空白の車窓から

(はじめのいっぽはいつもおそろしいくうはくはみわたすかぎり)

初めの一歩はいつも恐ろしい　空白は見渡す限り

(むかしはからっぽにおもえただからこわくてぬりつぶした)

昔は空っぽに思えた　だから怖くて塗りつぶした

(さかうらみやぐちにはじまり「それでも」ってとこにいたった)

逆恨みや愚痴にはじまり　「それでも」ってとこに至った

(きょうはくかんねんににていたぼっとうがさかをころがった)

強迫観念に似ていた　没頭が坂を転がった

(いざいかんとはじめるけついたびじのみじたくとどうぎ)

いざ行かんと始める決意　旅路の身支度と同義

(おわらせるかくご、こんぽうしすーつけーすつめこむこうい)

終わらせる覚悟、梱包し　スーツケース詰め込む行為

(しんとしたへやがなごりおしいせいじゃくのすべてをしょゆうし)

しんとした部屋が名残惜しい　静寂の全てを所有し

(しんくでははじけたすいてきそのていどがぼくらのきてき)

シンクでは弾けた水滴　その程度が僕らの汽笛

(おわることなんかしらなかったもうとりもどせないあのむじゃきさ)

終わることなんか知らなかった　もう取り戻せないあの無邪気さ

(ただしらないきみよりしったきみがもちうるこうげんあたらしいよるへ)

ただ知らない君より知った君が　持ち得る光源　新しい夜へ

(きせつもむかしはわかれおしんだいまじゃ「またな」もいわずさって)

季節も昔は別れ惜しんだ　今じゃ「またな」も言わず去って

(ただしゃそうのけしきのそくどだけはやくなるぼくとうただけはこんで)

ただ車窓の景色の速度だけ早くなる　僕と歌だけ運んで

(さっていったひとはおおいここすうねんにおいたって)

去っていった人は多い　ここ数年においたって

(じょうきょうならそれぞれだしいのるよかれらのこのさき)

状況ならそれぞれだし　祈るよ彼らのこの先

(はなれたばしょでうまくやってわらってさいかいならさいわい)

離れた場所で上手くやって　笑って再開なら幸い

(だけどとりのこされたようなさけではとけきれぬさびしさ)

だけど取り残されたような　酒では溶けきれぬ寂しさ

(すすんでるかもどってんのかはやいのかおそいのかなんて)

進んでるか戻ってんのか　早いのか遅いのかなんて

(けしきがみえてこそわかってたまにそんなきづきがあって)

景色が見えてこそ分かって　たまにそんな気付きがあって

(ぼくにとってかれはけしきでかれにとってぼくはけしきで)

僕にとって彼は景色で　彼にとって僕は景色で

(そうださびしさのげんいんはおなじでんしゃにのれたらって)

そうだ寂しさの原因は　同じ電車に乗れたらって

(おわることなんかしらなかったもうとりもどせないあのむじゃきさ)

終わることなんか知らなかった　もう取り戻せないあの無邪気さ

(ただしらないきみよりしったきみがもちうるこうげんあたらしいよるへ)

ただ知らない君より知った君が　持ち得る光源　新しい夜へ

(うまくわらえないぼくのてにはあとどれくらいのやめないりゆう)

上手く笑えない僕の手には　後どれくらいのやめない理由

(ただしゃそうのけしきのそくどだけはやくなるぼくとうただけはこんで)

ただ車窓の景色の速度だけ早くなる　僕と歌だけ運んで

(どっかであきらめているしょうがない、とおもうことがおおくなった)

どっかで諦めている　しょうがない、と思うことが多くなった

(ひとはしぬしかわるゆずれないものがひとつぼくのからだをつらぬいて)

人は死ぬし　変わる　譲れないものが一つ僕の身体を貫いて

(じめんにつきささってるどんなかぜがふいてもおれないように)

地面に突き刺さってる　どんな風が吹いても折れないように

(どんななみがおそってもながされぬように)

どんな波が襲っても流されぬように

(そして、けしきだけがながれてく)

そして、景色だけが流れてく

(ながれてくながれてく)

流れてく　流れてく

(またなまたな)

またな　またな

(またあえるかなまたあえるよな)

また会えるかな　また会えるよな

(もうむりかもなもうむりだよな)

もう無理かもな　もう無理だよな

(おわることなんかしらなかったもうとりもどせないあのむじゃきさ)

終わることなんか知らなかった　もう取り戻せないあの無邪気さ

(ただしらないきみよりしったきみがもちうるこうげんあたらしいよるへ)

ただ知らない君より知った君が　持ち得る光源　新しい夜へ

(このさきはくうはくだもうおそれないじゆうとはなんてさびしいんだろう)

この先は空白だ　もう恐れない　自由とはなんて寂しいんだろう

(ただしゃそうのけしきのそくどだけはやくなるぼくとうただけはこんで)

ただ車窓の景色の速度だけ早くなる　僕と歌だけ運んで

(さよならまたねとわかれたからきょうもあいにきたよ)

さよならまたねと別れたから　今日も会いに来たよ

(ただそれだけ)

ただそれだけ