皆此の三つの物を助くるの具也。

(このみっつのなかでじうんやじょうせいによってどれをさきにし、)

この三つの中で時運や情勢によってどれを先にし、

此の三つの物の中に於て、時に從ひ勢に因り、施行先後の

(あるいはどれをあとにするかのじゅんじょはあろうが、)

あるいはどれを後にするかの順序はあろうが、

順序は有れど、

(このみっつのせいさくをあとまわしにして、)

この三つの政策を後回しにして、

此の三つの物を後にして

(ほかのせいさくをさきにするなどということはぜったいにしてはならない。)

他の政策を先にするなどということは絶対にしてはならない。

他を先にするは更に無し。

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